GBG2 アーシェ外伝
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プラネテューヌ親衛隊
2017/09/04/22:04
この物語はガンプラビルドガールズセカンドに登場する桜木・R・アーシェが主役のお話です。
まだ高校一年生のアーシェが趣味であるガンプラファイトを通してかおること出会い。生徒会に入り。恋をするーーー。
そして親友と呼べる相手と出会う。
[SC-05G]
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プラネテューヌ親衛隊
2018/04/09/07:12
◇
今度の戦いの舞台は森林エリア。周りの木々のせいで視界が悪く相手がどこにいるのかわからないので、慎重に進まなければならない。
「相手がどこにいるかわからないから、皆気をつけてね」
真愛が全員に向けて言う。
「わかってるさ、でも……それは相手にも言える事だぜ。すぐには攻撃してこないだろう」
真矢が返答する。相手の状況がわからないのは見滝原も同じ事。互いに見えない分。慎重に行動しているのはどちらにも言えた事だ。すぐに攻撃をしてくる素振りはみせないだろうと言う。
「かおるこ。何か怪しいの見つけた?」
最後尾。上空で敵を探索しているスナイプサイトジンクスに通信を送る真矢。
「今のところは何もありませんね」
「そっか、この近くにはいないみたいだな」
と、真矢は視線を横に移動させる。
「アーシェ。そっちは?」
念のためにアーシェにも通信を送る。
「いえ、こっちにも居ませんよ」
通信を返してきたアーシェが首を横に振った。
「どこから来るんでしょうね……」
「さあ、1回戦の時みたく急に出てきて視界を遮って来るかも」
アーシェの言葉に真愛は1回戦の試合を思い出していた。野薔薇学園を倒した見滝原……誰もが予想していなかった勝者に観客は注目している。このまま桜翠学園を倒すのではと……。
「麗香ちゃんの分まで頑張らないとね。いつもの様に戦えると思ってたけど……」
準決勝で毎回争っていたから、きっと今回も準決勝でぶつかると思っていた野薔薇学園が1回戦で敗退。麗香のショックも相当なものだった。
そんな彼女の無念を晴らすべく。真愛はこの戦いに望む。
「そうですね。それと……アーシェちゃんはあかりちゃんとの約束がありますし」
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プラネテューヌ親衛隊
2018/04/09/07:13
「そうだな。なんとしても勝ち進まないとな!」
「い、いいですよ。私なんかの為にそこまでしなくても……!」
慌てた様子でアーシェが言う。確かに約束はしたが、先輩達の手を煩わせるのは良しとしていなかった。
「そういう訳にはいかないよ、私達はチームなんだから、仲間の協力は惜しまないよ」
「そうそう、京子達なら最後まで生き残ってるかもだぜ。あいつはしぶといからな」
「かおるこ先輩。真矢先輩……。ありがとうございます」
かおること真矢は微笑む。その顔を見ていたら、アーシェも不思議な安心感を覚えた。
「まあ、七森と戦うには、まずこの戦いを切り抜けないとね」
真愛だけがドライな発言をする。
「姉ちゃんはファイト中だと本当、性格変わるよな……」
「事実を言ったまでだよ」
「真愛先輩の言った通りですね。まずはこの試合を乗りきらないと……!」
先輩達の励ましにアーシェは闘志を震い立たせた。
「ふふ、その調子だよアーシェちゃん。期待してるからね」
「はい。任せてください」
アーシェは元気よく声を弾ませた。
「まあ、気合い入るのはいいけどな。かおるこ、何か見つけたか?」
「いえ、まだ何も……かなり進んだのに中々遭遇しませんね」
「おかしい……。そろそろ出てきてもいいのに、皆、一先ず止まろう」
真愛の指示のもと全員機体を停止させる。スナイプサイトジンクスは地上へ降りて仲間と合流した。
「不気味だね。何も仕掛けてこないなんて……」
「ああ、もしかしたらどこかに潜んでるのかもな。お前ら、油断するなよ」
「はい!」
「了解しました」
全員で周囲を警戒する。
「ん?」
アーシェが何かに気づいた。
(今、何か動いたような……)
一瞬空間が歪んだように見えた気がした。
何かの間違いかと思ってもう一度その場所を目を凝らして注目すると、空間から突然ビームライフルの銃身が出現する。それを目の当たりにしたアーシェは目を見開いた後に即座へそこに射撃を行った。
「ちっ……」
アーシェクアンタの攻撃に反応して、何もない空間からジェスタコマンドが出現した。
[SC-02J]
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プラネテューヌ親衛隊
2018/04/21/20:18
「っ! 何もないところから敵がっ!?」
「光学迷彩マントか……!」
ジェスタコマンドの出現にかおるこは目を見開く。
真矢はジェスタコマンドから落ちた物に注目した。地面に落ちたその部分だけ空間が歪んだように見える。それは光学迷彩マントによるものだと悟った。
「他にもいるかもしれない気を付けろっ!」
真矢が皆に警戒するように指示する。
「ご名答っ!」
「暁美さんが見つかると思わなかったけど……。ここから一斉に仕掛けさせてもらうわっ!」
一斉に虚空から見滝原チームのガンプラが飛び出してきた。全員身構えて戦闘態勢を取る。
「暁美さん、閃光弾をお願いっ!」
「……了解」
ジェスタコマンドのサイドスカートから閃光弾を取り出して、上空へほうり投げる。
「あれって、閃光弾だ。皆、目を閉じてっ!」
真愛が叫ぶ。桜翠メンバーは光で視界を奪われないように、目を閉じた。
「きゃっ!」
閃光弾が破裂した音が聞こえた後。かおるこの小さな悲鳴が耳に届く。
「かおるこ先輩! どうしましたっ!」
目をつぶるのが遅れて、光を見てしまったのかと不安になるアーシェ。
だが、かおるこがそんな失態を犯すだろうか? 声をかけても返答がない。
