ガンプラビルドガールズ
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プラネテューヌ親衛隊
2016/09/04/18:14
七森中在校生赤座あかりはいつも通りの日常を過ごしていた。
二年生に上がり三年生が受験勉強に勤しんでいる季節。
ひょんな事から幼馴染みの歳納京子が部室にガンダムのプラモデルーーーガンプラを持ってきてーーー。
この物語はガンプラファイトを通じて成長する少女の物語である。
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2016/09/04/18:15
七森中学校ーーー。
この女子中の中に位置する今は使われていない茶道部の部室は、とある四人の少女がごらく部と称して毎日学校が終わるとここでくつろいでいた。
「京子ちゃん遅いね……」
座布団に座り漫画を読んでいた両サイドをお団子にし肩口まである赤毛の少女が時計を見て呟く。
赤座あかり。
地味だがこの物語の主人公。誰に対しても優しく皆からいじられる愛されキャラだ。
「そうだな。何をやってるんだろう……あいつ」
あかりと向かい合うように座った短い黒髪の大人びた少女。船見結衣が応えた。
「え? 結衣ちゃんどこに行ったか聞いてないの?」
「ああ、教室を出るなり急いでどっか行ったからな」
「まーた何か企んでるんじゃないですかね……」
桃色の髪を二つ括りにした少女が人数分のお茶を持ってきた。
吉川ちなつ。あかりのクラスメイトで結衣に強い憧れを抱いている。
「はい、お茶をどうぞ」
おぼんから湯飲みをテーブルの上に置くちなつ。結衣とあかりは彼女に「ありがとう」と返した。
ちなつはテーブルにおぼんを置いてゆいの隣に座る。
「受験勉強どうですか?」
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2016/09/04/18:15
「問題ないよ。これなら普通に受かりそうだ」
結衣は笑顔で返して、ちなつの淹れてくたお茶を一口喉に流し込む。
「はあ、何か信じられないですよね……来年の今頃には結衣先輩がいなくなってるなんて……」
来年には卒業してしまう結衣。その事は結衣を尊敬するちなつにとって耐え難い事態。卒業した後のごらく部を想像してしまうと目に涙が溜まり瞳が潤んでしまう。
「進級してから時間の流れが早く感じるよね」
「本当だよ。あっという間だったからな……もうそろそろ秋だなんて信じられないよ」
あかりと結衣はこれまでのごらく部での思い出を振り返る。
基本は部室でだらだらしたり、遊んだりしていただけだったけれど……四人にとってそれはかけがえのない思い出だ。
二人がいなくなってしまった後のごらく部はこれまで通りやっていけるのか……あかりはこれからの事に不安を胸に募らせていた。
「先輩! 無理を承知でお願いしますっ!」
ちなつは結衣の手をとって真っ直ぐに彼女の瞳を見据える。
「え? なに?」
「卒業するの止めてくださいっ!」
「そんな無茶な!?」
「それが無理ならわたし……飛び級します! あかりちゃんと二人きりなのは不安なんでっ!」
「然り気無くあかりが酷いこと言われてるっ!?」
言い寄られて困っている結衣よりあかりの方が心にナイフで心臓を突き刺されたような深い傷を負った。
何か言い返そうとしたが、入り口が開く音がしてドタドタと騒がしい足音が近づいてくる。
「おっまたせ〜!」
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2016/09/04/18:16
けたたましく襖が開かれると一人の少女が足を踏み入れてきた。
長い金色の髪に整った顔立ち。どんぐりのような丸い目。
ニッとつり上がった口角が盛大に入室してきた彼女の性格を現している。
「遅いぞ……京子。どこへ行ってたんだ」
結衣が半眼で少女に視線を向けて言った。
この少女が先程から話題に上がっていた歳納京子本人である。
