GBG2 アーシェ外伝
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プラネテューヌ親衛隊
2017/09/04/22:04
この物語はガンプラビルドガールズセカンドに登場する桜木・R・アーシェが主役のお話です。
まだ高校一年生のアーシェが趣味であるガンプラファイトを通してかおること出会い。生徒会に入り。恋をするーーー。
そして親友と呼べる相手と出会う。
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プラネテューヌ親衛隊
2017/09/04/22:17
桜翠学園。
元は女子校だったが、前年から共学化し少ないながらも男子生徒もいる。
普通科の他に芸術科や音楽科などもあり、生徒一人一人の個性や能力を伸ばす教育環境が整っている。
そんな学校の音楽科にこの物語の主人公はいた。
「あ、桜木さん」
クラスメイトの女子生徒が一人。歩み寄ってきた。
整った顔に鎮座する少しつり上がった目。長い金髪の髪をリボンで二つ括りにした少女。
桜木・R・アーシェ。
この学園で彼女を知らない者はいない。成績は一年トップであり。父親は元バイオリニスト、母親は世界的なピアニストと超お嬢様だった。
「ん、どうしたの?」
アーシェは名前を呼ばれ、相手に微笑みを返す。
「これから友達とスイーツを食べに行くんだけど……桜木さんもどうかな?」
「っ!? えっと、遠慮しておくわ……」
断ったが一瞬後悔した顔をするアーシェ。クラスメイトは「そっか」と言って友人のもとへ戻っていった。
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2017/09/05/04:49
アーシェは帰り支度をして教室を出ていく。
「アンタ。桜木さんが来るわけないでしょ」
戻ってきたクラスメイトに別の女子生徒が肩を竦めて言った。
「うーん……桜木さんって、パフェ好きそうな気がしたんだよなぁ」
「ないない。あの桜木さんがそんな安物食べないって、毎日ステーキやキャビア食べてるんでしょ」
「そんなイメージあったけど、私、一昨日に桜木さんが牛屋で牛丼食べてるの見たよ。しかも特盛」
そう言ったのは別の生徒だった。
「まさか……あの桜木さんに限ってないわよ。それこそ見間違いなんじゃないの」
「確かに……一瞬見ただけだからそうかもしれないね」
「でしょ〜」
「さあ、この話は終わりにして皆でパフェ食べに行こうよ」
三人は「おー!」と拳を突き上げて教室を出ていくのだった。
アーシェには誰にも言ってない秘密があった。
それは自分が大食いで高級料理が食べられないこと。
そしてもう一つは………。
「はあっ!」
今この世で人気のあるゲーム「ガンプラファイト」に熱中していることだ。
アーシェの愛機。ダブルオークアンタがハンブラビを撃破する。
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2017/09/05/21:00
暗闇が広がる宇宙空間に爆発が発生して一瞬だけ明るくなる。
「さあ、次の相手は誰?」
目の前に展開する数十体の敵にアーシェのダブルオークアンタが勇敢に突っ込んでいった。
「……フフ、いい子を見つけた」
外部モニターでアーシェの戦いを見ていた少女。自分のガンプラを片手に筐体『ガンプラファイトシュミレーターネオ』に乗り込んでいった。
「やっぱりCPU相手じゃこんなものね……」
アーシェは迫ってきた全ての敵を全滅させた。周りに何もいなくて肩を竦める。
「もう帰ろうかしら……」
「ねえ、そこのあなた?」
誰かに声をかけられる。声の方角に顔を向けると、そこに黒い機体の姿を確認した。
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2017/09/06/04:53
「私の相手をしてくれるかな?」
「え、ええ……いいですけど」
相手からファイトを申し込まれる。アーシェは了承した。
