ガンプラビルドガールズ
[
1
]
プラネテューヌ親衛隊
2016/09/04/18:14
七森中在校生赤座あかりはいつも通りの日常を過ごしていた。
二年生に上がり三年生が受験勉強に勤しんでいる季節。
ひょんな事から幼馴染みの歳納京子が部室にガンダムのプラモデルーーーガンプラを持ってきてーーー。
この物語はガンプラファイトを通じて成長する少女の物語である。
[SC-05G]
編集
削除
コピー
前のページ
次のページ
▽
||
1-
||
投稿
||
更新
||
検索
5482HIT
投稿数:793/1000
[
775
]
プラネテューヌ親衛隊
[
775
]
プラネテューヌ親衛隊
2017/07/02/14:05
「え?」
あかりは突然驚愕の声を発した。
それはあおいも、試合を見ていた仲間達も同じだ。
二人の決着はつかなかった……二人のガンプラが最後の一撃を繰り出そうとした瞬間。二機はバラバラに破損してしまったのだ。
二体が行動不能と見なされ、シュミレーターが稼働を停止させる。
「え、何が……」
「きっと俺との戦いで限界が来ていたのだろう」
茫然としているあかりに声をかけたのはギムだった。
「DG粒子のリアルダメージが蓄積されていたのだろう。それでセーフティーを解放したことによって機体に負荷がかかってしまった結果。自壊したのだ」
「そんな……こんな形でこの試合終わっちゃうんですか!?」
「……すまん」
ギムはちなつから目を逸らした。二人の決着がつけられなかったのは、自分に責任がある。何を言われてもしょうがないとも彼は思っている。
「終わりじゃないよ、ちなつちゃん」
[SC-05G]
編集
削除
コピー
[
776
]
プラネテューヌ親衛隊
[
776
]
プラネテューヌ親衛隊
2017/07/02/18:58
言ったのは京子だった。ちなつは目を見開いて振り向く。
「終わってないって……どういう意味なんですか?」
「そのままの意味だよ。MCさん」
「は、はい」
唐突に呼ばれてMCの肩が跳ねる。
「別のガンプラで続けさせてもいいですよね。この二人の戦いをこんな形で終わらせたくないんです」
真剣な眼差しで京子が言う。MCは全員の顔を一瞥した。
全員京子と同じ表情をしている。どうやら全員同じ思いのようだ。
MCは肩を竦めると口の端を上げた。
「わかりました。いいでしょう」
「本当っすか! やったぁ!」
真依が嬉しさのあまり飛び跳ねる。
「ただし。さっきと同じ状態での再戦です。二人ともいいですね」
「「はい!」」
あかりとあおいが喜びの声を弾ませる。すると結衣が疑問に思った。
「別のガンプラでって言うけど、二人とも他の持ってるの?」
「……う、それは……」
あかりが動揺する。あおいは視線を外した。どうやら二人とも他のガンプラを持ってきていないようだ。
「それなら心配ないわ。あおい。これを使いなさい」
あおばがあおいの前まで歩いてきて一体のガンプラを手渡す。
「これは……アイズガンダム」
[SC-05G]
編集
削除
コピー
[
777
]
プラネテューヌ親衛隊
[
777
]
プラネテューヌ親衛隊
2017/07/03/20:43
リボーンズガンダムと酷似したガンダム。このガンプラはあおいにとって思い出深い物だった。
これはあおいが初めて作ったガンプラで完成させて、あおばにプレゼントしたものだ。
「持ってきてたんだ」
「うん。あなたが初めて作って私にプレゼントしてくれた物だから……いつも持ち歩いているのよ」
「……そ、そうなの」
それを聞いてあおいの顔が少し赤くなった。
「あおい。これを今あなたに返すわ。このガンプラであかりちゃんとの決着をつけなさい」
あおばが手を重ねてくる。
あおいとあおばの思い出の詰まったこのガンプラで最高の戦いが出来るなら、この上ない喜びだ。