あかりと結衣の幼馴染みでごらく部のリーダー的な存在。
常に突拍子もない行動をとって周りを困惑させるトラブルメーカーであり。同人作家の一面を持つ芸達者な少女だ。
「ちょっとね〜。にしし」
上機嫌に鼻唄を歌いながら座布団に駆け寄って腰を落とすとテーブルの上に持参してきた紙袋を置いた。
「京子先輩……なんなんです、それ?」
「ん、見てもらえばわかるよ。ほら」
京子が紙袋から出したのは一つの箱。皆に見えるようにテーブルの中央に置く。
その長方形の箱にはロボットのイラストが描かれていた。
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2016/09/04/18:16
「これガンプラか?」
「ガン……プラ……?」
「なんですか、それ?」
結衣は京子が持ってきた箱の正体を知っているようだが、他の二人はこれがなんなのかわかっていない様子だった。
「ああ、二人は知らないんだ……無理もないか。元々男の子向けの物だし、これはガンプラって言って機動戦士ガンダムっていうアニメに出てくるMS(モビルスーツ)というロボットを元にしたプラモデルなんだ」
「へぇ〜……そうなんだ。模型なんだこれ」
結衣の説明を聞いてあかりが興味深そうにプラモの箱をマジマジと観察する。
「これさ、わたしらが生まれる前から人気が続いてる根強いシリーズなんだ。わたしも最近知って全シリーズ徹夜してでも見たぜ!」
親指を立てる京子の目の下はよく見ると隈が出来上がっていた。
「何やってるんですか……」
「最近隈が出来たのはそのせいかよ……」
理由を知ってちなつと結衣は肩を竦めた。
京子が遅れた理由とこのガンプラに何の関係があるのか、そろそろ気になってきたあかりは視線を京子に向けて口を開く。
「で、このガンプラがどうかしたの?」
「ふふん、よく聞いてくれたなあかり……」
こほん! と咳払いをして京子は全員を一瞥してから言った。
「わたしガンプラの大会に出ることに決めました!」
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2016/09/05/08:55
「「「へえー……」」」
三人ともあまり興味がなさそうな反応をする。
いや、京子の話が突拍子も無さすぎて普通の話に聞こえてしまったのだ。
改めて三人は頭の中で先程の言葉を反復して違和感に気づきーーー。
「「「えええええええっっっ!!!!!」」」
盛大に驚愕する。
「お前っ!? 何を言ってるんだよ! 私ら受験近いの知ってて言ってんのか!」
最初に意見したのは結衣だった。
「わかってるよ。でもさ……卒業前にこのごらく部四人ででっかい事をしたいんだよ。結衣ならわかるだろ?」
「わかるかそんなの……遊んでる暇があるなら受験勉強をしろ」
ぐいっと教科書を押し付けられて後ずさる京子。
苦笑しながら視線をちなつへと向ける。
「ち、ちなつちゃんはどうかな……やってみない?」
「ええ……そう言われましても、これって男の子の玩具ですよね。ちょっと抵抗あるんですけど……」
「大丈夫、女の子でも好きな人はいるよ」
結衣がダメならちなつを引き込もうと目論む京子だったが、ちなつは首を大きく横に振った。
「お断りします。結衣先輩がやるならやってもいいと思いましたが……本人が乗り気じゃありませんし、結衣先輩の言った通り。受験勉強に集中してください」
「ぐうっ!」
ちなつからも断られて京子は肩を落とした。
そんな彼女を見ていて、あかりは自分だけでも参加してあげようと思っていた。
四人ででっかい事がしたい……あかりも同じ気持ちだ。二人は受験で忙しくなる……そうしたらここへ来るのも減っていくに違いない。
そうなる前に京子は中学生活で一番大きく残りそうなごらく部での思い出を作ろうとしているのだ。
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2016/09/05/08:56