「かおるこ先輩。かおるこ先輩! 応答してくださいっ!」
何度も呼び掛けても反応がなかった。
「無駄ですよ」
「その声は……さやか……!」
さやかの声が耳に届く。そろそろ光りも弱まっただろうと、アーシェは瞼をゆっくりと開けると目の前にはさやかのR・ジャジャSカスタムの姿があった。
「アーシェさん。お望み通り……本気で戦いましょう」
「……? 他の仲間はどこへ行ったの。かおるこ先輩達もいないわ」
周囲の状況を確認する。そこにはマミ達の機体もかおるこ達の機体もなかった。
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プラネテューヌ親衛隊
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プラネテューヌ親衛隊
2018/04/21/20:18
アーシェは再び、RギャギャSカスタムに向き直る。
「あなた……皆をどこへやったのよ」
「さっきの閃光弾に気を取られている間に、他の皆が離れた場所に連れて行ったんですよ」
「なるほど……私達を引き剥がして一対一の状況を作って撃破するって作戦なのね」
「そうですよ。桜翠も連携攻撃が強力ですからね」
「わかってるじゃない。でも、たとえ1人にされたとしても……私達桜翠は強いわよ」
「……そんな事」
さやかは口の端を上げてペダルを強く踏む。
「知ってますよ!」
スラスターを噴かしてRギャギャ・Sカスタムが急接近してくる。その右手に握るこの機体のメイン武器。バスターソードを振り下ろした。
「くっ!」
アーシェはアーシェクアンタに防御の構えを取らせる。
GNソードで真上から来た刃を受け止めた。その重い衝撃がコックピットにも伝わってきた。
「なんてパワー……。その機体カスタマイズしたのね」
「当たり前じゃないですか、アーシェさんとガチで戦うなら……機体を見直す事だってしますよ!」
Rギャギャ・Sカスタムがアーシェクアンタをパワーで押し退けた。体勢を崩したアーシェクアンタ。さやかは更なる一撃を繰り出す。
「おりゃぁあああっ!」
バスターソードを真横から振り回す。風を切って刃が脇腹に迫っていく。
「はあっ!」
アーシェはアーシェクアンタを上昇させた。Rギャギャ・Sカスタムの渾身の一撃は空振りに終わる。
上空でGNソードをライフルモードに可変させ、そのまま真下に向かって引き金を引いた。
「くっ!」
Rギャギャ・Sカスタムが肩の巨大なシールドで粒子の弾丸を防ぐ。さやかは上空のアーシェクアンタを睨んだ。
「相変わらず……いい反応ですね」
「そんなパワーで斬られたらひとたまりもないもの。必死に避けるわよ」
「必死って、よく言いますよ……。そっちからしたらこっちの攻撃避けるの容易いと思ってるでしょ?」
「まあ、あなたの攻撃は解りやすいからね」
アーシェは肩を竦める。さやかとは何度もファイトをしてきたから、手の内がわかっている。だから攻撃を避けるのは難しい事ではない。
「言ってくれますよ。まあ、敵は強い程、燃えるんですけどねっ!」
両肩のシールドが開く。内側にあったビーム砲が露になってそこから粒子の奔流が放たれた。
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プラネテューヌ親衛隊
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プラネテューヌ親衛隊
2018/04/21/20:18
「すぐに大技を出す癖、直しなさいって言ってるでしょ!」
敵の砲撃を避けて反撃をする。
「わかってますよ!」
「っ!?」
アーシェクアンタが放った粒子は、片方のシールドで防がれてしまった。
「いつまでも大技ばかりかましてる馬鹿じゃないですよ。あたしはっ!」
「なるほど、ちゃんと学習院してるのね。師匠としてあなたの成長は喜ばしいわっ!」
アーシェはアーシェクアンタを走らせる。2人のMSは激しい衝突を繰り広げた。
◇
閃光弾で隙を突かれ、仲間と散り散りにされてしまった真矢。彼女は今、剛練によってどこか遠くへ運ばれていた。
「おい、離せよ!」
「暴れるなよ。今、離してやるから……」
「え、おわっ!」
唐突に手を離された。地面に激突するのを恐れてスラスターで姿勢を制御して地面に着地する。
「危なかった……。おい、いきなり手を離すなよ」
「離せって言ったのあんたじゃん」
杏子は眉間に皺を寄せてグフビーストを睨んだ。すぐに口角をにいっと、上げる。
「まあ、いいや……これで誰にも邪魔されずにあんたと戦えるってもんだ……」
「お前ら、ひょっとしてあたしらを1人ずつ倒す為に孤立させたのか?」
「そうだよ。だったらどうするのさ」
杏子の返しに真矢は笑った。
「いや、嫌いじゃないぜ。そういうの……」
「あはは、あんたならそう言うと思ったよ。何か、あたしと同じ匂いがするからさ……」
「そうか、なら……」
2機は同時に動く。
「派手にドンパチしようぜっ!」
「望むところだよ!」
互いの近接武器が衝突して火花を散らす。
「うおらっ!」
杏子の剛練が槍を勢い良く突き出した。
「なんのっ!」
グフビーストが槍の一撃を回避。懐に飛び込んで右手の爪を繰り出す。
「りゃあっ!」
剛練の左手にはナックルガードが握られていた。迫ってきた右手を殴って弾き、後方に飛んで距離を取る。
「噂に聞いた通りの思い切りのいい戦い方だね。やっぱり気に入った!」
「そうかい、あんがとよっ!」
距離を離されたとしても逃がさない。真矢はヒートテイルブレードを選択し、射出させる。有線リードが伸びて熱で赤く発光した刃が宙を舞う。
「早速使ってきたな。撃ち落としてやるぜ!」
杏子はヒートテイルブレードに照準を合わせる。引き金を押し込み。槍に内臓された機銃で攻撃を行った。
「そんなんでこのヒートテイルブレードは撃ち落とせねえぜ!」
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プラネテューヌ親衛隊
