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海抜マイナス200メートル。 この断崖絶壁の底に彼らの街はある。 いや、街と呼ぶのもはばかられるこの居住区には数多の人間が暮らしていた。 およそ文化的とは言えぬこの街の暮らしの中で唯一の娯楽と呼ばれるもの、それがZの唄だった。 彼は体を買った。本当の人間にどうしてもなりたかった。 その結果全ての財産を失ったZ、そして藤沢博士はこの居住区に送られたのだ。ここには労働などない。ただ、この1日がある。 いわゆる「世界」から、廃棄物処理の名の下に数え切れぬほどの残飯が送られてくる。これを処分するのが彼らの仕事といえば仕事なのかもしれない。 送り主はこの居住区の人間を「虫」と呼び、また彼らも送り主のことを「豚」と呼ぶのだった。 Zの唄はいつしかこの街の希望になった。 元は人間らしい生き方をしていたものも多くいる。彼らは今立ち上がろうとしていた。 「シーズンオブザウィッチ…」 魔女の季節が始まろうとしていた。
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