通信を送ってきたが、声のみで顔は映されていない。不気味に思いつつもアーシェは相手の機体を観察した。
同じ機動戦士ガンダムOOに登場するジンクスと呼ばれる機体だ。
ただ少し見た目が違う。頭に角が取り付けられ、装甲が黒く染まっている。
いわゆるカスタム機というやつだ。
「ジンクス……それに初期型の。フフ、そんな機体で最新機である私のダブルオークアンタには勝てないわよ!」
勝ち誇った笑みを浮かべたアーシェはダブルオークアンタを前進させる。
ダブルオークアンタの動きに合わせて相手は手にしたスナイパーライフルを構えて放った。
「そんなの当たらないっ!」
ダブルオークアンタが横に大きく回避する。続けて相手は砲撃したがアーシェはそれも難なく回避してみせた。
「そんな動きの読みやすい攻撃。当たらーーー」
言葉の途中でバンっ! と音が響き、衝撃でコックピットが揺れる。
「な、何が……あっ!」
アーシェはすぐに機体を確認した。
すると、モニターに頭部がなくなっているのが示されていた。
「まさか被弾したの。いつ……」
「ふふふ……赤い彗星のシャアだったらこう言うよね」
「……?」
相手が静かに呟く。アーシェは眉間に皺を寄せた。
「必ずしも、ガンプラの性能で勝敗の優劣が左右される訳がないってね」
「わ、私が負けるっていうんですか?」
「やってみる?」
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2017/09/06/22:29
「望むところですよ。トランザム!」
アーシェの叫びと共にダブルオークアンタの身体が赤い光を放つ。
これはOOシリーズに登場する一部のMSが使えるトランザムというシステム。
内部の粒子を解放し、一定時間機体性能を三倍に引き上げるものだ。
「じゃあ、私も……トランザム!」
相手もトランザムを使用した。これで両者のガンプラの性能が強化されたことになる。
先に動いたのはダブルオークアンタだ。大きく迂回してジンクスの射程から離れようとする。
「先手を取るわ。相手はジンクス……クアンタに勝てる訳が……」
「だから言ったじゃない」
「っ!」
前方から声。見れば目の前にジンクスがいた。まるでアーシェの考えを読んでいたかのように……。
「機体性能で相手を判断しちゃいけないよって!」
ジンクスはスナイパーライフルの側面をダブルオークアンタに叩きつけられる。
「ぐあっ!」
衝撃を受けて体勢を崩すダブルオークアンタ。ジンクスはダブルオークアンタの胴体に二、三発赤い閃光を撃つ。放たれた光はダブルオークアンタの胴体を貫通した。
「姿勢を保たないと……」
スラスターを噴かして姿勢を制御するアーシェ。すぐに反撃に転じようと操縦レバーを前に倒そうとしたが……。
「……う」
アーシェの額に汗が浮き出る。動けなかった……何故ならダブルオークアンタの喉元にジンクスのGNクローが突き立てられていたからだ。
ジンクスはクアンタが姿勢を戻す瞬間に一気に距離を詰めてきたのだ。
「どうする。まだやる?」
「……降参、します」
実力差が嫌でもわかってしまった。自分ではこの人に勝てない。アーシェは手も足も出せずに敗北してしまうのであった。
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2017/09/07/05:07
ファイト終了後。アーシェはダブルオークアンタを手にシュミレーターから出てきていた。
その表情は浮かばれない。無理もない。勝てると思っていた相手にボロ負けしてしまったのだから……。
大きな溜め息を吐いて、反対側のシュミレーターを見る。
(強かったな。あの人……女の人よね。どこかで聞いたことのある声だったような……)
アーシェが対戦相手がどんな人物かを想像していると、筐体からプシュッ、と音が聞こえてくる。
シュミレーターの扉が開いた音だ。その音がなったすぐに一人の少女が中から現れる。
「え……あ、あなたは!?」
出てきた人物を見て、アーシェは驚愕に目を見開いて口をパクパクさせた。