2018/04/21/20:19
熱を帯びた刃は弾丸をも溶かす。勢いを落とさず真っ直ぐに剛練へと向かっていく。
「へへっ……」
杏子は笑った。
「当たるかよっ!」
「なっ!」
刃の先端が剛練の頭部にに触れようとした瞬間。身体を横へと傾けて回避する。
ヒートテイルブレードが横を通過していくのを見計らって、剛練がグフビーストに接近して槍を突き出す。
真矢は咄嗟に回避するが、右肩の装甲に直撃を受けてしまい。肩のパーツの一部が吹き飛んでしまった。
「こいつっ!」
グフビーストが爪を振り下ろす。だが、剛練はその攻撃を瞬時に後退して逃れる。
「もらった!」
避けられはしたが、ヒートテイルブレードを操作して、その直線上に剛練の背中を捉えた。
「残念でした」
またもや攻撃を避けられてしまう。自分の武器がこちらに迫ってきた。
「マジかよっ!?」
グフビーストを直線上から退避させる。ヒートテイルブレードを避けたところで引き戻した。
一歩間違えれば直撃を受けてやられていたかもしれない。そう思うと身体中から汗浮きがってくる。
「2回も避けた。まぐれ……じゃないよな」
「当たり前でしょ。さっきの1回戦で言ったけど、うちらは他チームの戦闘パターンを頭に叩き込んでるんだ。当然、あんたの弱点も知ってるぜ」
「へえ、その弱点てのは……?」
「あんたはヒートテイルブレードを使う時、機体の動きが止まるんだよ。それも仕方ないよな。それは扱いにくい武器だ……機体を動かしながらじゃ動かすなんて無理だもんな」
モニタに映るグフビーストに指を突き付け、杏子は言った。更にその先を付け加える。
「それに、あんたはその弱点を補う為に姉と組んで戦ってる。砲撃特化の機体が側にいればその弱点を補ってくれるもんな」
「……よく調べたもんだな」
杏子の言葉に感心する真矢。彼女の言った事は全て本当の事だ。ヒートテイルブレードは扱いにくい武器で機体と同時には動かせない。
その弱点を知った上で孤立させてきたのだ。
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プラネテューヌ親衛隊
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プラネテューヌ親衛隊
2018/04/21/20:19
「極めつけは今回のバトルフィールドは森……こんな狭い空間じゃ、満足にご自慢の武器も振り回せないだろ」
「……確かにな」
今回のバトルフィールドは真矢にとって不利だ。考えなしにヒートテイルブレードを使えば、リードが木々に絡まって身動きが出来なくなってしまう。グフビースト最大の武器を封印されたようなものだ。
「でも、それだけで勝った気でいるのは大間違いだ。ヒートテイルブレードだけがこいつの武器じゃないぜ」
「追い詰められてるのに、まだ自信を失ってないみたいだな。けど、残念。いつまでもあんたに構ってる暇はないんだ。速攻で決めろってマミに言われてるからね」
スラスターの出力を上げて剛練が槍を構えて突撃してくる。
「あんたともっと戦いたかったけど、これで決めるよ!」
「へっ、だから……これで勝った気でいるなよ!」
真矢は操縦レバーを強く握った。
「行くぜ。グフビースト! ビーストモードだっ!」
真矢が吠える。グフビーストの両肩の装甲が外れて地面に落ちた。
「何で装甲をパージなんか……。えっ!?」
杏子は目を見開いた。目の前にいた筈のグフビーストが一瞬で姿を消した。
「こっちだ!」
「っ!?」
背後から真矢の声。だが、振り向くより先にグフビーストは剛練のスラスターに爪を立てた。
「うわっ!」
斬り裂かれたスラスターから火を噴き上げ、制御が効かなくなり剛練は地面に激突した。上体を起こす。振り向けばそこにはカメラアイが赤く発光したグフビーストがいた。
「なんだそりゃ……。そんなの聞いてないんだけど」
「こいつはビーストモード。グフビーストの性能を上昇させるシステムだ。奥の手ってところで使うつもりはなかったんだけどな……」
「あはは、そんな隠し玉があったなんてね。やめだ……速攻で倒すのはもったいない!」
剛練が立ち上がって槍を投げ捨て両手にナックルガードを装備させる。
「マミには悪いが、この戦いを楽しまさせてもらうぜっ!!!!」
接近して剛練は拳を突き出す。
「遅いっ!」
その一撃を避けて剛練の胴体に爪を突き刺す。そしてそのまま力任せに装甲を引き裂いた。
「悪いが、畳み掛けてもらうぜっ!!!!」
「くっ!」
高速で両腕を振り回して剛練の装甲を引き裂いていく。
「ここまで性能が跳ね上がってるとは、エクザムシステムかトランザムの類いか……。けど、こんなところで退く訳にはいかないんだよ!」
剛練は渾身の一撃を放った。ガンっ、と鈍い音と共にグフビーストの頭部がへこむ。
「なんで避けない……?」
「ここまでガッツのある奴の一撃を受けずに勝つなんて、相手に悪いだろ……いいパンチしてるじゃねえか」
「へへ、だろ?」
「面白かったぜ。またファイトしような!」
真矢は満面な笑みを浮かべながらグフビーストは最後の一撃を突き立てる。剛練はその一撃をもって機能を停止させた。
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プラネテューヌ親衛隊
2018/04/21/20:20
「はぁ……」
大きく息を吐く。それと同時にグフビーストのモノアイも元の色に発光する。
ビーストモードシステムの終了を知らせる合図だ。右手を引き抜くと先程まで剛練だった鉄塊が地面に沈む。
「まさかビーストモードを使う羽目になるとはな……。恐れいったぜ」
額の汗を拭い。彼方の空へ視線を向ける。
「今回の見滝原はガチで強い。皆……気を付けろよ」
◇
緑が生い茂る森林の中をスナイプサイトジンクスがゆっくりと進行する。
(どこにいるのかな……)
かおるこは周囲を警戒していた。自分をここへ連れてきた相手はわかっていた。暁美ほむら。ジェスタコマンドのパイロットである。
