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「何よ、浅い人間だと思っていたの?」 「いや、そうじゃないですけど……」 「まあ、いいわ。理由はどうあれ……私達は負けるつもりないから、倒したかったら全力で来なさい」 肩を竦め、アーシェは挑発するようにその言葉をさやかにぶつける。 その言葉に応えるように、さやかは口角を上げた。 「もちろんですよ。最初から楽に勝てると思ってませんから、全力でいきますよ」 「ええ、楽しみにしてるわ」 「はい。楽しみにしててください。それじゃ、次はファイトで会いましょう」 「わかったわ」 全てを伝え終えたさやかは踵を返して去っていく。 「行っちゃったね」 「わっ!?」 さやかが離れていくタイミングを見計らって、通路の影からかおるこが出てくる。 突然出てきてアーシェの心臓がドクン、と跳ね上がった。 「か、かおるこ先輩っ! いつから居たんですか!」 「結構最初の方からずっと居たよ」 「い、居たなら言ってくださいよ……」 「ごめんね。出ていきにくい場面だったから」 かおるこは苦笑いを浮かべる。すぐに表情を戻して、口を開いた。 「でも、良かったよ。何か迷っているように見えたけど、色々吹っ切れたようで」 「ご心配おかけしました。さやか達が騙していたとはいえ、私達が正々堂々真っ向から勝負をするのには変わりませんものね。私は私のやり方で見滝原を倒します」 「ふふ、期待しているよ」 頼もしき後輩の姿にかおるこは口許を綻ばせる。 「じゃあ、行こうか。機体のメンテも必要だしね」 「はい!」 アーシェは元気よく返す。2回戦に向けて機体のメンテナンスをするべく、2人は控え室へと戻っていった。 ◇ そして、時は来た。桜翠学園と見滝原の戦いが始まろうとしている。 MCの指示でシュミレーターに搭乗したファイター達。自分の愛機を発進させてフィールドに飛び込む。 その様子を観客席で幸樹は見ていた。 「始まりましたねぇ。先輩はどっちが勝つと思います?」 「桜翠に勝ってほしいけど、相手は準決勝に進んだチームを倒した強敵だからな。まだハッキリとわからないよ」 「へえ、意外だね。アーシェに勝ってほしいって言うと思ってたのに……」 兎亜が意外そうに見てくる。 「もちろんアーシェには勝って欲しいけれど、相手が相手だからな」 「相手を知ってるんですか?」 「……まぁな」 幸樹は未尋に短く返す。相手は情報を分析して対策を練ってくるような相手だ。桜翠でも油断ならない存在であることに変わりはない。 最後まで油断しないように幸樹は心の中でアーシェにエールを送る。
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