あおいは無言のまま首肯してシュミレーターにアイズガンダムをセットする。
「あおいちゃんは代わりのガンプラがあったんだ……あかりは……」
「ここにあるよ」
そう言ったのは京子だった。彼女は何もイラストが書かれていない長方形の箱を持っていた。
「京子ちゃんそれは?」
「へへ、ずっと渡そうと思ってたけどタイミング悪くていままで渡せなかったんだ。わたしの一件で迷惑かけちゃったし。その詫びってことで受け取ってよ」
「あかりは気にしてないのに……」
「まあまあ、そう言わずに受け取ってよ」
[SC-05G]
編集
削除
コピー
[
778
]
プラネテューヌ親衛隊
[
778
]
プラネテューヌ親衛隊
2017/07/04/18:36
京子はあかりに箱を手渡す。
受け取ったあかりは箱を開けて中を確認した。
「……これは!」
そこに入っていたのは、あかりにとって懐かしい機体だった。
◇
二人の戦いは再び始まった。あおばが渡してくれたアイズガンダムが宇宙を駆ける。
「……あかりは、まだ」
月面に降り立ち、相手が来るのを待つ。するとすぐに相手の機体が見えてきた。
「お待たせあおいちゃん」
あかりのガンプラが対するようにアイズガンダムの前方に降り立つ。
あおいはあかりの機体を見て、目を丸くした。
「……それがあなたの新しい機体?」
「そうだよ。これがあかりの新しいガンプラ……レッドジムだよ」
そこに現れたのはあかりが初めて作ったガンプラ『ジム』
壊されて以来。あかりの部屋で保管されていたが、京子が購入して新しく生まれ変わって今、戦場に立つ。
「赤いジム。専用機みたいでカッコいい……」
「えへへ、ありがとう」
あおいに誉められてあかりがほんのり頬を染めて嬉しそうにする。
その名前の通り装甲の大半は赤く染められていた。京子があかりのイメージカラーとして染め上げたのだ。
そして、変わったのはそれだけではない。追加された武器もある。
左腰に鞘と共に備えられた刀。レッドフレームのガーベラストレートだ。
「あおいちゃんのアイズガンダムもかっこいいね」
「……ありがとう。そろそろ」
「うん、決着だね」
[SC-05G]
編集
削除
コピー
[
779
]
プラネテューヌ親衛隊
[
779
]
プラネテューヌ親衛隊
2017/07/04/19:45
アイズガンダムが右手でビームサーベルを引き抜き、レッドジムがガーベラストレートを右手に納める。
『先程と同じ状態で次の一撃が決まれば勝負は決まります。お二方準備は出来てますか?』
MCからの説明。二人は無言で頷く。
泣いても笑っても次の一撃で勝負が決まる……皆固唾を飲んで見守っていた。
『それでは……ファイト再開ですっ!』
合図と共に二機が同時に動いた。スラスターの最大推進力を放って突き進む。
「京子ちゃんの思いと一緒に勝つ!」
「これで決める!」
二機が間合いに入って同時に振り下ろす。装甲が裂ける音がした。
二機はすれ違い。少し行ったところで停止する。
「どっちが勝ったんだ……」
京子が二人のガンプラを交互に見る。攻撃のタイミングはどちらも同じだったがどちらの攻撃が命中したのだろうか……。
「あ、見て!」
綾乃が声を上げた。すると……片方のガンプラが地面に倒れ伏す。
倒れたのは、あおいのアイズガンダムだった。
「……私の負け、か」
[SC-05G]
編集
削除
コピー
[
780
]
プラネテューヌ親衛隊
[
780
]
プラネテューヌ親衛隊
2017/07/06/08:38
ポツリと呟くあおい。初めての敗北だが悔しいという感情は沸いて来なかった。むしろ全力を出して戦えたことに満足していた。
「あ、え……あかり。勝ったの?」
一方のあかりはモニターをマジマジと見ていた。僅かに残るダブルオーライザーの耐久値が自分の勝利を物語っているが、いまだにその現実を夢なのかと思っている。