「なあ、あかりはーーー」
京子があかりに問う。
もちろんあかりは京子の力になりたい。その事を告げようとしたがーーー。
「京子。この話はここまでにしておこう」
結衣の言葉に遮られてしまう。
「ええ、まだあかりに聞いてないのに……」
京子は唇を尖らせて結衣にジト目を向けた。
「聞いても無駄だよ。あかりも京子の受験を邪魔したくないと思ってるよ。そうだろ?」
「え、あ……えっと……」
話を中断されて焦ったところで結衣から話を振られる。
あかりも京子ちゃんの意見に賛成だよ。とそんな簡単な言葉が中々出てこなかった。
そうこうしている内に京子が悪くなったようにそっぽを向いてしまった。
「だぁっ! もうわかったよ。わたし一人で出てやる! 止めたって諦めないんだからなっ!」
持ってきたガンプラの箱を紙袋に戻して部室から出ていこうとする。
京子は襖の前で一度停止して振り向いた。
「いや、止めろよ!」
「どっちだよ!」
「ここは普通。行かないでっー! って言って皆で止める場面じゃん!」
「お前のボケにつっこむ気にもなれないんだよ。勉強する気ないなら帰ってもいいよ」
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2016/09/05/08:56
「くっ……馬鹿にしてぇ。絶対優勝してやるんだからなぁっ!」
捨て台詞を吐いて京子は勢いよく部室を出ていってしまった。
「京子ちゃん!」
あかりは京子が出ていったのを見て、鞄を手に立ち上がる。
「ごめんね。あかり……京子ちゃんを追いかけるね!」
結衣とちなつに伝えてからあかりも部室を飛び出して行く。
「あかりちゃん……! せ、先輩どうします?」
「あかりが探しに行くなら大丈夫だよ。京子も本当に突拍子もない事を言うよな。これに懲りて少しは頭を冷やしてほしいんだけど」
「……そうですね」
そう言いつつもちなつは心配そうに襖を見つめていた。
京子の頼みを断ったのに少しは悪いと思っている……だが、結衣の言っているのも事実なので素直に首を縦に触れなかった。
今は、あかりが京子を見つけてくれる事を切に願っている。
◇
「京子ちゃんどこに行ったんだろう……」
京子探索から数時間が経過した。
学校を探したが彼女を見つける事が出来ず、校内に残っていた友人達に聞き込んで学校の外へ走り去っていた姿を見たという情報が入り。あかりも学校を出て京子の行きそうな場所を探す。
(ここにはいないかな。お母さんが買い物でよく来てる場所だけど……)
あかりが今来ているのはあかりの母が御用達にしている商店街だ。
作りが古い物や真新しい建物まで様々な店がここには並んでいる。
「あれ?」
あかりは足を止める。
前方に京子らしき後ろ姿が店に入っていく所を見たからだ。
「間違いない……京子ちゃんだ!」
あかりはすぐさまその店に駆け寄っていく。
店の前で止まり。上を見上げて店の名前を確認する。
「月光蝶……?」
店の名前を口にする。
比較的新しい作りの店だが、名前だけではどんな店かわからない。
勇気を出して中へ足を踏み入れるあかり。
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2016/09/05/08:56
「わぁ……ガンプラがいっぱいだ」
中に入ってあかりの目に飛び込んできたのは、商品棚に積まれたガンプラの山。それにショーケースに飾られた完成済みのガンプラ。
そう。ここは模型店だったのだ。
長年続いているシリーズとはいえ、山程あるとは思わなかったあかりはこのガンプラの山に目を奪われていた。
「おい、貴様……」
「え……ひっ!?」
声をかけられたのでそちらを向く。
するとあかりの顔が青ざめて小さく悲鳴をあげた。
そこに立っていたのは一人の男性。
あかりがすっぽりと隠れてしまうほどの巨体。
ぎらついた瞳にいかつい顔。
ボサボサの髪にチョンマゲ……鍛え上げられた筋肉質の身体。
あかりが怖がるのに十分な強面の男性が睨み付けていたのだ。