「……相手は鹿苑寺かおるこ。強敵ね」
ほむらの方ではかおるこの居場所を特定していた。影に身を潜めて相手が射程に入るのを待っている。
「相手が誰だろうと敗けはしない。まどかの為にも勝利を掴み取る」
ここにはいない親友の顔を思い浮かべる。ここで勝ったら彼女はどんな言葉をかけてくれるのかを想像してみた。自然と口許が緩んでしまう。
「ふふふふふ……あの子の事だから、きっと喜んでくれるに違いない」
ほむらは不気味に笑う。他の人が見たら通報されそうなくらいの表情をしていた。
「ん、来た」
表情をすぐに真剣な物へと変える。射程距離にスナイプサイトジンクスを捉えたからだ。
「目標補足。あなたには悪いけど……倒させてもらうわ」
静かに言って引き金を引いた。長い銃身から粒子が撃ち出された。それは木々の間を通過していく。
「っ!?」
身の危険を感じたかおるこはその場から離れる。その数秒後に粒子が飛んで来る。
スナイプサイトジンクスは弾丸を避ける。背後にあった木に直撃して木々が大きく倒れた。
「今の………向こうにいるみたいね」
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プラネテューヌ親衛隊
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プラネテューヌ親衛隊
2018/04/21/20:20
距離は1時の方角。かおるこはスナイパーライフルをそちらに向けて発砲させた。
「っ!?」
敵の反撃が飛んできた。すんでのところで回避するが、頭部を掠めて傷跡が残る。
「まだこちらの場所がわかってないのに、方角と発射角度からこちらを狙ってきた……。聞いていた通りの相手ね」
ほむらは深呼吸をして、心を落ち着かせる。
「同じ場所に留まっているのは危険ね。この場を離れないと……」
この場から離れると判断をするほむら。その前に、彼女には少しやる事があった。
「……囮は必要ね」
背中のドックバックパック通称ホムラ2号が変形して、地面に降り立つ。
「さあ、行きなさい」
そう言うとほむらは、ホムラ2号をスナイプサイトジンクスの方角へと走らせ、自分はこの場から離れるのであった。
「確か、こっちの方向だった筈なんだけど……」
攻撃が飛んできた場所へやって来たかおるこ。だが、そこには生い茂る木々のみで何もなかった。
「やっぱり場所を移動したのかな。攻撃をした場所にいつまでも留まっている筈もないよね……」
口にはしつつも、周囲を警戒する。この間にも敵がどこから狙っているのかわからないのだから。
ガサッ!
近くの茂みから物音が……かおるこはすぐさまその方向にスナイプサイトジンクスを向かせ、発砲する。
「あ、あれは……ほむらちゃんて子が使ってた!」
茂みを攻撃して黒い影が飛び出してきた。それは、ほむらの愛機ジェスタコマンドのドッグバックパックだった。
ホムラ2号は跳躍して攻撃を避けると頭部のビーム砲で反撃を行った。
「うっ!」
スナイプサイトジンクスはホムラ2号の攻撃を避ける。直撃した地面が焼け焦げていた。今度はビーム砲ではなく、ガトリング砲の砲身が高速回転し、次々と弾丸を発射していく。
「う、うわあっ!」
かおるこはたまらずスナイプサイトジンクスを退避させた。
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プラネテューヌ親衛隊
2018/04/21/20:20
ホムラ2号は弾丸をばらまきながら追いかけてくる。
「こうやって狙われると戦いにくいなぁ……」
かおるこは狙撃を得意とする為、執拗に追いかけて絶え間なく攻撃してくる相手は苦手としている。
「なんとか逃げのびて反撃しないと……」
「……そうはさせませんよ」
「……え?」
前方の木の影から、ジェスタコマンドが躍り出た。
「もらった!」
ビームサーベルを引き抜いて接近。スナイプサイトジンクスのスナイパーライフルを両断する。
「しまっ!?」
かおるこは目を見開く。スナイプサイトジンクスのメイン武器を失ってしまった。これは大きな損失となってしまう。
「これで終わりにします」
「くっ!」
ジェスタコマンドが迫ってくる。かおるこは、スナイプサイトジンクスにビームサーベルを握らせる。
「まだ終わらせないよ!」
スナイプサイトジンクスがビームサーベルを振るう。ジェスタコマンドもその攻撃に対応。幾度と粒子の刃が衝突を繰り広げた。
「意外ですね。ここまで接近戦が出来るとは……」
「相手に接近されて対応出来なかったら負けちゃうからね。ある程度は出来るようにしてるよ。普段はアーシェちゃんや真矢先輩に任せているから、あまりやらないけど」
「私もです。さやかと杏子がいるから、普段はやりません……」
「その割には接近戦も手慣れたものだね」
「あなたと同じです。接近されて負けたって言い訳にしたくありませんから……」
いまだに衝突を繰り広げる刃。お互いの近接戦闘のテクニックは互角。このままでは決着がつかなそうだ。
「このまま長引かせるつもりはないです……。これで終わりにしますよ」
「何か秘策でもあるのかな?」
「その言葉そっくり返しますよ。忘れてませんか、ホムラ2号の存在を……」
一瞬何の事を言っていると思ったが、頭の中にふと思い浮かんだ。あのドッグバックパックの事を……。
駆動音を鳴らし、ホムラ2号がこちらに迫ってくる。
「そっか、それがあったね……!」
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プラネテューヌ親衛隊
2018/04/21/20:21
ジェスタコマンドを蹴飛ばし、ホムラ2号に対抗する。ビーム砲とガトリング砲の同時攻撃が襲ってきた。
「はあっ!」
ビームサーベルを投擲する。刃はホムラ2号に突き刺さり爆発を起こす。
「狙い通りですよ!」
「っ!」
蹴飛ばしていたジェスタコマンドが接近していた。今のホムラ2号は囮だったのだ。