中から出てきたのは、腰まで伸びた夜色の髪を右側面で小さく一括りにし、頭頂部に小さな白いリボンが結われている。
清楚なお嬢様という表現が正しい風貌の少女がアーシェの顔を見てにこり、と笑った。
「ふふ、こんにちはだね。桜木さん」
「か、かか……かおるこ副会長!?」
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2017/09/08/04:52
少女はアーシェと同じ桜翠学園の制服を着ている。
名前は鹿苑寺かおるこ。
一つ上の学年で芸術科。成績は二年生の中でトップ。その美しい容姿と誰にでも優しい性格で彼女のことを学園で知らない人などいない。
加えてかおるこはあの桜翠学園生徒会の副会長で、次期生徒会長になるのではと噂も流れているのだ。
「ま、まさか相手がかおるこ先輩だったなんて……無礼な発言してすいませんでした!」
アーシェは深々と頭を下げた。
「いいよ。気にしないで、それより頭を上げてくれるかな」
「は、はい」
アーシェは頭を上げた。目線が合うと、かおるこはにっこりと微笑んだ。
「久し振りだね。桜木さん。入学式以来かな?」
「え、覚えていてくれたんですか?」
かおるこは短く首肯して続けた。
「うん。廊下ですれ違った時にアーシェちゃんが落としたハンカチを私が拾ったんだよね。新入生の中でも可愛い子だったから覚えてるよ」
「か、可愛いなんて、そんな……」
学園のマドンナで、次期生徒会長のかおるこに可愛いと言われ、アーシェの顔はにやついていた。
「あ、そろそろ話を本題に入りたいんだけどいいかな?」
「は、はい。何でしょうか?」
アーシェが聞き返すと、真剣な眼差しを向けたかおるこが急にアーシェの両手をガッツリと掴み。顔を近づけてきた。
「な、何を!」
「桜木さん。いや、アーシェちゃん!」
「は、はい!」
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2017/09/08/05:11
思わず返事をしてしまった。かおるこの真っ直ぐな瞳から逸らすことができない。
「私ね。さっきの戦いで感じたんだ……私にはアーシェちゃんが必要だって! 私はアーシェちゃんが欲しいよ!」
「え、ええええっ!?」
かおるこの大胆発言に顔を赤くしたアーシェ。
「な、何を言ってるんですか……私はかおるこ先輩を尊敬してますが、私はそっちの趣味は……」
「アーシェちゃん。生徒会に入ってくれないかな……!!!!」
「だから……私はそっちの趣味は……え、生徒会? え、ええええっ!?」
アーシェは先程より大きな声をあげる。周囲の客から変な目で見られていたのは、言うまでもない。
二人は近くの喫茶店に場を移していた。落ち着ける場所で話そうというかおるこの提案だ。
かおるこはコーヒーに一口含んで飲むと話を始めた。
「アーシェちゃんは知ってるよね。うちの生徒会のことを」
「え、ええ。よく……長年全国女子ガンプラ大会で優勝してますから……」
アーシェは答える。
桜翠学園生徒会。生徒の悩みや問題を生徒会メンバーが自ら解決する。
誰もが生徒会に相談を頼りにしているが、もう一つの顔があった。
それがガンプラファイトで負けなしの強豪チームであると。
「知ってるなら話は早いよ。実はメンバーがあと一人居なくてね。今探してるんだよ」
「そ、それで私を……無理。無理ですよ! さっきボロ負けしましたし……」
「ご、ごめんね。アーシェちゃんの実力を知りたいから仕方なく……」
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2017/09/08/22:33
「それならさっきのでわかりましたよね……私じゃ足を引っ張るだけですよ」
どんよりとした重たい空気がアーシェにまとわりつく。それほどさっきのファイトで負けたことを気にしているようだった。
「でも、私はアーシェちゃんはもっと強くなるって思ってるんだけどな」
「え?」
かおるこの言葉にアーシェが目を丸くした。