「見かけん顔だな……さてはライバル店のスパイかっ!」
「え、ええ!? 違いますよ。あかりは……」
「おーい。店長」
ひょっこりと店の奥から京子が顔を覗かせていた。
「あ、京子ちゃん!」
「お、あかり。どうしてここにいんの?」
「心配で追いかけてきたんだよ。探してたんだよ」
「別に追いかけて来なくてもよかったのに、皆にガンプラ買いに来ただけだからさ」
「へ? 皆に断られて落ち込んでたんじゃないの?」
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2016/09/05/08:57
「全然」
「ええ〜……」
京子は全く気にしていない様子だった。
全身の力が抜けてへたり込んでしまう。いままで走り回っていた疲れがここにきて一気に押し寄せてきた。
「む、こいつはお前の知り合いなのか?」
あの難いのいい男性が眉根を歪めて京子に質問してくる。
「うん、そだよ。わたしの幼馴染みなんだ」
「ほぅ……そうなのか。で、こいつはガンプラ作るのか?」
「まだ。これから始めるところだよ」
「あ、あの……京子ちゃん」
「ん? なに?」
平然と会話をしている京子にあかりはある質問をしてみる。
「この人と知り合いなの?」
そう問うと京子は「ああ」と言って彼の自己紹介を始めた。
「この人はギムさん。ここ月光蝶の店長さんだよ」
「て、店長さん! そうとは知らないで怖がってすみません!」
即座に立ち上がってあかりは頭を下げた。
するとギムは口角を少し上げて首を横に振った。
「気にするな、そんなに気にしていない。強面のは生まれつきなものでな……」
「は、はぁ……そうなんですか」
顔を上げてギムの顔を見る。
生まれつきこの顔って凄いなとあかりは思った。
「ところで小娘よ。前から言ってるだろう……俺を呼ぶ時は店長じゃなく、御大将と呼べとな!」
不服そうに京子を見るとギムは拳を握って言い放った。
京子は苦笑をしながらこめかみを掻いた。
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2016/09/05/08:57
「悪かったよ、御大将」
「ふむ、それでいい」
御大将と呼ばれギムは満足そうに口の端を上げた。
「ところで御大将。今日の売り上げは?」
「絶好調である!」
腰に手を当て、ギムは胸を張って叫んだ。
「話が見えてこないんだけど……どうしてこの人は御大将って言葉に拘るの?」
「ああ、この人さぁ。ガンダム作品に出てくるギム・ギンガナムってキャラにそっくりでさ見た目だけじゃなくて声まで似てんだよ」
「へ、へぇ〜……」
よくわからないが凄い似ているのだという事は伝わった。
「ところで京子よ。俺の紹介はいいからガンプラ選んでこいよ。買いに来たのだろう」
「ああ、そうだった……」
再び奥に行こうとした所で京子の足が止まってギムの方に身体を向ける。
「あのさ、御大将。せっかくあかりが来てくれたんだからさ、何かオススメしてやんなよ」
「え、え? そんな悪いよ! まだあかりはガンプラについてよくわかってないのに……」
「心配すんなってわたしが一から教えてやるからさ、ねぇ、頼むよ御大将!」
あかりの意思とは関係なく話がトントン拍子に進んでいく。
ギムは「任せろ!」と言うと膨大の数のガンプラの中からあかりに見合う物の場所を的確に割り出し、その場所へ駆け、その商品棚から一つの箱を取り出して戻るとあかりの前に突き出した。
「このターンX何てどうだぁ? この俺様オススメのガンプラでとっても凄いよぉな代物だぞ!」
「え、えーっと……あかりはあんまり好きな見た目じゃないので、ごめんなさいっ!」
「おのぉおれぇえええええええええええっ!!!!!!?」
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2016/09/05/08:58
自信を持って勧めたのに速攻で断られたのでギムはショックのあまり片膝をついて叫んだ。