「あかりーーー!!!!」
「うわっ!?」
背後から京子に抱きつかれ、あかりの心臓は跳ね上がる。
「わ、わう……きょ、京子ちゃん!」
「優勝おめでとう! やったなあかり!」
手を肩に置いたまま、身体を離してあかりの目をまっすぐに見ながら京子は言った。
そう告げられて漸くあかりは自分が勝ったのだと実感する。
「あはは、あかり。本当に勝ったんだ……」
「何? わかってなかったの」
京子と同じタイミングでシュミレーターに入ってきていたうまるが肩を竦めた。
「う、うん……気が気じゃなかったから……」
自分のこめかみを掻いてあかりは苦笑する。そんな彼女にうまるは手を差し伸べた。
「ほら、いつまでもこんなところにいないで出ようよ。皆優勝者が来るのを待ちわびてるよ」
「うん」
あかりはうまるの手を掴む。
「ささ、早く行こうぜ!」
「きょ、京子ちゃんお、押さないでよ!」
[SC-05G]
編集
削除
コピー
[
781
]
プラネテューヌ親衛隊
[
781
]
プラネテューヌ親衛隊
2017/07/06/08:51
うまるに手を引かれ、京子に背中を押されながらあかりは外へ出た。
数時間ぶりに出たせいか、会場の証明が眩しかった。視界が回復していくと外にはあかりを待っていた仲間達の姿が……。
「あかりちゃん!」
「先輩っ!」
まず櫻子と真依が飛び付いてきた。ちなみにうまると京子は飛び付こうとしてきたタイミングでその場から離れていた。
「わわっ! 二人ともちょっと!」
「凄い! 凄いよあかりちゃん! 本当に優勝しちゃうなんて、ご褒美に頭撫でてあげる〜」
「さすが先輩っす! 自分は必ず勝つって信じてたっす! 自分は精一杯の頬擦りさせてもらうっす!」
「や、やめて〜!!!!」
撫で撫で攻撃と頬擦りのダブルパンチにあかりが混乱してきた。二人を振りほどこうにも両サイドをガッチリと固められて抜け出せない。
「「やめいっ!」」
ここであかりに救いが、ちなつと向日葵が二人を引き剥がしたのだ。
あかりは解放されてホッとする。櫻子と真依はうまると京子に取り押さえられていた。
「ありがとう。助かったよぉ……」
「いいのいいの。気にしないで」
「そんなことより、赤座さん優勝おめでとうございますわ」
「まさか赤座さんがここまで行くなんて思ってなかったわ。頑張ったなぁ」
「ええ、お疲れ様」
[SC-05G]
編集
削除
コピー
[
782
]
プラネテューヌ親衛隊
[
782
]
プラネテューヌ親衛隊
2017/07/06/18:25
「あ、ありがとうございますっ!」
ちなつ。向日葵。千歳。綾乃の祝福にあかりは深々と頭を下げた。
その姿に皆が苦笑する。
「なんか、優勝者って感じがしないね……」
「まあ、あかりだからね。こういうのには慣れてないんだよ」
ユウキの言葉に結衣が肩を竦めた。
誰かの足音が聞こえる。結衣が後ろを振り向くと反対側にいたあおいがこちらに近づいていくのが見えた。
「あかり。あの子が来てるよ」
「……あおいちゃん」
結衣に言われあおいが近づいてきているのに気づいた。
あおいは、あかりの目の前で止まると口を開く。
「……優勝おめでとう」
「え、あ、うん……ありがとう」
「……楽しかった」
「え?」
あおいの一言にあかりは目を丸くした。
「楽しかった。あなたとのファイト……ありがとう」
あおいは微笑む。少し恥ずかしそうに顔を染めていた。
その表情の変化を見て、この短い期間で何があった? と一同は目を丸くするも、あかりだけは満面の笑顔で右手を差し出した。
「こちらこそだよ。あおいちゃんとのファイトすっごく楽しかった! またファイトやろうね!」
「……え?」
今度はあおいが目を丸くする。彼女はキョトンとした目のまま首を傾げた。