「まだまだ未熟なところはあるけれど、経験を積めば良くなっていくと思うの……今日の戦いで気づいたんだけど、ビットを使わなかったよね。もしかして使えないのかな?」
「……あ、はい」
アーシェが素直に頷く。ビットとはダブルオークアンタのバインダーに取り付けてある兵器。
遠隔操作によって操るものなのだが、アーシェは使いこなせていなかったのだ。
「じゃあ、後で練習しようか。私で良ければいつでも付き合うよ」
「え、ほ、本当ですか!」
かおるこが微笑んで首肯する。
「ただし。生徒会に入るって条件でね……どうかな?」
「……」
アーシェはしばらく考え込んでから、こう切り出してきた。
「一晩だけ……考えさせて頂けませんでしょうか……答えは、明日生徒会室で言います」
「わかった。待ってるね」
言葉の最後に「……それと」と付けてかおるこは続けた。
「最後に一つ聞いてもいいかな?」
「はい。何でしょうか」
「アーシェちゃんはどうしてガンプラファイトを始めたの?」
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プラネテューヌ親衛隊
2017/09/09/05:03
「……」
ガンプラファイトを始めた理由を尋ねた途端。アーシェの表情が曇った。
その表情を見、聞いてはいけないことだと悟ったかおるこが訂正しようとしたが……。
「かおるこ先輩は……私がピアノの国内コンクールで優勝したのを知ってますか?」
ぎこちない笑みを浮かべてアーシェが言った。ガンプラファイトを始めた理由……それを聞いてほしいのだろう。
かおるこは首を前に倒した。
「アーシェちゃんが中学三年生の頃だよね。新聞にも載ってたよ。あの桜木・R・レーシェの娘が優勝したって、当時騒がれてたもん」
「……はい」
アーシェは浮かばれない顔をしていた。それが気になったかおるこが一歩踏み出して聞いてみた。
「もしかして、その後に何かあったの……? 将来お母さんのようなピアニストになるって世間で言われてたアーシェちゃんが、うちに来てピアノじゃなくて作曲の勉強してるのに関係があるの……」
「才能がないって言われたんです……お母さんに……」
「え?」
その発言にかおるこは言葉に詰まってしまった。母親に才能がないと言われた……その一言がアーシェの心に重くのし掛かっているか、計り知れないから。自分に言えることはない。
「あれは……コンクールに優勝して間もない頃です」
アーシェはゆっくりと過去を語り出した。
「お母さん。見て、私、優勝したのよ!」
中学三年生の夏。アーシェの母。桜木・R・レーシェが家に来ていた。
世界的なピアニストのレーシェは、元バイオリニストの父を伴って世界を転々としていた。
年に数回。一人暮らしをしているアーシェの家に両親がやって来る。
アーシェはこの日を楽しみにしていた。
先日、国内コンクールで優勝を果たしたアーシェ。その両手には輝くトロフィーが握られている。
尊敬する母親に誉められたい。その一心で母親にトロフィーを見せた。
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プラネテューヌ親衛隊
2017/09/10/13:40
「そうね。凄いことだわ」
母が誉めてくれた。アーシェにとってこの上ない喜びだった。
ーーーだが。
「でも、あなたはもうピアノをやめなさい」
レーシェが言ったその一言は、アーシェにとって残酷なものだった。
「え……ど、どうしてよ……」
「才能がないからよ……」
「っ!?」
レーシェの言葉は更にアーシェの心を抉る。トロフィーを強く握りしめた。
怒り。悲しみ。どちらの感情もアーシェの中でぐちゃぐちゃに混ざり合う。尊敬する母親に才能がないと言われたら誰だってそうなる。
アーシェの両目から涙が溢れ、床に落ちた。
「お母さんの馬鹿っ!!!!!!!!!」
アーシェはその悲痛な叫びと共にトロフィーを持ったまま部屋を出て行ってしまう。
「何やってるんだろう……私」
部屋を飛び出したアーシェは公園のブランコに腰かけていた。
しばらく泣いて漸く落ち着いたところ。周囲に人がいなくて本当に助かった。