「わ、わわっ! そんなに落ち込まないでくださいっ! 選んでくれたのは嬉しいですから」
「ふむ、そうか……ならよし!」
ギムは立ち直った。
すぐに立ち上がってその強面の顔を向ける。
「御大将は打たれ弱いけど立ち直りも早いんだ〜」
「そ、そうなんだ……」
強そうな見た目なのに意外だと思ったが口が裂けても言えない。
ここで何か思いついたのか、京子は満面な笑顔で口を開いた。
「お、そうだ。あかりにぴったりなガンプラあるよ」
「え、そうなんだ。どんななの?」
「探してくるからちょっと待ってて〜」
店内を探して歩き周り、京子は一つの箱を手にとってあかりの前に戻ってきた。
「これだよ。これこれ!」
「こ、これは……」
箱を受け取り箱に描かれたイラストを見てあかりは驚愕した。
そこに描かれたのは何とも地味でそれほど強くなさそうなロボットがいた。
「ジムって言うの……これ強いの?」
「全然。すぐぶっ壊されるよ」
「何でそんなのにしたのっ!」
「ふむ、ジムか……確かにこの地味な小娘には丁度いいな」
「初対面の店長さんにまで地味って言われたぁっ!?」
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2016/09/05/08:58
自分が地味なのは自覚してるつもりだったが初対面の人間にまで言われるとなると悲しくなってしまう。
あかりが泣きそうになりそうなところで京子はあかりの肩に手を置いた。
「まあ、地味って言うのは嘘だよ。それなら初心者でも作りやすいから選んだんだ」
「……そうなんだ」
言われて箱に視線を落とす。
確かにこれと言って難しそうな造形ではないため初めてガンプラを作るあかりでも簡単に出来そうだ。
「つうわけで……御大将。これと必要な器具売ってくれ。わたしが払うから!」
「ええっ! そ、そんなの悪いよっ!」
あかりは慌てて首を横に振る。
京子はあかりに向けてにっと笑った。
「大丈夫大丈夫。今月おこづかい結構もらったし……あかりがガンプラやってくれるだけで嬉しいんだ」
「……京子ちゃん」
そう返されて何だかあかりは照れ臭くなってしまった。
「じゃあ、これとこれとこれくださいっ!」
「おうっ! まいどありであるっ!」
「あ、ちょっ! いつの間にっ!」
まだ具体的にはやると言っていないのだが強引に押し切られてしまった……結局ガンプラと作るのに必要な器具を奢ってもらい。あかりは帰路へとつくこととなった。
◇
「……」
あかりは自宅の自分の部屋で布団に身を預けながらガンプラの箱を両手で持ち上げながら見ていた。
「どうしようかな……これ」
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2016/09/05/08:58
京子が買ってくれたから作らないのは失礼なのだが、初心者の自分に作れるのか不安なのだ。
「ええい! こうなったら……開けちゃえ!」
飛び起きてベッドの上に箱を置く。自棄になって箱を開けようとする。
「あかり〜。ご飯よ〜」
一階の方から声が聞こえた。
時計を見ればもう夕飯の時間になっている。家についてからいままでの時間箱とにらめっこしていたのかと内心驚きつつもあかりは一階に聞こえるように返事をした。
(後で開けようっと……)
箱の中身を楽しみにしつつ、ベットから降りて部屋を出ていき一階へ降りていくのだった。
◇
「よし、今度こそ開けるよ!」
夕飯と入浴を済ませてあかりは部屋へと帰還していた。
時刻は八時。あかりは九時になると眠くなってしまうので早めにガンプラを完成させたい。
箱に手を伸ばして一気に開ける。
中にはビニールに梱包されたパーツとシール。説明書が入っていた。
「これがガンプラ……パーツがいっぱいある。とりあえず説明書読んでみよう。最初に読むのが肝心だもんね」
説明書を手にとって中身を読み始める。書かれていたのは部分事の作り方の手順。パーツの番号にランナーのアルファベット等。細かく書かれていた。
