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リリックの入力を開始し始めると同時に、プロジェクションマッピングの如く空間に文字が浮かびあがる。 たちの「おお・・・なんだこれすげーな・・・」 ラフィン「特別な機材を使ってる様子が無いのが・・・ね・・・」 会場は静寂に包まれ、全員が入力されていく文字を見つめていた。 まず皆が驚いたのは、その速度──。 まるで何度も練習したかのように次々と文字が入力されていく。 そして韻の完成度も、そこに居るだれもが納得する内容であった。 たちの「あー・・・やっぱバケモンだわ。普通に。」 キャラバン「バケモンっぽいとこ普段全く出さないから麻痺しますよね(笑)」 五分経過──。 恐らくは全体の4分の3は書き上げたであろうところで、突然型月の手が止まった。 越境「・・・?」 ラフィン「・・・なんだ?」 落雷────。 もちろんこれは比喩表現であるが、型月はそれと同じくらいの衝撃を受けていた。 型月「(・・・・・・!!!・・・・・・こんな時に降ってくるかい・・・・・・。)」 その表情は、うっすら笑ってるように見えた。 越境「・・・笑っ・・・てる?」 たちの「いや、それより時間がねーぞ!?」 六分経過──。 型月は考えていた。 型月「(このラインを入れるには・・・文脈の前後を・・・いや・・・ここを削って・・・くそっ、それでも時間が・・・ならいっそ入れずに・・・)」 ふと、タブレットから目を離し観客の方を見た型月の目に、皆の心配そうな顔が映る。 たちの、キャラバン、ラフィン、越境。 観客の中には、先ほど会ったロサの姿も見えた。 型月「(・・・そうか。・・・俺だけの戦いじゃない・・・。なら・・・・・・答えは決まってるな・・・。)」 その指が再び動き出す──。 そして、文字が浮かぶ空間を見ていた全員が驚愕した。 ラフィン「え・・・・・・文字が・・・消えてく・・・?」 たちの「いや、あれ消してるんじゃね!?」 キャラバン「・・・なんで?」 たちの「いや俺が知りてーよ!」 型月は頭に浮かんだパンチラインを違和感無く使うために、リリックを再構築し始めたのである。 残り時間三分──。 そのスピードは先ほどの倍近い速度であった。 その理由を、全員が理解できていた。 “異端の証明” RBNでの型月の異名である。 型月「(『型月』を名乗ってて守りに入れるかよ・・・!)」 残り一分──。 越境が何かに気づく。 越境「・・・おい、アレ・・・」 型月はサングラスをしていたが、その表情は確かに笑っていた。それに加えて、極度の興奮状態からか鼻からは出血している。 ラフィン「・・・・・・。」 キャラバン「・・・・・・。」 たちの「・・・・・・。」 そして、全ての入力が終わった。 残した時間は、わずか三秒──。 表示されたリリック。 型月本人も含めた全員が“それ”を見つめた。
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