「あ〜……お母さんになんてことを……」
レーシェに向かって馬鹿と言ってしまった後悔が今になってくる。穴があったら入りたい気分だ。
「あ、見つけた……」
「……お父さん」
顔を上げると父親がいた。
息は荒く。額に汗が噴き出していることからここにやってくるまで全速力で走ってきたに違いない。
「あはは、アーシェは早いなぁ」
「ご、ごめんなさい……」
「何で謝るんだい?」
父親が隣のブランコに座り。優しく微笑みかける。
「私のこと……探してくれてたんでしょ」
「愛娘がいきなり飛び出して探しに行かない親はいないよ」
「お母さん……来てないけど」
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プラネテューヌ親衛隊
2017/09/10/14:53
「まあ、レーシェだからね……」
父は渇いた笑いを浮かべる。表情を真剣なものに変えてアーシェの頭にその大きな手を置き、わしわしと撫でる。
「でも、アーシェのことを心配してたよ。早く家に帰ろう」
「……うん」
まだレーシェに会うのに抵抗はあるものの。いつまでもここにいるつもりはなかった。
帰ってレーシェに謝ろう。そんな気持ちがアーシェの腰を上げさせた。
二人でまだ日の沈んでいない夕焼け空の下を並んで帰る。
「ねえ、お父さん……私これからどうしたらいいかな。才能ないって言われちゃったし」
「そのわりにはトロフィー捨てないんだね」
アーシェが握っているトロフィーを見、父親がそんなことを言った。
「当然よ。だってこれは……私が頑張って努力して手に入れた証だから、これを捨てちゃったらいままでの私を無駄にしちゃうもの」
「はは、そうか。そういうところはそっくりだな」
「何が?」
「何でもないよ」
父親はにっこりと笑う。次に彼はこう続けた。
「そうだ。アーシェ。ピアノが駄目だったら、作曲家を目指すのなんてどうだい?」
「作曲家?」
父親が短く首肯する。
「曲を作るのは楽しいんだよ。アーシェもやってみるといい。様々なことを学んで見聞を広げれば発想力が豊かになっていい曲が作れるようになるんだ」
「色々学んで見聞を広げる……私に出来るかな。作曲家……」
「私はアーシェなら出来るって信じてるさ、いつかお母さんが認める作曲家になる。そうなるように私は応援するよ」
「……ありがとうお父さん」
そう言って落ち込んでいたアーシェは満面な笑顔を父親に向けた。
「これが私がピアノをやめて作曲家を目指してる理由です……」
「そっか、そんなことが……」
アーシェの過去を知ってかおるこが腕を組んで唸る。
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プラネテューヌ親衛隊
2017/09/10/17:10
「ん、でもそれとガンプラファイトとどう繋がるの?」
かおるこが首を捻る。先程の説明にガンプラファイトをやるきっかけがなかったからだ。
「作曲を初めて父に言われた通り様々なことを学ぼう思って、いままで行ったことのない場所に足を運んでみることにしたんです。最初はゲームセンターに……そこで見つけたんです。私が知らなかった世界を」
「それがガンプラファイトなんだね」
アーシェが頷いた。当時のことを思い出しながら話を続ける。
「他のファイターが戦ってるのを見て、凄いなって思ったんです。互いに真剣に戦う姿や応援する人達を見て、興味が沸いて調べたんです……それで自分でガンプラを買って初めてみたんですよ」
視線を落とす。右手には自分が初めて買ったダブルオークアンタがある。
「最初はちょっとのつもりだったんですけど、今ではアニメも見るくらいハマってしまったんです」
「あはは、わかるよその気持ち。私もそうだったから」
「え、そうなんですか?」
アーシェが意外そうに目を丸くする。かおるこは苦笑いを浮かべて頷いた。
「私の家は両親が厳しくて……高校に入って一人暮らしするまではアニメやゲームを禁止されてたんだ。一応両親と暮らしてた頃も見てたりはしてたんだけど、見つかったら捨てられたりもしてたから……その反動かな。一人暮らしを初めてからのめり込むようになったのは……」