「……また私とファイトしてくれるの?」
「もちろんだよ。だってあかり達はもう友達でしょ」
[SC-05G]
編集
削除
コピー
[
783
]
プラネテューヌ親衛隊
[
783
]
プラネテューヌ親衛隊
2017/07/06/19:02
「と、友達……あなたと私が?」
「うん。そうだよ。もしかして嫌?」
「ううん………嬉しい。よろしく」
あおいは左手であかりの手を握り握手を交わす。
「良かったねあおい。友達できてずっとボクしかいなかったし」
「……ユウキ。からかわないで」
ニヤニヤしながら背中を小突いてくるユウキからあおいは顔を逸らした。
「またファイトしたい……か、なら。早速やろうか!」
「「は?」」
いつの間にか間に入ってきた京子の唐突な発言にあかりとあおいは同時に声を出した。
「やろうって、まさかファイト?」
「そうだよ。二人のファイト見てたらさぁ……やりたくなっちゃって。ねえ、皆」
京子が結衣達に視線を向ける。彼女達は既に自分のガンプラをその手に持っていた。
「はい。わたしもあかりちゃん達みたいなファイトがしたいです」
「結局この大会では戦えなかったしねぇ……せっかくだからあの時の再戦やろうよ」
ちなつが意気込み。うまるがあおいにリベンジを申し出る。
「確かにやりたいって言ったけど……今からって……」
「……私は平気」
「意外とタフだねっ!?」
[SC-05G]
編集
削除
コピー
[
784
]
プラネテューヌ親衛隊
[
784
]
プラネテューヌ親衛隊
2017/07/08/08:51
連戦の後だと言うのにあおいは平然としていた。そんな彼女を目の当たりにしてあかりは汗を一筋垂らした。
「……彼女が再戦やりたいと言うなら、私は受けて立つだけ」
「へえ、ノリがいいね。ありがとうね」
「……どういたしまして」
あおいとうまるの間に火花が散る。試合前から二人の闘争心は最高潮に達てしていた。
「も、もしかして……あおいちゃんて意外と戦闘狂?」
「それはあかりも同じじゃん。で、結局あかりはやらないの?」
「それはーーー」
右手にあるジムレッドに視線を落とす。その質問に対する答えは既に決まっていた。あかりは顔を上げて京子を見つめる。
「もちろんやるよ!」
ジムレッドを前に持ってきて言う。京子は口の端をニッと上げた。
「よし、じゃあやろうぜ!」
「「おー!」」
全員シュミレーターにガンプラをセットしてファイトを始める。
楽しそうにファイトを行っている少女達に大人達は取り残されていた。
「あの子達。まだやるのね」
「ええ、あれだけの戦いの後なのに……楽しそう」
[SC-05G]
編集
削除
コピー
[
785
]
プラネテューヌ親衛隊
[
785
]
プラネテューヌ親衛隊
2017/07/09/12:40
あかねとあおばは羨ましそうに皆のファイトを眺める。
しばらく見た後。あかねは横目であおばを見た。
「ねえ、私達も後でやりましょうか」
「え?」
あおばが驚いた様子で見つめ返す。
「約束したでしょ。リハビリに付き合うって」
「そうだったわね。うん。そうしましょう……でも、その前に」
あおばはギムに視線を移した。
「ギムさん。そろそろ行きましょうか」
「……ああ」
ギムは短く返し身体を出入口の方へと向ける。
「あれ、あかり達に謝りに行かないんですか……?」
「そのつもりだったが……楽しそうにしているあいつらの邪魔をしたくない。悪いが伝言を頼まれてくれないか、済まなかったと……お前らは俺のようになるなってな」
「ギムさん……。わかりました。伝えておきます」
「ありがとう」
そう言ってギムは出入口まで歩いていく。ファイトの邪魔をしたくない……それはギムにとって弟子にしてやれる最後の気遣いだったのかもしれない。
「じゃ、私は彼を警察まで送り届けるわ。あかね。後は任せたわよ」