反応に遅れて左腕を斬り落とされる。そして、間髪入れずに両足までも斬られてしまった。
「きゃあっ!」
支えを失ってスナイプサイトジンクスが転倒する。
「これで終わりですよ」
ジェスタコマンドがゆっくりとビームサーベルを握る手を空へ掲げた。
「そう判断するのは早いよ!」
かおるこは追い詰められていても諦めてはいなかった。もう1本のビームサーベルを引き抜く。予備がまだあったのだ。
最後に残った1本をサーベルを握るジェスタコマンドの手に投げ付ける。刃がマニピュレーターを破壊し、握っていたビームサーベルが地面に突き刺さる。
「なっ!」
思いがけない反撃にほむらは驚愕する。だが、彼女の驚愕はここで終わらなかった。
「じゃあ、これでチェックメイトだね」
「ハンド……ガン」
報告になかったハンドガンがスナイプサイトジンクスの手に握られていた。
「そんなのあったんですね……」
「相手に悟られないように、普段はあまり使わないようにしてるんだよ」
「隠し玉……ですか、意外と食えない人ですね。あなた……」
ほむらは肩を竦め、苦笑する。
「ふふ、誉め言葉として取っておくよ……じゃあね」
かおるこは笑い。引き金を引いた。バトルフィールドに三度の銃声が響き渡った。
◇
「あぁ……めんどくさいなぁ……」
[SC-02J]
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2018/04/21/20:21
真愛はイライラしていた。その理由は単純だった。
「まだまだいきますよ!」
上空のガンダムレオパルド・フィナーレが二丁のビームライフルをこちらに向ける。
引き金を引き、銃口から粒子の光が尾を引いて襲ってくる。
「しつこいねぇ!」
真愛はそれを避けて反撃。ドムキャノンのビームバズーカの砲身から粒子の塊を発射するが、容易く回避されてしまう。
「ふふ、当たりませんよ」
「くそぉ……」
余裕の笑みを浮かべるマミと青筋を立てて怒っている真愛。先程から同じ展開が続いている。
上空を飛び回るガンダムレオパルド・フィナーレからの攻撃を避けて反撃。その攻撃を避けられて相手が反撃という流れだ。
相手の方が機動力が上で飛び上がろうとすると即座に撃ってくる。計算された動きで真愛を苦しめていたのだ。
「前はこんな戦いする子じゃなかったのに……」
「昔と今とじゃ、戦い方も変わりますよ!」
言ってマミはビームライフルで攻撃を続ける。数多く撃ち出されたビームのシャワーにドムキャノンはホバー移動で滑りながら後ろへ下がっていく。
「言った筈ですよ。今年は先輩達の無念を晴らす為にも優勝するって、その為なら私は刺し違えてでも勝つつもりですよ!」
「凄い執念だね……」
マミの気迫に圧倒されそうになる真愛。だが、だからといって負けてやるつもりは1つもない。
「私も皆の為に優勝したいからさ、あなた達を叩き潰してあげるよ」
「出来るんですか? 仲間と孤立させられたあなたに……!」
執念を込めた声と共にトリガーを押し込む。発射された粒子はドムキャノンの頭部に被弾した。
「うわっ! まともなのもらっちゃったよ!」
頭部のパーツが大きく破損した。真愛は汗を垂らす。休む暇を与えさせずにガンダムレオパルド・フィナーレは連射してくる。
胴体。肩。背後のキャノンへ次々とヒットさせていく。
「あなたは妹さんとの連携で強さを発揮する。孤立した状態のあなたなら、容易に倒せますよ」
「確かにね……」
ドムキャノンの弱点は機動力。速度が遅いので自分より速度の速いグフビーストと組んでの連携を想定したのがこのドムキャノンなのである。
グフビーストがいない今はサポートをしてくれる相手がいないので苦戦を強いられてしまうのだ。
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2018/04/21/20:21
「速い相手にはドムキャノンは部が悪すぎるね……」
そう言って砲撃する。空中のガンダムレオパルド・フィナーレはひらりと攻撃を回避した。
「そう言う事です。さあ、大人しく倒されてくださいっ!」
両肩のミサイルランチャーからミサイルが発射される。
「嫌だよ!」
真愛はビームバズーカでミサイルを全て蹴散らす。上空で大規模な爆発が起きた。
その隙に高速で後退していく。
「往生際が悪いですよ。逃がしませんからっ!」
マミは執拗に追いかけていく。上空からの攻撃は緩まない。少しでも被弾を抑えようとジグザグの軌道を描きながらドムキャノンは逃げる。
「このままじゃまずいね。なんか手はないかな……」
打つ手はないか考えている……が、砲撃による騒音で中々集中できない。
「うるさいね。ここまでだと集中出来ない……。ん。騒音?」
真愛はある事を閃いた。
「可能性は高くないけど……。やらないよりはマシだよねっ!」
真愛は勝ち気に微笑み。連続で砲撃を行った。
「ほらほらどうしたの? まだわたしは倒れてないよ。速攻で倒すんじゃなかったのかな?」
「……言われなくても、これで倒してあげますよ!」
空中で回避するとマミは真愛の挑発に乗った。
ガンダムレオパルド・フィナーレのバックパックが変形し、巨大な砲台へと変わる。
「くらってくださいっ!」
「あ。あれは流石にまずいかな……」
「ティロ・フィナーレーーーー!!!!!!!!」
ガンダムレオパルド・フィナーレの必殺の一撃が放たれる。巨大な奔流がこちらへとやって来る。
真愛は、ドムキャノンの速度を上げた。
「うわあああああああっ!!!!!!」
直撃を免れたが、地面に衝突した衝撃でドムキャノンの巨体が軽々と吹き飛ばされてしまう。
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プラネテューヌ親衛隊
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プラネテューヌ親衛隊
2018/04/21/20:22
地面を転がり。しばらく行ったところで停止する。
「いてて……。うわっ!」