「パーツが多くて難しそうに思ったけど、丁寧に書かれていてこれなら迷うことなくあかりでも作れそうっ! 早速作ってみようかな」
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2016/09/05/08:59
ビニールを開けて中に入っていたパーツをベッドの上に広げた。
続いてあかりは袋から京子に買ってもらったプラモデルを作るのに必須な器具を取り出す。
その中から取ったのはニッパーと呼ばれるランナーからパーツを切り取るアイテムだ。
「これを使うんだね。先ずは開けてっと……」
後ろの厚紙を破いてプラスチックの容器に入っていたニッパーを取り出し、説明書に目を通す。
「最初は頭から作るんだ。パーツはこれだね……えーっと、パーツを切る時はランナーを少し残して後から切り離すんだね」
説明書の通りにやってみる。ガンプラの箱を探さない受け皿代わりにし、切り離したランナーの一部をそこに捨てる。
「こうしてこうで……あ、簡単にはまった。凄い!」
簡単に組合わさってあかりは感激する。次は目の部分にシールを貼ると書かれていた。
今度は別の器具。ピンセットを厚紙を破いて中から取り出す。
これはシールを貼る時に使うと京子から聞いていた。
シールが貼られてるシートから目の部分のシールをピンセットで剥がして指定の場所にゆっくりと貼る。
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2016/09/06/15:06
「綺麗に貼れた! これで頭が完成したね。よーし、この調子で頑張るよっ」
まだ頭しか完成させていないのにガンプラを作るのが楽しくなってきていた。
今なら京子が勧めてきたのも何となくわかる気がする……あかりは完成した姿を楽しみに想像しながら組み立てていくのであった。
◇
翌日。
「ほえ……?」
あかりは目を覚ますと目の前が真っ暗だった。
頭を上げると自分がお尻を突き出してベッドに頭を埋めながら寝ていた事に気づく。
「あかり……なんて格好で寝てたんだろう」
状態を起こして姿勢を正す。変な姿勢で寝ていたせいで腰がいたい。
重たい瞼を擦ってベッドの上を見ると先程まで顔があった場所にぐしゃぐしゃになった説明書がしかも涎で濡れている。
「うわぁ……説明書が……これは捨てないとダメだね」
つまみ上げてごみ箱の元まで歩き説明書を捨てた。
「そういえば……ガンプラどこまでやったんだっけ?」
寝落ちしてしまったせいでどこまでやったのかを思い出せない。
ベッドの上を見てみると丁度枕の横に完成されたジムが仰向けになって寝そべっていた。
それを見てあかりの眠気は覚め、枕元まで近づいてジムを手に取る。
「そっか、思い出した……あかり完成させて眠っちゃったんだ」
そのジムには武器とシールドも装着されていてバリ一つない仕上がりになっていた。
京子に言われた通り。デザインナイフで残ったバリを取ったり。ヤスリで削ったりした成果がここに出ていた。
「最初見た時はそうでもなかったけど……意外とカッコいいかも」
と、言って完成されたジムを上空に掲げて飛行機の玩具で遊ぶ子供のようにぶーんと言いながら部屋をぐるぐると回る。
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2016/09/06/15:06
「って、遊んでる場合じゃないよ。お片付けしないと!」
ベッドの上にランナーが散乱している。このままにしておく訳にはいかないのでジムを机の上に置いて散乱したランナーを手早く箱にしまう。
「これでよしっと、学校から帰ってきたらごみ袋に入れて分別しないとね……」
あかりは机に置いたジムに視線を向ける。
「完成したこのガンプラを見たら京子ちゃん喜ぶかな?」
頭の中で京子の笑顔を想像する。
彼女だったら完成したこのジムを見たら喜んでくれるに違いない。
そう心の中で呟いてあかりは微笑んでジムの前まで歩いてジムを掴む。
