【パクリ?】ほんのりオカルトSS【リスペクトです!】
[
1
]
どうも名無しです
2016/09/24/23:09
・タイトル通りほんのりとオカルトが入ったSSです
・2ch発祥の有名なオカルトシリーズ物に多大な影響を受けています。ぶっちゃけパクリと罵られても否定は出来ません
・基本的に短編で構成されてます
諸事情でITBS様より移住してまいりました。宜しくお願いします
[P07B]
編集
削除
コピー
前のページ
次のページ
▽
||
1-
||
投稿
||
更新
||
検索
1209HIT
投稿数:14/1000
[
2
]
どうも名無しです
[
2
]
どうも名無しです
2016/09/24/23:11
まだ高校に入学したてのころの話だ
特に運動が得意というわけでもなかった僕は暇潰しができそうだと言う理由で囲碁将棋同好会に入ることにした
僕が入る前の部員は部長である女子生徒一人。新入部員は僕と隣のクラスの真田という男子生徒だけという零細振りだった
昔から囲碁や将棋が好きで、暇があれば父親や近所のじいさんたちと対局していた僕は腕に自信があったのだが、そんな自信は入ったその日。先輩に負けたことで打ち砕かれる
女子は将棋や囲碁が弱いと舐めていたら見事に惨敗してしまい、先輩から手ひどく馬鹿にされたのだ
何時か仕返しをしてやろうと思っていたが、終ぞ叶わなかったのが心残りだ。兎に角彼女は強かった
同好会に入って2週間程経った金曜日
その日は真田が彼女から呼ばれたと嘯いて片付けもそこそこに帰ってしまい、先輩と二人でグダグダと掃除をしていたらひょんな事からオカルト関係の話になった
当時から僕もオカルト関係はそれなりに好きだった事もあって。話が盛り上がってしまい学校を後にした時にはすっかり日も落ちていた
「お腹空いたな。どこかで食べて帰らない?」
いいですねと同調する。近くに喫茶店があったなと思い出しそこでどうかと言うと先輩は良いねとにやりと笑った
喫茶店は空いていた
奥まったテーブル席を選び対面して座る。良く考えると女の子と喫茶店に入るのは初めてだ。何となく緊張していると先輩が口を開いた
「ここには噂がある」
噂? なんの事かと思ったら幽霊だと言う
「学校での話の続きですか?」
「そうだな…この店のテーブル席の一つには何時も誰かが座っているんだ。だからウェイトレスが持ってくる水は人数に対して一つ多い。一人なら二つ、三人なら四つ、四人なら五つ……」
先輩の話が終わる辺りにウェイトレスが水を持ってきた
三つ
え、と思った
「この席……だったんですか?」
先輩は頷き僕を見つめる
「なぜこの席をえらんだ?」
ハッとする。先も書いたがこの席は結構奥まった所にある。空いているのだからもっと手前のテーブルを選らんでも良かったのに
「お前には見込みがあるな
そう言い、先輩は薄ら笑いを浮かべた
これ以降、僕は先輩と一緒に様々な奇妙な体験をする事になる
[P07B]
編集
削除
コピー
[
3
]
どうも名無しです
[
3
]
どうも名無しです
2016/09/24/23:12
最近部屋に猫が出て困る。生きている猫なら寧ろ歓迎だが半透明の猫なんてどうすればいいのか
深刻な表情を浮かべている先輩から聞いた話だ
半透明の猫を見てみたい僕は金曜日に先輩の部屋にお邪魔する事にした
「見ても面白くないぞ? 触れないし」
どうしても猫を触りたいらしい先輩の後をついて行く。背中の真ん中辺りまである髪の毛が何だか猫の尻尾のように思えてくる
先輩は親元から離れてアパートに1人暮らしをしていた。理由は聞かないが何やら複雑な事情があるようだ
「お邪魔します」
「まあ、適当に座れ」
さほど広いとは言えない畳敷きの1Kの部屋の中には曰くがありそうな品々が置かれている。初めて訪れた時には結構ビビった事を思い出した
「コーヒーでいいな」
アフリカの魔術に使われていたという壺を眺めていると先輩がコーヒーカップ2つとお菓子を持ってきた
[P07B]
編集
削除
コピー
[
4
]
どうも名無しです
[
4
]
どうも名無しです
2016/09/24/23:14
「ありがとうございます…先輩。猫の幽霊って何時出るんです?」
コーヒーに息を吹きかけながら今回の目標について尋ねる
「大体深夜だ。今夜は泊まりになるが大丈夫か?」
「はい。連絡したんで問題ないです」
今までも野外で1晩過ごしている仲である。部屋に泊まるのは始めてだが最早互いに遠慮や慎みなんて持ち合わせては居なかった
ゲームをしたり怪談話に華を咲かせたり無意味に黙り込んでみたりしながら過ごす。
夕飯時になると先輩がエプロンを取り出した
「え……先輩が作るんですか」
思わず失礼な事を口走ってしまったけど先輩が料理する姿なんて想像出来ない
先輩は明らかにカチンと来た様子だった
「…自炊はしているんだ。変なものは作らないから安心しろ」
そう言って小さなキッチンに立つ先輩の後ろ姿は新鮮だった
数十分後。テーブルには肉ジャガ、サラダ、味噌汁が並んでいた
「先輩……」
「ん? なんだ?」
「旨いです。ごめんなさい」
[P07B]
編集
削除