ドムキャノンの上体を起こし、真愛の視界に飛び込んできたのは、地面に出来上がった巨大なクレーターだった。
その光景を見れば、強大な威力を伺い知れる。
「くらってたらまずかったね……」
「次は外しませんよ」
マミは静かに言った。次の砲撃の準備に取り掛かる。
「チャージ開始……10%。20%」
エネルギーの充填率を口にするマミ。これが100%になれば再びあの一撃は放たれる。刻々と迫るエネルギー。だが、ドムキャノンはその場から動こうとしなかった。
「逃げるの諦めたんですか……?」
「まあ、そうだね。逃げるの疲れたんだよねぇ……」
「そうですか……なら、すぐに解放してあげますよ。そろそろ100%になります」
エネルギーがもうじき100%になる。そうすれば再びあの砲撃を放ち、真愛に勝つことが出来る。右の指をトリガーに触れさせる。
「あ、でも……」
ふふ、と真愛は笑う。その耳に届く。スラスターの駆動音。
「賭けは私の勝ちだね」
「え?」
マミは真愛が言っている事がわからなかった。
「うおおおおおおおっ!!!!!!」
「なっ!?」
背後から聞こえた叫びにマミはその言葉の意味に気づく。振り向けばそこに真矢のグフビーストがいた。
高速で接近するグフビーストが爪で砲台を斬り裂く。
「しまっ!?」
溜めたエネルギーが行き場を失い暴走をする。このままでは爆発に自分も巻き込まれてしまう。咄嗟にマミはガンダムレオパルド・フィナーレをこの場から離脱させる。
数秒後に大規模な爆発が引き起こった。
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プラネテューヌ親衛隊
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プラネテューヌ親衛隊
2018/04/21/20:22
「グフビースト……真矢さん。いつの間に……!」
空中で姿勢を整え、新たに現れた敵を睨む。ここにはいない筈のグフビーストの姿があった。ガンダムレオパルド・フィナーレと同じく空中を滞在している。
「そんなバカスカと砲撃してたら、気になって近寄るだろ」
「……っ! まさか、さっきの砲撃音で……!?」
視線を真下にいるドムキャノンに向ける。
「そうだよ。騒ぎを聞きつければ誰か来てくれるかと思ってね。だから挑発して大技を撃たせるように仕向けたんだよ……まさか真矢ちゃんが来てくれると思わなかったけどね」
「……私はまんまとはめられたようですね」
自分が相手の手のひらの上で踊らされたと知り。マミは唇を強く噛んだ。
「さて、これでチェックメイトにさせてもらうよ!」
真愛は最後の攻撃に移る。ドムキャノンの4つの砲身がガンダムレオパルド・フィナーレに向けられる。
この一撃で葬れるように砲身に最大までエネルギーを充填していく。
「悪いですけど、大人しくやられたりはしませんよ。ここは1度引かせてもらいますよ」
「させるかよっ!」
逃げようとするマミ。しかし、真矢は先回りして逃げようとするガンダムレオパルド・フィナーレを蹴飛ばした。
「きゃあっ!」
グフビーストの蹴りを受けて仰け反る。空中で姿勢が保てなくなってまっ逆さまに落ちていく。
そして、そこには充填が終わったドムキャノンがいる。
「じゃあね」
「っ!?」
放たれた4つの奔流にガンダムレオパルド・フィナーレが飲み込まれていった。
◇
「はあっ!」
ソードビットを操り。RギャギャSカスタムに攻撃を加える。さやかは両肩のシールドで身を守る。
「ん、あれは……」
相手の攻撃を防いでいる最中。さやかはモニタに上空へと昇っていく奔流を目にする。
「あの色……うちのチームのじゃない。てことは桜翠の誰かか」
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プラネテューヌ親衛隊
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プラネテューヌ親衛隊
2018/04/21/20:22
目に移る特大の奔流。それは味方のものではないとすぐにわかった。
もしかしたら、あの攻撃で仲間が1人やられた。そんな嫌な予感を感じてしまう。
「いやいや、まさか……」
頭を振って嫌な考えを吹き飛ばす。そして仲間へと連絡を入れた。
「杏子。そっちはどうなってんの?」
先ずは杏子に連絡を取った。しかし反応がない。
「何やってんの。あいつ……。まさか、ね……」
不安が一気に募る。試しにほむらとマミに通信を送ったが彼女達からも反応がなかった……。
「……マジかよ」
いよいよ嫌な予感が現実を帯びてきた。仲間からの通信が返ってこない。それはつまり自分以外負けたという事を意味する。
「ボーッとしてどうしたのよ?」
アーシェが声をかけた。攻撃の途中でRギャギャ・Sカスタムの動きがおかしく見えたから、気になったのだ。
そのまま攻撃しても良かったのだが、アーシェはその性格上。棒立ちの相手を攻撃する事は出来なかった。ましてや、さやかは自分の弟子なのだから師匠として、何か声をかけなければならないと感じた。
「あ、いえ……その。皆、やられたみたいなんですよ」
「……そう」
アーシェは短く返す。なんとなくそんな気がしていた。いくら対策をしていたとはいえ、幾つもの戦いを制してきた桜翠学園がそう易々と負けはしなかった。
マミの想いもわかるが、こっちも優勝校のプライドと意地がある。ここで負ける訳にはいかない。
「……で、あなたはどうするの?」
「え?」
アーシェの問いにさやかは目を丸くする。
「どうするって?」
「決まってるでしょ。このまま戦うかって事よ」
「そ、それは……」
さやかは戸惑っている。それもそうだ。残っているのは自分1人……このまま抵抗しても他の仲間が来たら勝ち目はないのだから。
「あなたはそれでいいの。マミは……先輩達の為に優勝しようって気迫でこの大会に挑んだのに、諦めるの?」
「し、仕方ないじゃありませんか、だって……こんな状況じゃ。戦っても勝ち目はないですよ……」
