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移動したおまつは近くの「ジョイフル」と書かれたファミリーレストランに目を向けた。 店内に大勢の若者がたむろしている。 若者の容姿や服装をくまなくチェックし、頭部メモリー内のライブラリーに照らし合わせる。 「ステルスモード カイジョ」 端から見れば何もない空間に突如として若い娘が現れたように見えたことだろう。 最新鋭のカモフラージュ技術で透明化していたおまつは、この時代に合った女の容姿に変化し、その姿を露わにした。 そのままターゲット探索を続けるおまつ。 ふと道行く男に目をとめた。 短髪につぶらな瞳。下半身は… ライブラリーにアクセス、やはり軍服のようだ。 角を曲がるところで一緒にいた仲間と別れるらしい。 ハイパー聴力で聞き耳をたてる。 「じゃあな軍人!」 仲間の一人が手を振る。 間違いない。この時代の軍人だ。 屈強なる遺伝子を求めるおまつにはうってつけの男子である。 後をつけ軍人と呼ばれた男に声をかけた。 「あの…軍人さん」 男は振り返るや驚いた様子でさっと顔を赤らめた。 おまつは意を決して言った。 「今夜の予定はおありかしら…もし、よろしければ…」 男は機械じみた動きで首を揺らしたかと思うと「ぼ、僕っ童貞なんでっ!」と言い暗闇へと姿を消した。 残されたおまつが追いかけるべきか思案していると、道行く人々の囁き声が聞こえてきた。 「あれ、…じゃね?」 「え〜嘘〜こんなとこいる訳ないやん〜」 「ほらほら、やっぱそうやん!」 「あ、ほんとだ」 「上戸彩だ!」 気がつくとおまつの周りには人だかりができている。 一人の若者が前に出てきておまつに話しかけた。 「上戸彩さんですよね?」 「?」 「あの〜、サインください!」 どうやらおまつはこの時代の有名人にそっくりらしかった。 「ステルスモード ハツドウ」 「き、消えた!上戸彩消えた!」 若者たちが一様に驚き騒いでいるのを尻目に、おまつはターゲット探しを続けることにした。
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