コピー
▼本文
「言われてみたら確かに……」 思い起こすとそんな事を言っていた気がすると、アーシェは苦笑した。 あの時から、さやかは二人が付き合うと予見していたのかもしれない。 「えっと、それでごめんね……」 「何で謝るんです?」 さやかは小首を傾げた。アーシェは理由を口にする。 「ほら、あなたが……告白失敗したのに相談に乗った私が彼と交際始めちゃったし。恨んでるんじゃないかって……」 「なんだそんな事……全然気にしてないっすよ」 と言いつつもさやかの目から涙が溢れ落ちた。 「……恭介ぇえええ〜っ!」 そして顔面を机に突っ伏して泣き始めた。 「まだ未練あるじゃないのよっ!」 「変なスイッチ入ったな……どうする?」 「どうするって言われても……」 周りからヒソヒソ声が聞こえる。他人から見ればこの光景は彼氏を取られた女が泣いている場面に見えるだろう。 「泣き止ますに決まってるでしょ。ほら、さやか……ここだと目立つからやめなさい。泣くなら他の所で」 「いえ、大丈夫です。冗談なんで」 さやかは顔を上げてペロッと舌を出した。 その表情にイラっときたアーシェが頬を引っ張る。 「ちょっ、いひゃいいひゃいっ!」 「……あなたねぇ。危うく私が他人の男を取った最悪な女になりかけたでしょう!」 「ひゅいましぇん。ひゅるししぇくだひゃいっ!」 聞き取りにくいが反省しているようでアーシェは手を離した。 「はあ……暴力反対ですよ」 「あなたが変な事を言ったからでしょ……」 「まあまあ、でも……実際どうです。あたしが好きだって言ったら幸樹さんは振り向いてくれますか?」 試すような発言をしたさやかに幸樹は……。 「それはない。俺が好きなのはアーシェただ一人だけだよ」 「……幸樹」 幸樹は真っ直ぐさやかの瞳を見据えて即答する。 アーシェはそれを聞いて目をハートにした。 「あはは、まぁた振られちゃいましたね……」 「よく言う。最初から俺にその気はないだろ?」 「ええ、全然。だってタイプじゃないし」 (……こいつ) 幸樹は怒りを押さえてぎこちなく笑った。 「で、幸樹さんはアーシェさんのどこに惚れたんですか?」 「あ、あなたいきなり何を言い出すのよ!」
スレッドへ
日間
週間
月間