コピー
[
5
]
どうも名無しです
[
5
]
どうも名無しです
2016/09/24/23:15
味も中々だった。肉ジャガは味が良く染みてるし味噌汁はちゃんと出汁を取っている本格派だ。僕の母親の料理よりも旨い
「自炊していればこんなの出来て当たり前だ」
当たり前だと言う割には得意気な表情なのには突っ込まないでおこう
食後にグダグダとTVを見ながら雑談を交わしていると9時になり先輩が風呂に入った
1人の退屈さを紛らわすために先輩の部屋にある品々をじっくり眺めているとカリカリと何かを引っ掻くような音が聞こえた
音のしたほうを向くと半透明の猫がツメトギをしているではないか
まさか先輩が居ない時に出るとは思わなかった
どうするべきか分からずひとまず猫を観察する事にした
猫は茶色い縞模様の典型的なトラネコだ。半透明であることを除けば何処にでもいる猫だった
猫は僕の方を一瞥しただけで後は気にも止めずに毛繕いを始めた。
人になれているようだし生前は飼い猫だったのかも知れない
出来るだけゆっくりと近付いていく。猫は逃げるそぶりも見せず毛繕いを続行している
猫の傍らに近寄りそっと手を伸ばしてみた
「えっ」
思わず声が出る
猫に触れた
体温も毛やしなやかな皮膚の感触もよくわかる
背中を優しく撫でてやると猫は気持ちよさそうにニャオと鳴いた
抱き上げてみる
ちゃんと重さも感じた。目を瞑れば生きている猫を抱いているようにしか感じない
一頻り撫で回した後、さて今度はどうしてくれようかと考えていると先輩が風呂から出てきた
「良かったらお前も入れ……よ?」
ジャージ姿の先輩がキョトンとした顔で僕を見る。僕は猫を抱えて見せ
「先輩。触れてます」
先輩は暫し僕と猫を交互に見た後無言で歩み寄り猫に手を伸ばした
手は猫に触れる事なく宙を切る
もう一度。今度はゆっくりと猫に手を伸ばす……が、やはり触れない
先輩は深いため息をついて
「理不尽だ」
と呟いた
深夜になるまえに猫は姿を消し僕達は再び猫が現れるのを待ったのだが。深夜2時を回っても現れる気配は皆無であり仕方なく寝る事にした
夜が明けて8時頃朝食を御馳走になった後。僕は帰路についた
息子の朝帰りにもすっかり慣れた両親にただいまとだけ言い足早に自室へ向かいベッドに倒れるように眠りにつく
何時間寝ただろうか
ベッドの下から聞こえる音で目を覚ました
カリカリ、カリカリと何かを引っ掻くような音だ
まさかと思った
恐る恐るベッドの下を除くと
「ニャア」
案の定猫がいた
休日が明けた月曜日先輩に猫が自分の部屋に現れたと打ち明ける。彼女は至極残念という表情を浮かべ
「……猫取られた」
と未練たらしく言うのだった
[P07B]
編集
削除
コピー
[
6
]
どうも名無しです
[
6
]
どうも名無しです
2016/09/24/23:19
「なんでこんな時間に僕たちは廃屋にいるんですか?」
高校に入って早々に変な人に目をつけられた
囲碁将棋同好会の部長でもあるその人は、自他共に認めるオカルト好きであり。俗に霊感と呼ばれる物を持つ先輩であった
「なんだ? お前も好きだろう?」
確かにそれなりにオカルトは好きだが何もわざわざ丑三つ時を選ばなくても良いだろうに
ああ、眠い
今、僕たちがいるのは霊が住む家という市のはずれの方にある地元では有名な心霊スポットだった。なんでも一家心中した家族の霊が出ると言う
先輩の運転するバイクを敷地前に停める
中に入ると結構荒らされていた。これは期待できないどころかガラの悪い奴らに出くわす可能性がある
口調は荒いが一応先輩は女の子であるのだからいざとなったら僕がどうにかしなきゃならんと気を引き締めた
「出ると言うのは二階だ。階段を探そうか」
僕の密かな決意など知らずに先輩はマイペースに家の中を探索している。懐中電灯の頼りない明かりが今は全てだ
家の裏口に近い場所に階段はあった。何故こんなところにと思ったがもしかしたらこっちの方を出入り口にしていたのかもしれない
家鳴りがする。何かの足音のようにも錯覚し身をすくめる僕を先輩は笑いながら見ていた。性悪な人だ
ギシギシと音を立てて階段を登る、何だか空気が変わった気がした
「綺麗だな」
先を歩いていた先輩が呟いた
背中に嫌な汗が流れる。1階の荒れ具合が嘘のようだ。何故だ……
先輩の横顔を伺うと……楽しげな笑みを浮かべていた
僕を馬鹿にした時の意地悪な笑みとも違う。幼い子供みたいな純粋な笑みだ
帰りましょうと言ったが聞く耳を持ってはくれなかった
2階にある寝室のドアを開ける
その瞬間強烈な目眩に似た感覚に襲われた。これはヤバい
「なるほど」
中を覗きこんでいたいた先輩が呟いた。何がなるほどなのかと目眩をこらえながら室内を伺う
弱い月の光が照らす部屋の中には
黒い塊がうごめいていた
僕は絶叫し、先輩の腕を引いて逃げ出した
階段を駆け下り裏口から外に出る
先輩のバイクが停めてある場所まで戻り漸く一息ついた
「ビビりすぎ」
辛辣な言葉が投げかけれるがあれは仕方ないだろう
「あれはなんなんです!」
「噂の霊さ」
こともなげに彼女が言う。あれが霊? 人型ですらない黒い塊が?
