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今夜もZの歌は人々の心を癒していた。 広場にはステージが組まれ、無数の群衆がZの前に聴き惚れるように座っている。 「サンキュー」 Zが歌い終わるや群衆からは惜しみない拍手が送られる。 続けてZの十八番ボブディランの曲が演奏がされると、涙を流す者さえいた。 曲が終わりこの場にいる者全てがその余韻に浸る奇跡のような時間。 ひとつ息を吸い込んだZは優しい声で言った。 「曲ができた」 一瞬の静寂ののちワッと歓声があがる。 「とうとうか」「待っていたぜ」 口々に歓迎の言葉を吐く人々。 「ちょっと自信はないんだがね」 少し顔を赤らめZは続ける。 「だがこれは俺たち人類の今世紀で最初の曲だ」 今夜で一番の歓声が響きわたった。 Zは少し眩しげにその光景を眺め、歓声が一通り止んだ頃、意を決したように口を開いた。 「聴いてくれ、"よかろうもん"」 ギターストロークが始まった。
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