「うん」
あおばも出入口を目指す。ギムの隣に並びだんだん遠ざかっていく。
あかねは二人の姿が見えなくなるまで、その背中をずっと見守っていた。
[SC-05G]
編集
削除
コピー
[
786
]
プラネテューヌ親衛隊
[
786
]
プラネテューヌ親衛隊
2017/07/09/13:05
◇
その後の話をしよう。
ギムによって起こされた騒動は大々的に報道された。
死者や怪我人は出なかったものの。この一件で彼が行ってきた数々のアナハイム社に対するテロ行為が明るみになり。世間を騒がすこととなった。
その一方で……彼の暴挙を止めたのが、とある中学生であると言う話が囁かれている。
実はあのMCがあかり達の戦いを全国放送していたのだ。幸いあおばがその映像を没収し、消去したから噂レベルで留まっていた。
だが、それでも全てのガンプラファイター達は信じていた。ガンプラファイトを守ってくれた少女達がいた事をーーー。
◇
一年後。
季節は春。桜の花びらが舞い散る道を複数の女子高生達が歩んでいた。
「とうとう来ましたねぇ〜」
校門の前で見覚えのある生徒が立っていた。
紺色のブレザー。赤いネクタイ。ネクタイと同じ色のスカート。
ここ七森女子高校の制服に身を包んだ歳納京子だった。
彼女は合格し、晴れてこの春。高校生になったのだ。
「中学の時みたいにはめを外すなよ」
[SC-05G]
編集
削除
コピー
[
787
]
プラネテューヌ親衛隊
[
787
]
プラネテューヌ親衛隊
2017/07/09/19:27
京子の隣には彼女と同じ制服姿の結衣がいる。
腕を組み。ジト目で京子を睨んでいた。
「大丈夫大丈夫。もう高校生なんだから少しは自重するって」
笑いながらヒラヒラと、手を振る京子。
「本当かなぁ……」
「さて、またどっかに部室の鍵落ちてないかなぁ〜」
「お前やっぱり反省してないだろうっ!?」
こいつはまた良からぬ事をする。結衣はそう確信した。
「冗談だって、今度はちゃんと申請するよ。後から来るあいつらの為にね」
「……まだ気が早いんじゃないか?」
結衣が肩を竦める。京子は満面な笑顔で言った。
「こう言うのは早い方がいいって、皆が入学したときにあった方が安心するでしょ」
「それはそうだけど……部活作るとして、他の部員はどうするの? 二人だけじゃ成り立たないじゃん」
「ああ、それはーーー」
「歳納京子ーーーっ!?」
言いかけたところで綾乃の声にかき消される。前方を見ると昇降口の方に綾乃と千歳の姿が。彼女達もここへ入学したようだ。
[SC-05G]
編集
削除
コピー
[
788
]
プラネテューヌ親衛隊
[
788
]
プラネテューヌ親衛隊
2017/07/09/20:22
「早くしないと遅れるわよ。早くしなさーーーい!!!!」
二人に聞こえるように大きく叫ぶ。そのせいで行き交う同じ新入生達から注目を浴びていた。
「まだ時間はあるってのに………張り切ってんなぁ」
「まあ、余裕があった方がいいでしょ。私達も行こう」
「おう!」
綾乃達がいるところまで歩いていく。その途中一つ気がかりな事があり。結衣が口を開いた。
「そういえば、しっかりやってるかな新部長」
「気にする事じゃないと思うけどなぁ。あいつはしっかりしてるし皆もいる。それにわたしが選んだ部長だぜ。平気だって」
「そうだな」
胸を張って京子が言った。それを聞いたら結衣の不安も無くなっていた。
二人はこれ以上綾乃を待たせないように足を速めた。
◇
七森中ごらく部部室。
京子と結衣がいなくなったこの場所に変化が起こっていた。
「部長」
ちなつが新部長を呼ぶが反応しない。肝心の新部長は庭に咲き誇った桜を見て季節の訪れを感じている。
「部長っ!」
「わうっ!」
今度は強めに言うと漸く新部長は反応してくれた。