「お互いに食いあったか。自然に合体したかは分からないけどな。複数の霊が長いこと同じ場所にいると大抵ああなる……例外もいるけどな」
私の経験上なと付け加えバイクのエンジンを掛ける
「何にしてもああなると長くない。数年もすれば消滅するさ」
そう言って肩をすくめる先輩の腰に腕を回す。とっととこの場を離れたかった
今度は何処に行く?
バイクを動かし彼女は言う
まだ帰る気はないらしい彼女の横顔を見て僕はガックリと項垂れだ
[P07B]
編集
削除
コピー
[
7
]
どうも名無しです
[
7
]
どうも名無しです
2016/09/24/23:20
夏休み一歩手前のある日のこと。クラスの何人かと肝試しをすることになった
学校の裏にある小さい山には祠がありそこに幽霊が出ると言う噂がある
先輩に肝試しのことを話すと
「もう。何も出ないよあそこ」
と言われた
もう出ない?
「どういう事ですか?」
「んー? 私もそこに行った事あるんだよ」
祠の話は地元では有名で、オカルトフリークな先輩の耳に入らない筈は無い
噂を聞いた時点で確かめに行くことは予想がついた
「で、見に行ったら憑かれた」
……え
「だから。もう出ないよあそこ」
「いやいや。憑かれたってどうしたんですか。その霊」
「毎晩毎晩金縛りになるわ。ラップ音が煩いわで鬱陶しいから祓ったよ」
大した奴じゃなかったなと言って先輩は話を打ちきった
その夜。肝試しをしたが先輩の言う通り何も出てくることは無く雰囲気だけで盛り上がっている皆との疎外感を感じるのだった
[P07B]
編集
削除
コピー
[
8
]
どうも名無しです
[
8
]
どうも名無しです
2016/09/24/23:23
2月14日だ
つまりバレンタインデー。女の子から甘くてちょっと苦いあれを貰える日だ
「先輩、チョコください」
放課後、囲碁将棋同好会の部室で盤の向こう側の先輩に言ってみる
彼女は暫し考えた後、鞄からノートを取り出し何か図形を書き出した。地図のようだ
「金はやるから買ってこい」
面白い物が見られるぞ
そう言って先輩は500円と手書きの地図を差し出した
2月の寒空の下、分かりづらい地図とにらめっこしながら歩いていく
『面白い物が見られるぞ』
僕は彼女に連れられ何度も怖い目に遭っている
なのに。今回も先輩の言葉に惹かれ、こうして寒風に吹かれながら先輩の言う面白い物を探しているのだ
何だか泥沼に両足とも突っ込んでいるような気がする
まあ、今更考える事ではないのだけど
「ここかな」
そこは、店舗と住居が一体となった個人商店のようだった。ガラス戸の向こうに陳列棚が並んでいる
店内は薄暗く、一見すると休業しているように思えた
戸に手をかけるとスンナリ開く。店内に足を踏み入れるとチャイムが鳴り、レジの奥にある襖が開き中年の女性が出てきた
「いらっしゃいませ」
無愛想な声の女性にああ、どうも……と。曖昧に笑いながら頭を下げ、目的の一つであるチョコ菓子を物色する
鯛焼きの形を模したチョコの最中が目に入る。昔は良く食べていた菓子だ
懐かしく思い、手を伸ばす。バレンタインチョコには少し寂しいかも知れないけど
鯛焼き菓子と100円を差し出す
「お願いします」
無愛想なまま、菓子と100円を受け取った女性は手元のクッキーの缶を開け、中に入っている小銭を掻き回す
レジは使わないのか
そんなどうでもいい事を考えていると。視線に気がついた
女性が出てきた奥の部屋へ続く襖が小さく開き、中から幾つもの目が僕を見つめている
背筋に悪寒が走った。動悸が早くなり、足が凍り付いたように動かない
「ちょっと。どうしたの?」
不機嫌そうな女性の声にハッと我に帰る
