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「それはいいとして、なるほど……」 千歳は視線をアーシェに向けて、ジーっと見つめた。 「鳴海さんが、新キャラクターの話をすんなりと決められた理由がわかりました。モデルは彼女ですね」 「ええ、まあ。はい……」 「何の事です。私がモデルって……」 二人の会話の内容についていけないアーシェは、頭にクエスチョンマークを浮かばせる。千歳は視線を戻すとやんわりと微笑んだ。 「それは直接彼に聞いてください。本日はもうお帰りになって結構ですよ」 「え、もうですか?」 「はい。今日は先程も言った通り話がスムーズに進みましたからね。普段もこれくらい早くしてほしいものです」 「あはは、善処します」 苦笑いを浮かべながらこめかみを掻く幸樹。視線をアーシェに移した。 「じゃあ、帰ろうか」 「う、うん」 二人は席を立つ。編集部にもう知れ渡っているのか、皆ニヤニヤしながら視線を向けてくる。 そのくすぐったい視線に耐えながら出版社を後にする。 ◇ 「むう〜」 二人並んで歩く。だがアーシェの表情は不機嫌そのものだった。 「悪かったって、許してくれよ」 「嫌よ。私に断りなく私をモデルにしたキャラクターを漫画に出そうとするなんて……絶対許さないから」 「うぅ……どうしたら許してくれるんだ?」 「キス……してくれるなら、許す。ついでに私のモデルにしたキャラを漫画に出すのも許可するわ」 ほんのり頬を染めてアーシェは微笑んだ。 「もしかして……キスしたいから不機嫌のふりしてる?」 「ち、違うわよ! 本気で怒ってるんだからね!」 と言いつつも、本心では最初から漫画に自分のモデルのキャラクターを出す事も嫌ではなかった。 「わかったわかった。じゃあ、そこの影でするか、人目が気になるし」 「いいわよ」 と声を弾ませて二人とも路地裏に入る。
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