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プラネテューヌ親衛隊
2017/09/10/18:41
「そう、だったんですね……」
かおるこの家事情には少なからずアーシェも知っていた。
代々受け継がれた名家で祖父も両親も名に恥じないよう厳しくしつけてきたと。
自分の過去とは比べ物にならない道をかおるこは歩んできたのだ。アーシェはそれ以上何も言えなくなった。
「さて、この話はここまでにしようか」
かおるこは自分の両手をパンっ、と叩く。
「作曲家を目指す為に見聞を広めるってことなら、生徒会の件。考えてみてね……きっとアーシェちゃんの為にもなるから」
「はい」
アーシェは短く返す。かおることはここで別れ、自分の住むマンションへと帰っていく。
その日の夜。入浴を終え、パジャマに着替えたアーシェは自室のベッドに仰向けになっていた。
「生徒会……か、どうしよう」
アーシェは生徒会入りに悩んでいた。
かおるこが練習に付き合ってくれるというのは嬉しいのだが、自分が強豪桜翠学園生徒会に入るのに抵抗がある。
「……うーん」
唸っているとスマホから着信音が鳴る。アーシェは枕の横に置いていたスマホを手に取った。
「……誰だろ」
仰向けのまま待ち受け画面を見ると、そこには電話をかけてきた主。桜木・R・レーシェの名前が映し出されていた。
アーシェは跳ね起きて電話に出る。
「も、もしもしお母さんっ!? どうしたの急に……!」
『別に……気まぐれでかけただけよ。タイミングが悪かったかしら?』
相変わらずこちらに興味がないような声で言ってくるレーシェ。
「ああ。そう……別に悪くないわよ」
『ならいいわ。高校に入学してだいぶ経つけど、うまくやってるかしら』
「うん。友達もいるし、作曲の勉強もそれなりに進んでるわ……今度テストがあるから、明日からそっちの勉強もするけど」
『テスト……当然。成績はトップなんでしょう』
その言葉にアーシェの眉がピクリ、と動く。
「当然……と言いたいけど、悔しいことに現国だけトップじゃないの。入試でも前回のテストでも負けて現国は二位止まりよ」
『あらそう。あなたもまだまだね……』
アーシェは言葉に詰まる。反論のしようがない。いつも勉強しているのにどうしても現国だけは一位になれないでいた。
『で、一位の人は男? 女?』
「何でそんなことを聞くの?」
『いいから早くなさい』
理由は気になりつつも、アーシェは渋々その名を口にする。
「鳴海幸樹。そんな名前だった」
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プラネテューヌ親衛隊
2017/09/10/21:07
『鳴海幸樹……男ね。今度はその子に勝てるようにしなさい』
「……わかってるわよ」
二度も負けて黙っているアーシェではない。今度こそ勝てるように、これまで以上に勉強に励むつもりだ。
『そう。わかってるならいいわ……じゃあ、私はそろそろ飛行機に乗らないといけないから、切るわね』
「うん、じゃあね」
レーシェは返事をせずに電話を切った。通話を終えたスマホを枕元に置いて、アーシェは天井を見つめる。
「本当……相変わらず何だから……こちらの気も知らないで……」
作曲家を目指し始めてから、作詞した曲を何度もレーシェに送った。
けれど、感想を返されたことは一度もない……それはつまり作曲家として自分はまだまだ未熟だということ。レーシェに認められるには……もっと見聞を広めなければ。
「……よし」
レーシェとの会話で自分の中にあった迷いが晴れた気がした。
迷っている暇はない。アーシェは決意を固める。
翌日。
放課後になってアーシェは生徒会室の前に立っていた。ドアを数回ノックする。
「はぁい〜」
非常におっとりした声がした。かおるこのものではない。
「……失礼します」
ドアノブを捻って中に入る。中にはかおること瓜二つの容姿をした少女がいた。