「い、いえ……何でもないです……」
釣りを受け取り踵を返した
見られている
視線を感じる背中に嫌な汗が滲む
震える手でガラス戸を開き、つんのめるように外に飛び出て振り返る。何時の間にか襖はしっかりと閉じられており、大量の目も見えなくなっていた
その後。使わなかった500円を返す為に先輩の部屋に赴き見たものを伝えた。僕の話を聞いた先輩は嬉しそうに
「そうか。お前も見えたか」」
等と言う。やはりあの目が先輩の言う『面白い物』だったんだろう
「あれ。何なんです?」
「分からない」
即答された。拍子抜けだがあんな得体の知れない物の正体なんて誰にも分かるわけ無いのは当たり前だった
「私が小さい頃から店に居るんだ。昔はあの目に睨まれるのが怖くてな、友達と行くのも嫌だったよ」
先輩にもそんな可愛い時期があったのかと意外に思う。今の、暗闇に進んで突っ込んでいく彼女との姿とのギャップの違いに思わず吹き出してしまった僕を訝しげに先輩は見つめていた
[P07B]
編集
削除
コピー
[
9
]
どうも名無しです
[
9
]
どうも名無しです
2016/09/24/23:26
先輩の部屋にはオカルト関係のアイテムが数多く置かれている。学生の癖に何処からこんな物を集めて来るんだと聞いたら、結構あっさり種明かしをしてくれた
「知り合いの伝を頼りに曰く付きの品を処分代わりに格安で貰ってるんだ。まあ、大した物じゃないよ」
つまり、これらは本物の呪いのアイテム……と、言う事か
「……あの……お祓いとかは…したんですか」
恐々と辺りの品々を眺めながら尋ねる。先輩は頬を掻きながら
「知らない」
と、答える
知らないって。よくそんなのに囲まれながら生活出来るなこの人は
呆れと感嘆が織り混ぜになった複雑な感情が沸き起こる
「さて、そろそろか」
時計を見る。20時、出掛けるには良い時間という事だ
その日、案の定怖い目に遭って深夜0時頃に部屋に戻る。僕は精神的に結構疲れていたし、今から帰っても迷惑になるだけだ
「泊まってくか?」
「はい」
ここは、先輩の好意に甘えよう
布団に入ると直ぐに眠気が襲ってくる、右に並んで眠る先輩も同じようで静かな寝息が聞こえてきた
何かの気配を感じた気がして目が覚めた。室内はまだ暗く寝てからそんなに時間が経っていないように思える
天井をぼんやり眺めていると、左目の端で何かが動いた
先輩も起きていたのかと思い、彼女が寝ている方を向く
そこには、まだ。寝息を立てている先輩の姿があった
頭の後では再び何かが動く気配がする。誰かいる……
何者かは室内を彷徨い歩いていた。泥棒……変質者だろうか。兎に角、このままじゃヤバい
そう思い、飛び起きようとした瞬間。腕を掴まれた
「動くな」
小さいが先輩の声だ。起きていたのか
部屋に侵入した何者かは先輩の声に反応したのか振り向いた気配がする
ヤバい、気付かれた
僕は思わず身を硬くした、だが。その何者かは僕達に何をするでもなく玄関に向かい、ドアを開けて出ていった
「ふう、ビビった」
先輩は身を起こし息を吐く。嫌にのんびりとした仕草だ
「何、呑気な事言っているんですか! 警察に連絡しましょうよ!」
僕は携帯に手を伸ばす、だが、先輩に制された
「無駄だ。玄関を見てこい」
え? と、思い、言われるがまま玄関に向かう
鍵もチェーンも掛かったままだった
「あれは生きてる奴じゃない」
怖かったなあ。と、先輩は笑いながら言い、布団に潜り込む
僕は、寝る気にもなれずに部屋の中にあるオカルトアイテムを眺めながら朝を待った
「ここには霊道が通っているんだ」
朝食を食べつつ昨夜の事について聞くと。先輩はそう言った
「ここって……この部屋にって事ですか?