「学校へ持っていこう。せっかく作ったんだから見せてあげないとね」
京子に見せるのを楽しみにしながら、あかりは学校へ行く準備を始めた。
◇
「ええっ!? 買ったの!」
学校の休み時間。
教室でちなつが目を丸くして叫んだ。昨日京子を探してその場の勢いでガンプラをおごられたのを話したのだ。
「うん、中々楽しかったよ。作るの」
「ふーん……あかりちゃん。すっかり京子先輩に乗せられてるよね」
「あ、はは……」
あかりは苦笑いで返す。
ちなつに返す言葉が今のあかりにはなかったから。
「そもそも……反対してたんじゃないの?」
「ううん、あかりは元から京子ちゃんと大会に出ようとしてたんだよ」
「え、そうなの?」
「うん、京子ちゃんの言う通り……ごらく部での思い出を作りたかったから」
目を細めてあかりは言う。
その言葉を聞いてちなつは複雑な表情を浮かべて口を開いた。
「わたしも京子先輩の言ってる事はわかってるよ……でも、ガンプラにかまけて受験落ちちゃうのは嫌だなって」
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2016/09/06/15:07
「そうだよね。あかりもそう思うよ……」
あかりもちなつと同じで京子に受験を失敗してほしくない。
ただそれよりも強い思いが彼女の中にはあった。
「けどね。今やらなかったらきっと後悔すると思うんだ。京子ちゃん達と過ごす中学生活は残り少ないし……京子ちゃんの言う通り最後にでっかい事をやってみたいの」
あかりの言い分を聞いてちなつは肩を竦める。
「あかりちゃんって、本当にお人好しだよね……」
「え、そうかな?」
「そうだよ。そんな性格だから京子先輩に引っ張り回されるるのよ」
「だ、だって断れないし……」
あかりは頬をぴくつかせる。
彼女に聞こえないようにちなつは「そこがあかりちゃんの良いところなんだけどね」と呟いた。
「何か言った?」
あかりが首を傾げる。
首を横に振った後。ちなつは唇を動かした。
「ねえ、部活の時にあかりちゃんが作ったガンプラ見せてよ。どんななのか気になる」
「うん! 京子にも見せる予定だったからいいよ」
あかりは飛びっきりの笑顔で返した。
自分の作ったガンプラを見せる相手が増えてあかりの楽しみがまた増えるのだった。
◇
「ええっ!? 京子ちゃん帰っちゃったの!」
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2016/09/06/15:07
放課後。
茶道部部室にやって来たあかりに結衣が京子が帰ってしまったということを告げられた。
「何か用事でもあったのかな……?」
「模型店に行ってくるって言ってたよ」
(模型店……間違いなくあそこだ)
頭の中で思い浮かべたのは昨日行った模型店『月光蝶』だ。
「ごめん、結衣ちゃん! 京子ちゃんのところへ行ってくるね!」
「えっ! ちょっとあかり!」
あかりは一度頭を下げて部室を出ていこうとするが、襖の前で止まる。
結衣の声で制止したからではない。ある事を思い出したからだ。
振り向いてあかりは口を開く。
「結衣ちゃん。ちなつちゃんが来たらごめんって言っておいて、また今度見せるからって!」
ちなつは掃除当番で部室に来るのが遅れている。
結衣に告げて早々に部室を出ていく。
ちなつにジムを見せるのが楽しみだったが、ガンプラやそれを作るツールを買ってくれた京子に感謝の気持ちを込めて見せたかった。
精一杯作ったこのガンプラを一番最初に見せればきっと喜ぶだろうと……ちなつには申し訳ないがこの気持ちだけは譲れなかったのだ。
「何を謝ればいいんだ……」
部室にただ一人残された結衣は呆然と襖を見つめるのだった。
◇
数時間走って月光蝶の前へと到着した。
乱れた息を整えながら店内へと足を踏み入れる。
「いらっしゃいである!」
入るなりギムの強面の顔と野太い声で歓迎された。
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2016/09/06/15:08