いや、瓜二つと言ったら語弊がある。片方は右側で髪を一つ括り。そして絶望的に胸がない。
そしてもう一人は左側で髪を纏めて胸は例えるなら先程の少女が壁ならこちらは山だ。豊満なバストを持っていらっしゃる。
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プラネテューヌ親衛隊
2017/09/11/21:28
「あ、いらっしゃいアーシェちゃん。適当なところに座っていいよ」
「は、はい……」
一番近くにあったパイプ椅子にアーシェは座る。
「かおるこ。昨日言ってたのはこいつでいいのか?」
アーシェの姿を見るなり、かおるこに質問したのは絶壁の少女だった。
「はい。そうですよ真矢先輩」
「ふぅん」
絶壁の少女。柊真矢がニヤニヤしながらアーシェに視線を戻す。
「あたしは柊真矢。生徒会で庶務を担当してる。よろしくなアーシェ!」
「は、はい。こちらこそ……」
快活に笑った真矢にアーシェは小さく頭を下げた。続いてもう一人が口を開く。
「私は柊真愛。生徒会長だよ〜。見てわかる通り真矢ちゃんとは双子なんだぁ」
「はい。存じております……一卵性の双子なんですよね」
「そうだよぉ」
「そうだぜ」
二人同時に答えた。さすがは一卵性双生児。一部分は全く似てないが……。
「で、自己紹介を終えたところで聞きたいんだけどアーシェちゃん。生徒会に入ってくれるのかなぁ」
「……」
いきなり本題に入られた。覚悟は決めていた。その為にアーシェはここに来ている。
「……私は」
アーシェは一呼吸間を開けてから、続ける。
「生徒会に入ろうと思っています」
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プラネテューヌ親衛隊
2017/09/13/11:17
昨日悩んで出した結果。アーシェは生徒会入りを決意した。
レーシェに認めてもらうには、もっと見聞を広げなくてはならない。その為には多くの生徒と触れ合うことの出来る生徒会は絶好の場所だと考えた。
アーシェの出した答えに三人は一度視線を合わせ……。
「「「やったー!」」」
盛大に喜んだ。
かおるこはぴょんぴょんと、飛び跳ね。
真矢はガッツポーズ。
真愛は嬉しさのあまり椅子をぐるぐると回転させる。
「ありがとうアーシェちゃん!」
「はうっ!」
かおるこが駆け寄ってきてアーシェに抱きつく。アーシェは顔が赤くなり心臓がドクン、と跳ねた。
「ようこそ。生徒会へ今日からよろしくね」
かおるこは身体を離し、その慈愛に満ちた天使のスマイルを向けてくる。
「は、はい。こちらこそよろしくお願いします……」
「よぉし、アーシェちゃんが入ったから私達チームになりますね。結成の景気づけにアーシェちゃんを胴上げしましょう!」
「えっ!?」
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2017/09/13/19:25
かおるこのトンデモ発言に柊姉妹はコクン、と首を前にたおした。
アーシェは身の危険を感じる。
「え、え……本気何ですか……?」
「本気だよ。私達生徒会はやると決めればやるんだよ〜」
かおるこが邪悪な笑みを浮かべる。柊姉妹も同じような表情でじわじわと接近してくる。
「逃げ道はないぞぉ〜」
「観念してぇ〜」
「ひっ!?」
逃げ道はない。何故ならかおるこがちゃっかりとアーシェの身体をホールドしているからだ。
そうこうしている間に二人が手の届く範囲まで迫ってきてアーシェに二人の手が伸びる。
「い、いやあああああっ!」
アーシェの悲鳴が生徒会室に響く。瞼を閉じて迫る恐怖から逃れた。
「嘘だよ。やるわけねーじゃん」
「やらないんですかっ!?」
ここまでやっておいてやらないと言われ、アーシェは驚愕する。
その反応を見て、真愛はくすくすと笑う。
「やらないよぉ。せっかく入ってくれた後輩を怪我させたくないもん〜」
「それにあたしら三人の力じゃ胴上げ無理だしな」
「た、確かにそうでした……」
よくよく考えれば三人ともか細い腕をしている。アーシェを抱えて胴上げするなんて最初から無理だったのだ。