先輩は頷く
「ああ、2、3ヶ月に何回か霊道を通って部屋の中に入って来る奴が出るんだ。だから、この部屋も格安なんだよ」
いい部屋だろ? と、彼女は笑っていた
よく、こんな部屋に住めるな……
昨日、沸き起こった呆れと感嘆が入り交じった複雑な感情を。僕は再び感じていた
[P07B]
編集
削除
コピー
[
10
]
どうも名無しです
[
10
]
どうも名無しです
2016/09/24/23:28
僕の部屋に住み着いている猫は掃除機が大嫌いで、掃除機をかけると机の上に登って毛を逆立てて威嚇してくる
生前に、何か掃除機に関してトラウマになるような事があったのかもしれない
夜中に顔を踏まれる事もある。どうやら睡眠は不要らしく昼夜問わず室内を彷徨っているのだ
可愛いは可愛いのだが。口の中に足を突っ込まれた事もある
「どうにかなりませんかね」
「私に聞くな。お前が引き取ったんだろ」
別に引き取ったわけではない。勝手に憑いてきただけだ
「というか……私にも手に終えないしな」
どうもあの猫は僕の想像もつかない程に強力な霊らしい
そんな事があった月の終わり、
両親の友人夫妻が今年11歳になるという女の子を連れて訪ねて来た
積もる話もあるというわけで、大人達から女の子の世話を任されたのだが
「カナちゃん、トランプでもしようか」
「……いや」
カナちゃんは人見知りする質のようで、酷く緊張している
当たり前だ
彼女にしてみれば見知らぬ男と2人きりにされているのだ。不安で仕方無いだろう
子供の扱いを知らないなりに漫画を差し出したり、ゲームやお菓子を渡したりと頑張ってみたのだが。彼女の心を開くことは出来なかった
気まずいまま時間だけが過ぎる中。猫が現れた
相変わらず自由に動いている猫をぼんやりと目で追っていると、カナちゃんも猫を見ていることに気づいた
「猫、見えるの?」
「……うん」
僕は猫の元へ行き、抱き上げた。カナちゃんは猫をジッと見つめている
「猫、好きなの?」
「好きだよ」
僕の腕の中にいる幽霊を熱心に見詰める少女の顔は微かに笑みを浮かべていた
カナちゃんの近くに猫を放す
「触っていいよ」
そう言うとカナちゃんは恐る恐ると猫に手を伸ばし、小さな腕の中に抱え込んだ
猫を肩に乗せたカナちゃんを見送り、ホッと息をつく
「カナちゃん。凄く喜んでたわねえ。アンタ、先生とかに向いているんじゃない?」
母の言う通り、カナちゃんは玄関で顔を合わせた時の仏頂面が嘘に思える程の上機嫌で家を後にしていた
「僕は何もしてないよ」
実際何もしていない。カナちゃんが上機嫌だったのは猫と遊べたからというのもあるし、何よりも
「でもあの子、猫がどうたら言っていたけど。ぬいぐるみでもあげたの?」
「……そんな所かな?」
猫に憑かれたのが余程嬉しかったに違いない
少し寂しい気もするが、まあ、睡眠を邪魔されなくなる方が有り難かった
カナちゃんが猫に憑かれて3日後。寝ていると何かに顔を踏まれた
慌てて飛び起き電気を付けると
「ニャア」
猫が居た
翌日、カナちゃんから猫が逃げたと電話があった。猫を飼えて嬉しかった彼女は喜びの感情をそのまま猫にぶつけてしまったらしい
猫としては堪った物では無かったらしく。家まで逃げてきたのだった
「カナちゃん……やりすぎだよ……」
「……ごめんなさい」
その後、反省したカナちゃんは両親を説得し、本物の猫を飼ったらしい。父から聞いた話では甲斐甲斐しく世話をしているそうだ
そして、僕は
「先輩、本当にコイツどうにか出来ません?」
「諦めろ」
猫に悩まされる日々を送っている
[P07B]
編集
削除
コピー
[
11
]
どうも名無しです
[
11
]
どうも名無しです
2016/09/24/23:30
子供の頃から眠りが浅い僕は夜中に目が覚める事が多い
そんな時、たまに窓にかけられたカーテンの向こうに人影が見える事がある……ような気もする
そんな事を囲碁将棋同好会の先輩に話してみると気の無い顔で彼女は言う
「夢でも見てるんじゃない?」
確かに、金縛りのように本人は起きてると思っていても実は眠っていたりする事があるわけだから、僕の体験が夢である可能性は否定できない
「実際に何かを見たわけじゃないんだ、そんなに気にするな」
子供に言い聞かせるような口調で宥めながら先輩は僕の頭を撫でる。高校にもなってそんな事をされると恥ずかしいと。素っ気なく腕を払ってしまった
「気にしてませんよ」
気を悪くした様子も無く、先輩はニヤッと笑みを浮かべている
「私が正体を確かめてやろうか?」
両親が帰って来られない夜。僕は先輩を部屋に招いた、彼女を家に呼ぶのは始めてだった
「ネコネコ…元気にしてたか?」
「持って帰っていいですよ」
半透明の猫を見付けて上機嫌になっていた先輩は鋭い目で僕を睨む。何故か彼女はその猫に触れる事が出来ないのだ