「店長……じゃなくて御大将さん。こんにちは」
行儀よく頭を下げて挨拶をしたあかり。彼女の姿を見てギムは口角を上げた。
「貴様は京子の友人であったな。名前は……」
「あかりです。赤座あかり」
「ふむ、確かそのような名前であったな」
かっかっかっ! と快活に笑うギム。あの反応だと名乗った事を忘れたのだろうとあかりは苦笑する。
「で、今日は何か買いに来たのか?」
ギムが不敵な笑みを浮かべて尋ねてきた。
「ああ、いえ……京子ちゃんを探しに来たんです。ここに来てるみたいなんですけど居ますか?」
「ふむ、そうだったのか……だが、残念だったな。奴ならさっき出ていったぞ」
「そ、そうなんですか!」
どうやら行き違いになってしまったらしい。
全速力で走ってきたのにこんな結果になってしまいあかりは肩を落とした。
「あいつに何か用があったのか?」
「はい……昨日買ってもらったガンプラ。完成したんで京子ちゃんに見てもらおうと思って……」
「ほう。もうできたのか……で、作ってみた感想は?」
「はい。すっごく楽しかったです!」
落ち込んでいたあかりは作っていた時を思い出し明るい笑顔を向けて返事をする。
「それは何よりだ。ガンプラは楽しんだもん勝ちだからなぁ!」
あかりの返答に満足したのか、ギムは上機嫌に笑う。
「良ければ見せてはくれまいか、貴様の作ったジムをーーー」
「え?」
あかりは面食らった表情になる。
まさか見せてくれと言われるとは思わなかった。
一番最初に京子に見せ上げたかったけれど、ギムにもお世話になったから別に見せても構わないだろうと鞄からガンプラの箱より小さな箱を出してレジの上に置いた。
開けるとそこにはタオルが詰められていてあかりはガンプラが壊れないようにクッション代わりに入れていたのだ。タオルを取ってジムをギムに見せる。
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プラネテューヌ親衛隊
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プラネテューヌ親衛隊
2016/09/06/15:09
「これです」
あかりはカウンターの上にジムを置いた。
「ふむ……」
ギムはあかりのジムを持ち上げ、全体をくまなく観察する。
「あ、あのどうでしょうか?」
ギムが眉間に皺を寄せて見ていた為、あかりは緊張していた。
もしかして出来が悪かったのか、恐る恐る聞いてみる。
ギムはジムからあかりに視線を変えて口を開いた。
「正直言って見事だと言う意外に感想がないな……」
「え?」
返された言葉にあかりは目を見開いた。
「初心者にしては丁寧に作られている。バリが一つもないのは驚いた……」
「それは京子ちゃんに言われたからです。バリはモデラーズナイフで削り落としておけって」
「あいつの言うことを馬鹿正直に実行したか……地味な奴かと思っていたが、これは技術を学べば凄いモデラーになりそうだな」
「あはは……」
誉めてるのか貶しているのかわからないが一応誉められているのだとあかりは強引に解釈する。
「そろそろ返してくれませんか、京子ちゃんの家に行きたいんで」
「む、そうか……ほら」
ギムからジムを返してもらおうとあかりが手を伸ばした。
「それ、あなたのジム?」
あかりの指がジムに触れた時。女性の声が耳に届く。
声のした方向を見ると二十代くらいでオールバックの化粧が濃い女性がこちらを見ていた。
店内には他にお客が居たようだ。
「あ、はい。そうです……昨日作ったんです」
あかりはジムを手に取ってから言った。すると女性は目を細めてジムに視線を向けてからあかりに視線を移して微笑む。
「そう。もしかしてガンプラ作るのこれが初めて?」
「はい、そうです」
「なら、『ガンプラファイト』は知ってる?」
「ガンプラ……ファイト?」
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