明らかな戦意喪失の発言。さやかには戦う意志が感じられない……。
それを聞いてアーシェは深い溜め息を吐いた。そして、眉を吊り上げてさやかを睨む。
「しっかりしなさいっ!」
「うわっ!?」
アーシェに怒鳴られ、さやかの心臓はビクン、と跳ねた。
「マミはあらゆる手を使って勝とうとしたんでしょ。なら……彼女が最後の1人となったとしても、諦めずに立ち向かって来たでしょうね。それこそ、自分1人で私達を倒すつもりでね……。あなたにはそんな度胸がないのかしら?」
「……あ」
アーシェの言葉を聞いてさやかは思い出した。それは大会が始まる1ヶ月前の事。
◇
「皆、話があるんだけど……」
部室でマミが全員を一瞥して口を開いた。そこには今、大会に出ていない鹿目まどかの姿もある。
「どうしたよ。改まって?」
椅子に腰かける。杏子がお菓子を一口頬張って首を傾げる。
「ええ、大会について……もう一度話そうと思ってね」
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プラネテューヌ親衛隊
2018/04/21/20:22
「今更ですね。他のチームのデータを収集し、対策を頭に叩き込んだ私達に……これ以上何を話す必要があると?」
自分のガンプラをカスタマイズしているほむらが言う。
「そうね。万全の対策をしたと思ってるわ。でもね……それでも一筋縄じゃいかない相手もいるわ。桜翠学園とかね」
桜翡学園は自分の悲願を達成させるには最も大きな障害となる存在。対策を練ったとしても簡単に勝てる相手ではないとマミも思っている。
自分の手に視線を落とし、強く力を込めた。ここから先が……マミの皆に伝えたかった言葉。顔を上げて皆に真剣な表情で向き直る。
「桜翠は簡単に勝てる相手じゃない。もしかしたら……追い詰められて1人になってしまうかもしれない。それでも忘れないでほしい……戦う事を……」
マミは自分の胸に握った手を押し当てる。
「最後まで諦めなければ……必ず勝機はあると思うから、絶望的な状況でも諦めないでほしい。かつての先輩達がそうであったように……」
マミの言葉に場が静まった。場の空気が凍りついたのではなく、全員真剣に彼女の話に耳を傾けていた。
彼女が先輩達に勝利を捧げる為にいままで頑張って来た事を皆知っている。彼女の胸に宿る闘志が全員に伝わった。
「あはは、そうですね。卒業してった先輩達にあたし達が優勝する姿を見せてやりましょうよ!」
1番最初に口を開いたのはさやかだった。
「そうすれば、少しは浮かばれますよ。その為なら……あたしは例え最後になったとしても全員倒す覚悟で挑みますよ」
「ふふ、頼りにしてるわよ」
「つってもなぁ。あたしら先輩の顔知らないし。あまり乗り気にならねえんだよな」
「右に同じく……」
「も、もう話の腰を折っちゃダメだよ2人ともぉ〜」
「そうだそうだ。謝れ〜!」
余計な事を言った杏子とほむらに文句を言うさやか。
その後。色々と騒いでいたがさやかは思い出した。
マミに最後まで諦めずに戦うと……。そう約束していたのに忘れていた自分に恥じる。だが、もう忘れるつもりはなかった。
◇
「あたし……バカだ。肝心な事を忘れてた」
吐息を漏らし、自分の顔を叩く。弱気な自分を吹き飛ばした……。再び操縦レバーを強く握りしめた。
「アーシェさん。ありがとうございますっ! おかげで大切な事を思い出せました!」
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2018/04/21/20:23
「別にお礼なんていいわよ。戦う相手が、そんな暗い顔をしてたらこっちまでやる気が下がっちゃうから言ったまでよ」
口ではそう言ったが、さやかが元気を取り戻して嬉しいアーシェ。その証拠に彼女の口元が緩んでいる。
「そうですか、んじゃ……気にしないでおきます」
「ええ、そうしておきなさい」
「じゃあ……再戦といきましょうかっ!」
「ええ!」
2人の戦いが再び開始された。Rギャギャ・Sカスタムのシールドが開き、内部のビーム砲から粒子の奔流を撃ち出し辺り一面を焼き払った。
「はあっ!」
アーシェは跳躍して回避。空中でアーシェクアンタを前進させ、すれ違い様にシールドを繋ぐアームをGNソードで両断する。ドスン、と音を鳴らして地面にめり込んだ。
「くっ! このっ!」
Rギャギャ・Sカスタムはバスターソードを振り回して反撃。しかしその一撃は空を切る。
アーシェクアンタが、その一撃を紙一重で回避し、その反動を利用して剣を振るい。Rギャギャ・Sカスタムの右腕を斬り裂く。
「うわっ!」
さやかは目を見開く。
バスターソードを握った右腕が落ちた。これで戦力が大きく落ちたが彼女は諦めなかった。
「ぬおおおおおおっ!」
叫びを上げ。Rギャギャ・Sカスタムが左拳を握ってアーシェクアンタの顔を殴る。
「きゃっ!」
アーシェが小さな悲鳴を上げる。衝撃を受けてアーシェクアンタの頭部が損傷。Rギャギャ・Sカスタムが地面に落ちてるバスターソードの柄を握った。
「おらぁっ!」
「っ!?」
Rギャギャ・Sカスタムがバスターソードを振り上げる。ナックルのダメージを負ったアーシェクアンタは、空中で姿勢制御して後退する。
刃が胸部分を掠め、薄い傷跡を残す。
「オラオラオラオラオラっ!」
Rギャギャ・Sカスタムがバスターソードを振り回しながら迫る。
アーシェは眉間に皺を寄せて攻撃1つ1つを対処していった。
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プラネテューヌ親衛隊
2018/04/21/20:23
「……」
激しい猛攻。アーシェは静かに反撃の時を待つ。
「どうしたんですか、まさか……手も足も出ないって訳じゃないですよねっ!」
「そんな訳がないでしょっ!」
振り下ろされた一刀。アーシェクアンタは剣の側面を叩いて軌道を逸らした。
「んなっ!」
攻撃を捌かれ、さやかは汗を垂らす。刃が地面に深々と突き刺さる。