「お前、案外意地が悪いな」
意地が悪いのは先輩も一緒だ
適当に夕食と風呂を済ませ寝床につく。考えてみれば両親不在で女の子を部屋に招いているのだ。何かを起こってもおかしくは無いのだが
「さて、一先ず寝ようか」
「はい。お休みなさい」
僕も彼女にも何も起きないのだった
深夜。僕は目を覚ました。隣に人が眠っているからだろうか、何時もより眠りが浅い気がした
窓に目を向ける。人影が見えた
声を上げるのを堪えて窓を見たまま、隣に寝ている先輩に手を伸ばし体を叩く
何度か叩いた後、頭を殴られた
「何処触ってるんだ」
不機嫌そうな声だ。何処を触ってしまったのか分からないがそんな事はどうでもいい
「そんな事より。ほら」
窓を指さす。先輩も僕の指先を追って頷き布団を撥ね飛ばし立ち上がった
「よし、見てみようか」
大股でカーテンへ向かう彼女に続く。人影は微塵も動かない。僕と先輩はカーテンの端を握り、一気に引いた
窓を挟んで至近距離に人影が居た。窓に張り付くように立っているのだ
僕は呆けたように影を見た。幾ら夜でもこれだけ近ければ顔や着ている服が判別出来る筈だ。だがその影はただ、黒い。まるで人型を黒く塗り潰したように
「開けるぞ」
「ぼ、僕がやります」
窓に手をかけた先輩を抑え、後ろに下がらせる。もし変質者だったらまずい
震える手で窓枠を掴み、開け放つ
影は消えていた
「何だったんでしょう…」
呟いた僕に先輩は首を振る
「分からない。霊的な物なのは確かだけど。何にも感じなかった」
彼女に分からないのならお手上げだ。その後、朝まで起きていたが、人影は現れなかった
「あれから、出たか?」
数ヵ月程立った頃、先輩から聞かれた。そういえば人影はおろか夜中に目が覚める事も少なくなっている
「いえ…見てません」
僕の答にふむと、頷いた彼女は暫く考えてから顔を上げた
「まあ、出なくなったのなら良かったじゃないか」
その日の深夜、僕は窓を眺めていた。あの人影を最初に見たのは何時の事だったろうか…思い出せない
ずっと、ずっとあの影は僕を見ていたのか
それから僕は窓を向いて寝ることは出来なくなった
[P07B]
編集
削除
コピー
[
12
]
どうも名無しです
[
12
]
どうも名無しです
2016/09/24/23:34
中学生の頃の話だ
アウトドア派の父は当時放送されていたCMの影響か「息子との2人旅」という物に憧れていたようで、連休になると半ば無理矢理僕をキャンプ用具を満載した車に突っ込みあちこちに出掛けていた
残された母も近所のママ友と仲良く買い物やお茶会等と羽を伸ばしていたようだ
根が面倒臭がりな僕はテント設営に夕食の準備と何かと忙しいキャンプ生活は苦手であり。日帰りでいいんじゃないかと何度か意見したが父は「キャンプをすることに意味があるのだ」と頑として譲らなかった
夏休み前の週末。何時も通り僕と父とでキャンプに出掛けた
今回の目的地は山の中にあるキャンプ場。川魚を釣って夕食に焼いて食おうというのが父の計画である
張り切っている父に渓流釣りの経験を聞くと何と初めてだという。無論僕も渓流釣りなどした事は無い
「念の為に何か買おうよ」
恐ろしい事に父はインスタントのご飯と夜のお楽しみのビール、日本酒等のアルコール類以外何も用意していなかったのだ
夏休み前というわけでキャンプ客は僕達以外は居ない。貸し切り状態だなと笑う父と手早くテント設営を終え。釣竿片手に川へ向かった
[P07B]
編集
削除
コピー
[
13
]
どうも名無しです
[
13
]
どうも名無しです
2016/09/24/23:34
「おかしいなあ。釣りに関しては自信あったんだけどなあ」
しきりに首を捻っている父に皿を渡す。案の定一匹も釣れなかった為、夕食はコンビニで買ったレトルトカレーだ
「サンキュー。いやあ、レトルトカレーでも自然の中で食うと旨いよなあ」
「そうだね」
思うように計画が進まずに若干テンションが低かった父もカレーを食べた途端に上機嫌になっている。自分の父ながら何という単純さだろうか
その後。缶ビールをチビチビ飲む父と学校の事などをとりとめもなく話していたら微かに何か聞こえてきた
誰かの話し声のように思える
他の客が来たのかと思ったが、人の気配はしない
僕が話し声に気が付いてる事を知っているのか、その声は徐々に近付いて来ている
既に日は完全に落ちている。山の中に誰か居るとは思えない。そもそも足音がしないのだ
どう考えてもこの世の者では無いだろう
父は何も気付いていないようで急に黙り込んだ僕に訝しげな視線を向けるだけだ
「どうした? 気分悪いのか?」
心配そうに聞く父にはなんでも無いと返したが、その間にも声は迫っていた
父の問い掛けに適当に相槌を打ちながら話し声に集中する。聞こえたらどうなるのか分からない恐怖もあるが何より