「な、何? ちなつちゃん?」
「お茶。淹れてきたらここに置くって言おうとしたのに返事しないんだもん……」
「あ、ごめん……」
「もう。しっかりしてよ。『あかり』ちゃん」
[SC-05G]
編集
削除
コピー
[
789
]
プラネテューヌ親衛隊
[
789
]
プラネテューヌ親衛隊
2017/07/10/04:32
眉根を歪めながらテーブルに人数分のお茶を置くちなつ。
新部長こと。あかりは苦笑いを浮かべていた。
そう。京子が選んだ新しい部長は彼女の事だった。
この一年で背は伸び。髪も腰くらいまでに長くなったがトレードマークのお団子はそのままである。
「正直まだ実感ないんだよね……あかりが部長って……」
「まあ、確かに……京子先輩が勝手に決めた事だからね。しかも唐突に……」
京子があかりを次の部長に任命したのは、卒業式が終わる頃だった。
そんなギリギリで言われたら戸惑うのが普通である。
「ま、気負う必要ないんじゃない。ここって別に何のルールもないんだからさ」
テーブルに片肘をついてお茶を啜るうまる。
あの事件ここへ頻繁に来るようになった。もう部員と言っても差し支えない。
彼女も一年前と比べると髪が伸びて少し大人っぽくなった。
[SC-05G]
編集
削除
コピー
[
790
]
プラネテューヌ親衛隊
[
790
]
プラネテューヌ親衛隊
2017/07/10/18:40
「そうっすね〜……ここはだらだらのんびりする場所っすから〜」
座布団に顔を埋めて寝転んでいる真依が言った。彼女もごらく部の一員となったのだ。
「まあ、二人の言ってることは正しいんだけど……それにしたって、ボーッとし過ぎだと思わない?」
「……確かに。あかりちゃん。何か悩み事でもあんの?」
「えっと、それは……」
「ズバリ。卒業した先輩方がちゃんと高校生活をやっていけるのかって心配なんすよね!」
ガバッと起き上がって真依が確信めいた事を言うと、あかりは大仰に目を見開いた。
「ええっ!? 何でわかったの!」
「先輩はお優しいですから。きっとそうなんじゃないかなって……お二人もわかってたっすよね」
真依が視線を移す。二人は短く首肯した。
「京子ちゃん達ほどじゃないけど、結構一緒にいるからね。あ。ちなつちゃんお茶お代わり〜」
「ハイハイ」
ちなつは肩を竦める。うまるから湯飲みを受け取ると、お茶を淹れに奥へと移動していった。
「心配しなくてもいいんじゃないの。あの二人なら大丈夫だって」
「それはわかってる……けど」
「けど?」
「京子ちゃん……また鍵を拾って部室占拠しそうな気がして……それが不安なんだ」
「うわぁ。マジでやりそう……」
[SC-05G]
編集
削除
コピー
[
791
]
プラネテューヌ親衛隊
[
791
]
プラネテューヌ親衛隊
2017/07/10/21:17
彼女ならやりかねないと、うまるは苦笑した。
「ところで先輩。今日はこの後どうするっす。やっぱり行くっすか?」
「うん。もちろん行くよ。そろそろ生徒会の仕事も終わりそうだから向日葵ちゃん達にも聞いてみようか。後は……」
「……あかり」
襖が大きく開かれる。現れたのは他校の生徒である筈のあおいとユウキだった。
「え。あおいちゃん。ユウキちゃん……! ど、どうしてここにっ!?」
「……遊びに来た」
「あ、遊びにって……どこから入ってきたの。普段は他校の生徒入れないんだよ」
「……正面から突破した」
あおいは平然と言って除けた。
「何してんのさ君は……正面って先生達に見つかるじゃん」
「うん。最初から見つかってたよ……だから全力でここまで逃げてきたんだ」
「……マジか」
「何か会う度にアグレッシブになってくっすね……」
あおいの行動力にうまると真依は呆気にとられる。ユウキは申し訳なさそうに肩を落とす。
「ごめんね。ボクは止めたんだけど……」
