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本当は何度も、思い描いた。 無駄にしたくなかった、重ねたその言葉数を。 一緒に歩きたかった。二人が望んだ明日を。 だけど、私はこう言った。 「とっておきの方法があるよ。」 最初っからアンタは私を見てなかった。 火照った体も、冷えた体も、 敢えてアンタは視線に入れなかった。 思い出作りに回った定番のデートコース。 涙ぐみながら眺めた映画のエンドロール。 何をやるにも可笑しかった。 きっと「私にとっては」他ならない、 隣がアンタだから良かったんだ。 でもね、ごめん、もうわかんないや。 よくあるカップル像を保って三年経過。 未だにアンタは 私を 抱いてくれない。 "SEX恐怖症"が、どういうものか、 いろんな文献や研究書を読んだ。 「不能じゃない?」「同性愛者なんじゃ?」 「あーそいつしてるよ、どうせ浮気か何か」 きっと、どれも当て嵌まらない。 そんな既存のデータベースやベタなフレーズでは言い表せないくらい、 彼の瞳には暗い影があった。 必死に分かろうとした。 手を繋いだり、身体に温もりを伝えたり、 激昂したり、または泣きながら訴えたり、 私だって【子供】じみた飯事をしたいわけじゃない、 それでも最後は、必ず私が蚊帳の外になる。 愛してほしい。ただ愛を証明してほしい。 重く積み重なった蟠りを肯定してほしい。 教えてほしい。私の目は節穴だから。 アンタの悩みを、闇を、 それで堕ちるなら、奈落まで付き合うからさ。 なんてね。 きっと最初っから無理だったんだ。 だから、私から触れてあげる、 禁断のキーワードに。 「とっておきの方法があるよ。無駄な記憶も上書き保存で鞍替えしよう。女は誰でもそうやってんだよ。アンタも昔の女なんてもう忘れなよ。どうせその女だって今頃は立派な彼が」 ひっぱたかれた。 わかってる。 アンタにとって代わりはないんだよね。 もう、 その人生には足掻きしかないんだよね。 そして、 隣にいていいのは私じゃないんだよね。 ばか。 忘れてよ。過ぎたことはもう忘れてよ。 そんな辛い顔するくらいなら、 忘れていいんだよ。 滑稽だね。氷を前に完全に散った恋。 最後に教えてあげる。 SEXの芯にあるのは、身体を重ねた「意図」 快楽だけじゃないし、責任だけでもない。 人は生きていけないの、誰かに甘えないと。 それが例え私じゃなくても、 アンタには幸せな人であってほしいから、 裸で闇を、晒せばいいよ。 「頭のなかで【未来】が今も叫んでるんだ」 その一言じゃ何も図れないよ。
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