話の内容が気になって仕方なかった
声はどんどん近付いてくる
後少し、後少しで内容が聞こえる筈だ……恐怖と戦いながら僕は耳を澄まして
はっきりとその声を聞いた
瞬間、僕は呆気に取られた顔をしただろう。次いで笑いが込み上げてきた
「はあ……あ、ごめん父さん驚いたよね……そろそろ寝ようか」
一頻り笑い転げた後、僕はドン引きしている父に声をかける
「あ、ああ、そうだな。今日は早かったしなあ。疲れたんだろ? 悪かったよ」
父と僕はテントに入りそれぞれ寝袋に包まる。おやすみを言う間も無く寝息を立て始めた父とは違い、僕は外から聞こえる話し声に気を取られ中々眠れなかった
あと数分もすれば収まるとは思うのだが、得体の知れない声を聞きながら眠れる程神経が太いわけでもない
何度か寝返りを打ちながら会話の終わりを待つ。外から笑い声が聞こえてきた。そろそろこの話し声も終わるのだろう
「はあ……あ、ごめん父さん驚いたよね……そろそろ寝ようか」
「あ、ああ、そうだな。今日は早かったしなあ。疲れたんだろ? 悪かったよ」
父の申し訳無さそうな声を最後に話し声は途絶える。数分待ったが聞こえてくるのは虫の声と山鳴りだけだった
翌日。テントを畳んだ僕らはリュックを背負いキャンプ場のある山の頂上を目指し山道を登っていた
「父さん。頂上まではもう少しだから、頑張って」
「はぁ…昨日は様子が変だったのに……元気だな……まあ。良いことなんだが」
この時、父は自分を置き去りにする勢いで調子良く山道を登っていく息子を不審に思っていたそうだ
普段は山を登る時はダラダラと父の後を着いていくだけだったのだから当たり前かもしれない
小さい山だったので2時間程で頂上に着いた。頂上から見える景色は以外な程に絶景で、登ってきた疲れも吹き飛ぶような気がする
父は頂上の少し突き出た岩に立ち声を張り上げた
「ヤッホー!」
父の声は見事な山彦となって帰ってきた
何度か叫んだ父は満足そうな顔で振り返り僕を呼ぶ
「ほら、お前もやれやれ」
父に向かって頷き岩に立つ。この為に山を登って来たのだ。僕は胸一杯に息を吸い出来る限り大きな声で叫ぶ
「昨日はありがとう! びっくりしたけどいい思い出になりましたああああっ!」
何故か僕の声は山彦にはならなかった
下り道。登っていた時は気が付かなかったが頂上から少し下がった所に小さなお堂があった
僕はリュックから父が用意していた日本酒の瓶を取り出しお堂に備えた
少ないですけど昨日のお礼です…と心の中で念じ、手を合わせると急に風が吹き始めた
「こりゃ天気が悪くなるかもしれないな。ちょっと急ぐか」
父に急かされ僕も早足で山道を下る僕の耳に
「また来いよ」
と、聞こえたのは気のせいだったろうか?
[P07B]
編集
削除
コピー
[
14
]
どうも名無しです
[
14
]
どうも名無しです
2016/09/24/23:35
ある日曜日。先輩と交差点近くにあるハンバーガーショップの窓際のテーブル席でシェイクを飲みながら同好会やオカルトの話をしていた
グダグダながら続いていた話が途切れ、沈黙がテーブルを支配する
「霊が通ったな」
ポツリと先輩が呟いた
「ああ。そういいますね。天使が通る……というのも聞いた事があるような」
先輩はゆっくり首を振り窓を指差す
その指を追った僕の目は交差点の向こうに霊を見てしまった
髪の長い女が必死の形相で走っている。見るからにヤバそうな霊だ
「逃げましょうよ」
テーブルに身を乗り出し耳打ちするが先輩は聞く耳を持たない
女の霊は交差点に差し掛かり
足を止めた。表情も何だか悔しそうだ
「な、何で?」
呆然と僕が呟くと先輩がつまらなそうに言う
「よくみろ。信号は青だ。歩行者は渡れないだろ」
歩行者信号が青に変わり女の霊は髪を整えながら僕らの方へゆっくり歩いて来た。窓もテーブルもすり抜け店の奥へ消えていく
「この席は霊道の上にあってな。今までも霊が行き交っていたぞ?」
どうやら先輩には全て見えていたらしい
それから僕も席を行き交う霊が見えるようになった
例えば品のよい老紳士、例例えば半袖半ズボンの男の子、例えば女子プロレスラー
彼らは僕に気が付く事もなくただ通り過ぎて行くのが大半だった
唯一の例外がある
その日は休日で。僕は一人でその席に座っていた。あの日のようにシェイクで時間を潰しているとテーブルの上に誰かが居る事に気が付いた
顔を上げた僕が見たのは
鎧武者だった
彼は困った顔で交差点を指さし
「赤か青か」
と聞いてきた。昔の人のようだし渡り方が分からないのだ
「歩行者用信号。あの、人の絵が描いてある信号が青の時に渡るんですよ」
そう教えてやると凄く嬉しそうな顔で頭を下げる
「かたじけない」
僕に礼を告げた鎧武者は立派に交差点を渡って見せたのだった
[P07B]
編集
削除
コピー
[
15
]
どうも名無しです
