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放課後。 茶道部部室にやって来たあかりに結衣が京子が帰ってしまったということを告げられた。 「何か用事でもあったのかな……?」 「模型店に行ってくるって言ってたよ」 (模型店……間違いなくあそこだ) 頭の中で思い浮かべたのは昨日行った模型店『月光蝶』だ。 「ごめん、結衣ちゃん! 京子ちゃんのところへ行ってくるね!」 「えっ! ちょっとあかり!」 あかりは一度頭を下げて部室を出ていこうとするが、襖の前で止まる。 結衣の声で制止したからではない。ある事を思い出したからだ。 振り向いてあかりは口を開く。 「結衣ちゃん。ちなつちゃんが来たらごめんって言っておいて、また今度見せるからって!」 ちなつは掃除当番で部室に来るのが遅れている。 結衣に告げて早々に部室を出ていく。 ちなつにジムを見せるのが楽しみだったが、ガンプラやそれを作るツールを買ってくれた京子に感謝の気持ちを込めて見せたかった。 精一杯作ったこのガンプラを一番最初に見せればきっと喜ぶだろうと……ちなつには申し訳ないがこの気持ちだけは譲れなかったのだ。 「何を謝ればいいんだ……」 部室にただ一人残された結衣は呆然と襖を見つめるのだった。 ◇ 数時間走って月光蝶の前へと到着した。 乱れた息を整えながら店内へと足を踏み入れる。 「いらっしゃいである!」 入るなりギムの強面の顔と野太い声で歓迎された。
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