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セーフモード…キドウ…カイシ… ハンミハンミの呪縛はおまつのプログラムを大いに乱した。 その副作用として現れた新たな人格「おまついし」により破壊されたかに見えたミキティであったが、人工知能のコア部は辛うじて生き残っている。 時は遥かなる未来。 機械という概念は我々の想像を超え、生物構造を織り成す有機物といってよかった。 それは命を宿し、意思を持って地上を闊歩する動物である。 プログラムは彼らを理解するための指標でしかなく、またそれを操作し一定の目標に導くことは人間に残された唯一絶対の権限であった。 ミキティ、そしてグラップラー建部も誰かの意思によって動いている。 「一体誰が…」 藤沢は思案にふけっている。 時間法により支配される世界。法の網目を縫ってこの時代にやってきた藤沢たちの行動を誰かが監視していることは明白だった。 「まさか、神が…」 ピピーピン Zからの連絡だ。 「内臓が機能してねえ」 藤沢はZの位置を確認し応える。 「飲み過ぎだ。そこからおまつの位置までかなり近い。おまつは今再起動中で無防備な状態にある。落ち着いてことに当たってくれ」 フラフラになりながら指定の位置まで移動するZの前方に破壊の限りを尽くされたかつてミキティだったものの残骸が転がっている。 ミキティの僅かに残った意思は目的を完遂するべく動き出す。 声帯機能も失った今、ミキティができることはやはりハンミハンミであった。 コアを構成するナノマシンは最恐ウイルスsydをZに向け放つ。 Zの脳内で何処からともなく歌声がが響き渡った。 「ハンミハンミハンミハンミ」 可憐な乙女の声だ。 おまつのプログラムを破壊した呪いの呪文である。 Zはそれをウイルスと認識したのか、はたまた身体が勝手に反応したのか、少しふらついたかと思うと腹の底から声を上げた。 「ディラン!!」 次の瞬間、ミキティのコアはその動きを完全に止めた。
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