[
15
]
どうも名無しです
2016/09/24/23:39
先輩の部屋には市松人形が置いてある。彼女は市松人形を大切に扱っているようで、着ている和服は先輩自ら縫った代物だった
「先輩。その人形は大事な物なんですか?」
新しい服を縫う先輩に人形の事を聞くと、彼女は手を止めて人形に纏わる体験談をしてくれた
小学3年から4年までの1年間。私は祖父母の住む田舎に引き取られた。理由は分からない
田舎暮らしの間、母も父も私を訪ねて来ることは無く。2、3ヶ月に1度近況報告のような電話をやり取りするだけであり
子供心に
(私、捨てられたんだな)
と、思わなくも無かった
祖父母は厳しかったが優しく、私を存分に可愛がってくれたものだ
特に祖父は一生を掛けて集めた曰く付きの品々を私に見せてはそれらにまつわる怪談話を良く聞かせてくれた
今の私の趣味思考は祖父によって形成された物のようだ
そんな家だから様々な事が起こった
秋の連休の事。田舎の友達は皆旅行に出掛けており、祖父母は畑仕事に出て暇を持て余していた昼日中。その日は良い陽気だった事もあり私は何時の間にか寝入ってしまった
人の気配を感じ目を覚まし、祖父母が帰ってきたのかと身を起こした。私の傍らに綺麗な着物を纏った女の子が座っている
「一人なの?」
女の子の問いに私は頷いた。誰なのか、どこから入って来たのかと聞かなければならない事はあった筈だが、その時の私は何故かその女の子が居ることは当たり前の事だと受け入れていた
「一緒に遊びましょう」
女の子着物の袂からお手玉を取り出し童歌と共に投げ始める。女の子は上手かった。私の祖母よりも上手かったかもしれない
私も女の子からお手玉を受け取り投げてみたが正直に言って相当下手だった
女の子は根気よくお手玉を教えてくれた。お陰で小一時間で見違えるようにお手玉が上手くなって私達は夢中でお手玉に興じた
気が付けば夕暮れ。女の子はまた明日ねと庭に飛び出しあっという間に姿を消してしまい私は再び一人になってしまった
祖父母が帰ってきたのは彼女が消えてからすぐの事だ。私は女の子の事を話したが祖父母は然程興味を引かれた様子はなく。良かったねえ等と適当に相槌を打つだけで流された
女の子は連休の間、毎日来てくれたが彼女がどこから来るのかは分からなかった。何時も気が付けば私の側にいたからだ
私は遊びを教えて貰うだけではなく、ヨーヨーやゲームなど得意な遊びを女の子に教えた。女の子はヨーヨーもゲームも知らないようで興味深そうに私の話を聞いては真剣な表情で遊んでいた
その時点で私は、この女の子は人間ではなくお化けだと確信した。幾らなんでもこのご時世でゲームを知らない子がいるとは思えなかったし。何より毎回気が付けばすぐ側にいるという気配の無さが異常だった
とはいえ、彼女は悪い子じゃないという根拠の無い確信があった為、恐怖心などは感じていなかった。祖父の怪談話と幾つかの恐怖体験で感覚が麻痺していたのかもしれない
連休最終日。私は女の子に明日から学校が始まるから昼間は遊べなくなると伝えた
「帰ってきたら、また遊ぼうね」
私がそう言うと、女の子は首を横に振る
「貴女は学校のお友達と遊んだ方がいいよ。これでサヨナラしましょう」
折角仲良くなった彼女からサヨナラと言われ。私はショックで泣いてしまった、彼女は慰めるように私を抱き締めて、優しく背中を叩いてくれた
「帰ったぞぉ」
泣き疲れた私はいつの間にか眠ってしまっていたようで。祖父の帰宅の声で目を覚ました
周りを見渡しても女の子はいない。もう彼女は消えてしまったのだと分かって項垂れた私の視界に市松人形が映る
その市松人形はあの女の子と同じ柄の服を着ていた
夕食時。私は市松人形を祖父母に見せた。二人とも大層驚いたようだった
「この人形はな、お前が生まれた時に買ったものだが。お前の親からは気味悪がられてな」
結局人形は祖父母宅の押し入れに仕舞い込まれ、それっきり祖父も存在を忘れていたようだ
私が今日の出来事を話すと、祖母が市松人形を抱き上げる
「この子も遊んで欲しかったのかねえ…良かったねえ遊んで貰えて」
「で、これがその人形。実家に帰る日に祖父から人形を貰ったんだ。以来ずっと手元に置いている……あの女の子とは会えていないがな」
昔話を終えた先輩は、出来上がった服を人形に着せる
「だから、そんなに大切に扱ってたんですね…いい話じゃないですか」
そう言うと、彼女はただなと話を続けた
「この人形、あの爺さんが集めた物だけあって曰く付きでな。持って帰ったその日から家の中で色々起きて……大変だった」
思い出すのもウンザリと言うような彼女の顔を見て、僕は何も言えなかった
[P07B]
編集
削除
コピー
△
||
1-
||
投稿
||
更新
||
検索
前のページ
次のページ
スレッド一覧
日間
週間
月間