「話を戻しますけど、アーシェちゃんが生徒会に入るならどの役員をやらせたらいいでしょうか?」
「ん、今いないのは会計だったな。アーシェなら問題ないもんな。一年でもトップクラスの成績だし。問題ないか?」
「はい、大丈夫です。今からでも出来ます!」
と、アーシェは豪語するが。
「張り切ってるところごめんね。今日は生徒会の仕事終わっちゃったんだぁ」
「え、そうなんですか?」
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プラネテューヌ親衛隊
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プラネテューヌ親衛隊
2017/09/13/20:22
「ああ。姉ちゃんとかおるこが手際がいいからな。すぐに終わっちまったんだ。だから本格的な活動は明日からだな」
「ごめんね。アーシェちゃん……」
「いえ、いいですよ。明日から頑張ります」
今日活躍出来なかったのは残念だが、明日から頑張ろうとアーシェは意気込んだ。
と、その時。
ドアノブが捻る音が聞こえる。ドアが開くと同時に青髪を後ろで一つ括りにした大人の女性が入ってきた。
「よう。お前ら」
女性はぶっきらぼうに挨拶する。
「あ、岩隈先生。どうしたんですか?」
かおるこが尋ねる。女性の名前は岩隈縁。桜翠学園に勤務する教師で生徒会の顧問でもある。
縁はこめかみを掻くと本題を口にした。
「ちょっとお前らにやって欲しい仕事が出来た。どうも学園に野良猫が一匹迷い込んだらしいんだ。探すの手伝ってくれないか……」
「え、生徒会ってそんなこともやるんですか?」
アーシェは目を丸くした。縁はアーシェに目を向ける。
「そういえば桜木が生徒会に入ったんだったな。めんどくさいけど……生徒の悩みを解決してやんのも生徒会の仕事なんだよ。さっき目安箱に生徒からの手紙があって学園内で野良猫を見たから保護してほしいって書いてあったんだ」
「そうだったんですか、生徒の悩みを解決するなんて意外と親身な生徒会なんですね」
「最初はなかったみたいなんだけど、生徒の悩みを解決してあげたいって真愛先輩の発案で目安箱を設置したんだよ」
「えへへ〜」
かおるこの説明を受けて真愛は朗らかな笑顔を向ける。
「い、意外と凄い人なんですね……」
「当たり前だろ。桜翠の生徒会長をやってんだからな。……さて、猫を探すとなると骨が折れるな。学内うち広いし……」
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プラネテューヌ親衛隊
2017/09/13/22:32
真矢が溜め息を吐く。
それに比べ姉の真愛はニコニコと微笑んでいた。
「なら、二手に別れて探そうよぉ。私と真矢ちゃんで校舎の西側担当。かおるこちゃんとアーシェちゃんで東側担当でいいよねぇ」
「ん、まあ。それが妥当だな。お前らもいいよな?」
特に異論はなくかおることアーシェは首肯した。
「それじゃあ、行こうか〜。縁先生探しに行ってきますね〜」
「おう。頑張れよぉ〜」
生徒会室から出ていく四人を見送る縁。彼女達が出ていった後。縁は気だるそうに息を吐く。
「さて、私も私で仕事を頑張りますか……」
二手に別れた後。アーシェ達は校舎東側の通路を歩いていた。
「真愛先輩凄いですね。行動の切り替えが早かったです」
「思い立ったら即行動。っていうのが真愛先輩の信条だから、喋るスピードはゆっくりだけど……」
「かおるこ先輩も気にしてたんですね……」
真愛は行動力の早さと喋るスピードにギャップがある。その事をかおるこも気にしていてアーシェは苦笑する。
「さてと、どうする。二人一緒に探すのもいいけど校舎と外で二手に別れた方がいいかな?」
「そうですね。私は別れた方がいいと思います。校舎にいるとは限りませんし」
「そうだね。じゃあ、私が校舎を探すからアーシェちゃんは外をお願いね」
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