[SC-05G]
編集
削除
コピー
[
792
]
プラネテューヌ親衛隊
[
792
]
プラネテューヌ親衛隊
2017/07/11/17:05
「ユウキちゃんが謝る必要ないよ。遊びに来てくれて嬉しいし」
「……あかりちゃん」
あかりの優しさにユウキの瞳が潤む。
「あれ? 何で二人がいるの?」
戻ってきたちなつが二人の姿を見て驚く。
「何か遊びに来たみたいよ」
「遊びに来たって大胆な……あ。うまるちゃん。これ」
「ん、あんがと」
うまるが湯飲みを受け取ってずずっと飲む。
「二人の分も用意する?」
「……大丈夫。いらない」
「不法侵入してるのにいただけないよ。ボク達は皆に用があって来てるんだから」
「用ってなんすか?」
真依が首を傾げて尋ねると、あおいが無表情な顔を向けてくる。
「……この後何か予定がないかを聞きたい。無ければいつものようにガンプラファイトをしたい」
[SC-05G]
編集
削除
コピー
[
793
]
プラネテューヌ親衛隊
[
793
]
プラネテューヌ親衛隊
2017/07/11/19:34
あおいがここへやって来た一番の理由はガンプラファイトのお誘いだった。
仲良くなってからは、よく一緒に近場のゲームセンターでガンプラファイトをしている。
「もちろんいいよ」
最初から行く予定だったから断る理由もない。あかりが笑顔で返答する。
「……なら、早速行こう」
「あ、ちょっと待って。櫻子ちゃんと向日葵ちゃんにも行くか聞いてみないと……」
「ああ、あの二人生徒会だもんね。確か向日葵ちゃんが生徒会長になったんだよね」
「うん。杉浦先輩が決めてたみたいなの」
「向日葵ちゃんにこき使われる櫻子ちゃんが思い浮かぶよ」
ちなつが肩を竦めて言った。
「あ、連絡ならうまるがやっといたよ。後から来るんで先に行ってくれってさ」
うまるが携帯の画面を見せてくる。櫻子宛でそこに書かれていた文面に『もう少しで終わるから、先に行ってて!』とあった。
「やっぱり忙しいから遅れるよね。先に行ってようか。うまるちゃん。連絡ありがとうね」
「あいよ」
ぶっきらぼうにうまるが手を振った。
皆荷物を纏めて茶道部部室から出ていく。
[SC-05G]
編集
削除
コピー
[
794
]
プラネテューヌ親衛隊
[
794
]
プラネテューヌ親衛隊
2017/07/11/21:35
「着いたら最初誰と誰でやるんすか?」
「どうせならバトルロイヤル形式でやらない。大人数で楽しめるし」
「ユウキちゃんの意見に賛成。真っ先にちなつちゃん撃ち落としてあげるよ」
「ふん。そう簡単にやられると思わないことね」
いつもの帰り道。賑やかな声が響いている。
ここにいる者は全員ガンプラファイトを通して友情を築き上げた関係だ。
「……あかり」
前を歩くちなつ達の会話を聞いていたあかりにあおいが声をかける。
あかりは彼女に視線を向けた。
「……ありがとう」
「え? 急にどうしたの?」
「改めて言いたかった。私と友達になってくれたこと……それに……」
一呼吸開けてあおいは微笑んで口を開いた。
「私にガンプラファイトが楽しいって教えてくれてありがとうって言いたかった。今後とも……ユウキ共々。相手をしてくれると嬉しい」
「もちろんだよ。これからもよろしくね」
あかりは笑顔で返す。桜が舞う道を二人は手を繋ぎ合わせて歩いていく。
ガンプラファイトで繋がる絆はこれからもどんどん広がっていくだろう。
彼女達がガンプラファイトを楽しいと思う気持ちがあるかぎり……。
これは少女達がガンプラファイトを通して絆を深める物語。彼女達の話はまだまだ続いていく。
END
[SC-05G]
編集
削除
コピー
△
||
1-
||
投稿
||
更新
||
検索
前のページ
次のページ
スレッド一覧
日間
週間
月間