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◇ 青山あおいは人気のない通路の影で今始まろうとするAブロック第三試合を見ていた。 「ーーーあおい」 名前を呼ばれる。振り向くとそこにあおばがいた。 「こんなところにいたの……探したわよ」 「姉さん……何?」 あおいが首を傾げる。あおばはあおいの反応に肩を竦めた。 「何? じゃないの……見に来たらあなたの試合がもう終わってて、いままでどこにいるのか探し回っていたのよ」 「……ごめんなさい」 あおいが眉をハの字にして謝るが、あおばは首を横に振った。あおいの隣へ歩み寄る。 「いいわ。こうして見つかったのだから……」 「……」 あおばはあおいの頭を優しく撫でる。表情には出さないものの、あおいはどことなく心地良さそうだった。 「最初の試合はどうだった?」 あおいの頭から手を離してあおばが尋ねる。 「どうせ取るに足らない相手だったんでしょ。あなたが相手ならどんな相手でも雑魚同然よ」 「……ちなつ」 「え?」 あおばは目を丸くした。あおいの視線は会場へ向けられている。 「吉川ちなつ……それが最初に戦った子の名前」
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