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「たぶんまだ……アーシェちゃんは自分の気持ちに整理出来てないんだよ。はじめての気持ちに心が戸惑ってるんだと思うの」 「そう、なんでしょうか……」 「うん。ゆっくり理解していくといいよ。もしその気持ちで辛くなったりしたら、いつでも言ってね。私なんかでよかったらいつでも力になるよ」 「え、わ、私なんかの悩みでかおるこ先輩のお手をわずらわせるのは……」 「いいの。私がそうしたいんだから、大船に乗ったつもりでドーンと頼ってくれていいからね!」 「は、はい……」 思わず頷いてしまった。ふんす、と鼻息を鳴らし、自分の胸を叩くかおるこを見てしまったアーシェには、その申し出を断れなかった。 その後。二人でコーヒーだけを頼み。他愛ない会話を弾ませながら時間を過ごし、喫茶店を後にする。 「あの、今日はありがとうございます……」 街路樹が並ぶ道をかおること一緒に歩いていく。 アーシェがお礼を言うと、視線を向けてかおるこは微笑んだ。 「お礼はいいよ。先輩として当然のことをしたまでだよ……幸樹くんと両想いになれるといいね!」 ビシッ! と、かおるこは右手の親指を立てた。アーシェは肩をすくませる。 「だ、だから違いますって……私は彼に好意なんて持ってません!」 「意地悪な質問するけど、真矢先輩か真愛先輩。それと私の誰かが幸樹くんと付き合うってことになったらどうする?」 「鳴海くんが先輩達と……」 脳内でその光景を再生してみる。 イチャイチャする姿を想像したら……胸が張り裂けそうになった。アーシェはこの世の絶望を体験したような青ざめた顔をしている。 「あ、ご、ごめんね! 今のは忘れてっ! 冗談だから!」 「え、あ……ですよね。鳴海くんが先輩方と付き合うなんてあり得ませんよ……恐れ多いです!」 額に汗をびっしょりと掻きながらアーシェは顔をひきつらせる。 素直じゃない彼女の反応にかおるこは苦笑混じりに肩を竦めた。 「これは……アーシェちゃんが本当の自分の気持ちに気づくまでかなりの時間が必要だね」
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