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「あれが地球だよパパ」 藤沢博士の横には数人の子供らが立って宇宙船「世界」の窓から惑星を見下ろしていた。 時は来た。 人類が生まれ育った母なる地球を離れ数十世紀が過ぎた。 二十一世紀中に劇的な進歩を遂げた科学技術は人類を未知の空間に解き放つと共に、彼らにある希望を託した。 「この世界とは何なのか?」 人類は長い旅の末に神に遭遇した。 この宇宙における秩序は神によって作られた「時間法」なる法律で守られていた。 この宇宙全体を支配する余りに強大な力(それは現象とも呼べるかもしれない)を確認するに至った人類は、目的そのものを失い秩序の中で静かに暮らす道を選んだ。 「地球に帰って一からやり直そう」 しかし、その長い長い年月は宇宙という特殊空間のなかで、人類に遺伝子レベルでの変化をもたらした。 宇宙での生活に順応し、その姿形を大きく変えた人類の身体構造は、今や地球には戻れぬほど弱体化していた。 そんな人類が時間法のグレーゾーンをぬって過去へと送り込んだ人造人間おまつの目的はただ一つ。 過去の健全なる遺伝子を持ち帰ることであった。 現在、地球に人類は一人もいない。
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