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笑顔のあかりと違ってちなつは疲れ気味な顔をしている。彼女の気苦労が伝わってくるようだ。 「そういえば、次の2回戦で桜翠は見滝原と戦うんだよね」 あかりは話題を変えてきた。アーシェは短く首肯する。 「そっか、あの時一緒に戦った子達だよね」 「ええ、そうよ」 一緒に戦ったあかりは、さやかとマミの事を覚えていた。 「見滝原かぁ……。まさか野薔薇に勝つとは思わなかったね」 結衣と綾乃と話していた京子が見滝原と聞いて、話に加わってくる。 「巴ちゃんの台詞が正しければ……今回の大会に出てるチーム全ての対策を練ってるだろうね。こりゃ厄介かも……」 「そう……ですね……」 京子の言葉を耳にし、アーシェは顔を曇らせる。 あの言葉が本当なら桜翠対策もしてきている筈……こちらのデータを取りに来たのは恐らくあの学園祭だと思われる。 「どうしたの?」 急に黙ったからか、あかりが心配そうにこちらを見つめていた。 「ううん、何でもないわ」 「そっか、良かったぁ〜。具合でも悪いのかと……」 「そんなんじゃないわよ。気にしすぎよ」 あかりは笑顔になる。アーシェは彼女に心配をかけたくなかった。優しいあかりの事だ。きっとさやかとの事で悩んでいると知れたら心配するに違いないから。 「アーシェちゃん。頑張ってよ。桜翠には勝ってもらわないと困るんだから」 「そうそう。決勝戦で戦うんだからね」 「もう、決勝に行けると思ってるのか……」 「まあ、それが歳納京子だからね」 ちなつと京子は気合いを見せ、結衣と綾乃は肩を竦めていた。 「じゃあ、アーシェちゃん。あかり達は観客席で応援しているから」 「うん」 「絶対決勝戦で戦おうね!」 あかりが手を差し伸べる。 「ええ、絶対よ!」 アーシェはその手を握り返した。2人は約束を再び交わして別れるのだった。 ◇ 「……ん?」 七森と別れ、控え室に戻る途中。アーシェは見知った顔を前方に見つけた。 「アーシェさん」 「……さやか」 さやかが真剣な眼差しでこちらを見ていた。アーシェの事を待ってたようだ。
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