「近接攻撃をする時は、相手からの捌きに注意しろって言ったでしょ!!」
アーシェクアンタがGNソードを突き出した。切っ先がRギャギャ・Sカスタムの頭部を貫く。モノアイが砕かれ、貫かれた箇所から電流がバチバチと弾ける。
「くっ……うおおおおっ!」
さやかは抵抗する。Rギャギャ・Sカスタムがアーシェクアンタを蹴りを叩き込む。その衝撃で頭部から剣が抜ける。
「ぐふっ!」
「てやぁっ!」
仰け反ったアーシェクアンタに更に肩から突進して吹き飛ばす。アーシェクアンタは背中から地面に倒れ込んだ。
「マミさん達の為にも負けられない……これで」
地面からバスターソードを引き抜き、Rギャギャ・Sカスタムはスラスターを噴かして大きく上昇する。
「トドメだあああああっ!!!!!!!!」
少しした所で停止し、急降下してくる。落下の速度と重量を乗せた一撃がやって来る。
さやかはこれで決着をつけるのだとアーシェは直感した。マミ達の為に負けられない……そう口にして。
だが、同時にアーシェもさやかに負けないくらい。負けたくないという気持ちを胸に秘めていた。当然、この攻撃を受けたらタダでは済まないとわかっている。みすみす受けようとは思ってもいない。
そんなことをしたら、全力で挑んで来ているさやかに失礼だ。だから、アーシェもその気持ちに応えようとする。
「……トランザム!」
アーシェがその言葉を口にする。アーシェクアンタが赤い輝きを放ち。その場から姿を消した。
「えっ!?」
突然の事でさやかは目を丸くして驚愕する。先程までアーシェクアンタがいた場所にバスターソードの刃が突き刺さる。
「ど、どこに……」
「こっちよ!」
「っ!?」
周囲を見回してアーシェクアンタを探すさやか。
アーシェの声が耳に届く。振り向くとそこにアーシェクアンタの姿が……攻撃が炸裂した瞬間。トランザムを発動して瞬時に背後へ回っていたのだ。
「はああああっ!!!!」
高速で接近して一刀を振り下ろす。その一撃はRギャギャ・Sカスタムの上半身を斬り落とす。
Rギャギャ・Sカスタムが地面に崩れる。それと同時にファイト終了のコールが鳴り響いた。
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プラネテューヌ親衛隊
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プラネテューヌ親衛隊
2018/04/21/20:23
◇
ファイト終了後。さやかは薄暗いシュミレーター内部でうずくまっていた。
自分が負けたせいでマミの悲願が叶わなくなってしまった。仲間に合わせる顔がないと自分自身を責めて塞ぎ混んでいる。
「あたしって、本当。バカだ………」
「ああ、本当にね」
シュミレーターの扉が開かれ、杏子が中に入ってきた。さやかはビクン、と肩を揺らし。顔を上げる。
「……杏子」
「いつまでメソメソしてんの。ほら、行くよ」
杏子が手を差し伸べてくる。だが、さやかはその手を取ろうとはしない。
「いいよ。あたしはここにいる……」
「バカ。次やるチームの邪魔になんだろ。ほら、さっさと来いっ!」
「あぁっ! や、やめてってば!」
有無を言わさず杏子はさやかを引き摺り出していく。外へ出るとマミとほむらが彼女達を待っていた。
「……美樹さん」
「マ、マミさん……えっと、いたぁっ!?」
何かを言おうとしたさやか。しかし、突然ほむらが詰め寄ってきて彼女の頭にチョップを叩き込む。
「な、なにすんのよぉ!」
頭を押さえるさやかが睨む。ほむらは肩を竦め、溜め息を吐いた。
「あなたの事だから、負けて責任感じてたんでしょう。違う?」
「うっ……」
本心を見抜かれてさやかは言葉に詰まる。
「だろうと思ったわ。巴さん……彼女に何か言ってください」
「そうね」
マミはさやかに近寄り。その手を自身の手で優しく包み込んだ。
「美樹さん。私は、あなたが負けた事をとやかく言うつもりはないわ」
「え、でも……。あたし……先輩達に優勝を捧げるってマミさんの悲願を台無しにしちゃいましたよ」
「ここで負けたのなら、私達はまだまだって事よ……。悔しいけれど更に鍛練を積んで強くなればいい。2人もそう思うでしょ?」
諭すようにマミが言う。次にその視線は、杏子とほむらに向けられた。
「まあ、確かにそうだな。負けたらそれをバネにして強くなればいいし。あたしは負けっぱなしは嫌だからね。それにあんたのあんな戦いを見せられたらねぇ……こっちも負けてらんないって気になっちまったよ」
「え?」
杏子の言葉にさやかは目を丸くした。
「悔しいけど……諦めないで相手に立ち向かうあなたの姿が、かっこいいと思ってしまったわ。誰も……あなたのあの戦いを見て、あなたを責める人はいない」
「ほ、ほむら……」
珍しく自分を誉める発言をほむらがしてくれた。さやかは少し泣きそうになる。
「ねえ、美樹さん。これでわかったでしょ。誰もあなたを責めたりしないって……。だから機嫌を直して、皆あなたには笑顔でいてほしいのよ。きっとあの子もそう思ってるわ」
「……はい!」
皆の思いを聞いてさやかは立ち直った。満面な笑顔を向けると全員、安心して微笑む。
「ごめん。心配かけて……」
「本当にね。あんたは能天気なのがお似合いなんだから、変に悩まない方がいいんだよ」
「ひっでぇ! あたしだって悩む事だってあるっての!」
「それは初耳ね。あなたに悩むという言葉が脳みそにあるとは思わなかったわ」
「んだとチクショー!」
ほむらに馬鹿にされ、さやかは腕をブンブンと振り回しながらほむらを追いかけ回した。そんな2人のやり取りを見ていてマミは元のさやかに戻って安心する。
「ほら、ふざけてないで桜翠学園の人達とファイト終了の挨拶に行くわよ!」
手を鳴らし。マミは仲間達に伝える。
彼女達は桜翠学園がいる場所まで歩いてお互いの健闘を讃えて握手を交わした。これで見滝原中の今年の全国大会はここで幕を引くのだった。
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