超次元ゲイムネプテューヌ 復活のMギョウ界墓場大戦争
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プラネテューヌ親衛隊
2018/09/15/18:33
ーーーゲイムギョウ界。
それは地球とは別次元に存在する異世界。
プラネテューヌ。ラステイション。ルウィー。リーンボックスの四つの国からなるその世界は、それぞれの国を治める四人の女神によって均衡に保たれていた。
これまでにゲイムギョウ界は度重なる驚異に晒されたが女神達が互いに手を取り合い守ってきた。そしてまた……新たな驚異が迫ろうとしている。
[SC-02J]
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2019/01/13/21:20
犯罪神の怒涛の攻撃。
ヴェルデは確実に防いでいく。
『先程の威勢はどうした? 手も足も出ないのか!』
防戦一方のヴェルデを嘲笑う犯罪神。
口ほどにもない……そう思って渾身の一撃を繰り出そうと、大鎌を高く掲げたが。
『うおっ!』
突然、真横から突風が吹いた。
風に煽られて犯罪神は体勢を崩してしまう。
「せいっ!」
即座にヴェルデが犯罪神の脇腹に回し蹴り、続いて肘内で顔面を叩く。
『ぐえっ!』
立て続けに二回も強烈な攻撃を受けて犯罪神は後ずさる。
血走った目でヴェルデを睨む。
彼女は右手でくいくいっとジェスチャーする。
それは明らかに挑発だった。
『貴様っ!』
怒りの形相の犯罪神が高速で接近して、真横から大鎌を薙ぎ払う。
しかし、ヴェルデは犯罪神を大きく飛び越えた。
『なめるなっ!』
即座に背後へ攻撃。
ヴェルデは大きく後方へ飛んで回避。
『馬鹿め!』
犯罪神が笑った。
ヴェルデの着地の瞬間をチャンスと睨んだのだ。
左手を前に突きだし、暗黒エネルギーを撃つ。
「はあっ!」
着地の瞬間、ヴェルデは周囲に風を巻き起こして暗黒エネルギーの軌道を逸らした。
『なんだと!』
犯罪神が目を見開く。
彼女が唖然としている隙にヴェルデは懐に飛び込み、二連続で斬撃を浴びせる。
『ぐあああっ!』
大ダメージを受けて更に犯罪神は頭に血が上る。
『調子に乗るなっ!』
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2019/01/13/21:20
犯罪神が怒りの反撃に出る。
真下から大きく大鎌を振るう。
ヴェルデはリーンブレイドで防いだが、弾かれて手から放り出されてしまった。
『はははっ! これで強力な攻撃はできまい!』
ヴェルデの武器を弾き飛ばしたのをいいことに、大鎌を振り回してヴェルデを追い詰める。
だが、ヴェルデは軽い身のこなしで回避していく。
『私に傷をつけた罰だ。貴様はベールへの見せしめとしてバラバラにしてやる!』
「随分とお喋りだね。後ろに注意をした方がいいよ」
『何っーーー』
ヴェルデの言葉の意味が気になった犯罪神が振り向いた時だ。
『ぐあああっ!?』
何かが犯罪神の両腕に傷をつける。
激痛が走り、持っていた大鎌を落とした。
『あ、あれは……』
犯罪神は目にした。
弾き飛ばした筈のリーンブレイドが高速回転をしながら空中を旋回していた。
やがて、リーンブレイドはヴェルデの手に戻っていく。
『何故、その剣が……!』
「このリーンボックスは、ボクの意思で遠隔操作出来るんだ。手を離れたとしても無意味だよ」
ゲートを移動中にネクストホワイトから、リーンブレイドの説明を受けていた。
ヴェルデはリーンブレイドを遠隔操作して犯罪神にダメージを与えた。
『お、おのれぇ……!』
犯罪神は吠える。
全身から暗黒エネルギーが放出された。
「はあっ!」
ヴェルデはリーンブレイドを投擲。
リーンブレイドが高速回転を始め、遠隔操作で暗黒エネルギーを切り裂いた。
「フロストスマッシュ!」
大きく跳躍し、ヴェルデは冷気を纏った右足を突きだしながら犯罪神に向けて急降下していく。
『ぐうっ!!』
犯罪神は両腕でガード。
しかし、衝撃で傷に応える。
大きく後ろによろめいた。
「こいつでトドメだ!」
魔法で氷の槍を形成、更に風の魔法で槍を高速回転させる。
それは、ネクストホワイト戦で不発に終わった風と氷の複合魔法だ。
「スパイラルランス!」
氷の槍スパイラルランスが勢いよく発射された。
『うおおおおおおっ!!!!!』
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2019/01/14/12:39
犯罪神は暗黒エネルギーの盾を複数形成し、重ねて強固なシールドを展開する。
だが、それも無意味だった。
スパイラルランスの威力は犯罪神の予想を凌駕していた。
容易く何層の壁を貫通し、犯罪神に到達する。
『ギャアアアアアーーーーっ!!!』
槍と一緒に犯罪神が飛んでいく。
そのまま後方の壁に激突し、衝撃で岩が崩れ落ちて下敷きとなる。
「やった! あの女神様めちゃくちゃ強いよ!」
「ええ、中々のものだわ」
ヴェルデの戦いを見ていた日本一は興奮気味に言う。
アイエフは勝利を確信した。
「はぁ……これでーーー」
終わった。
そう思っていたヴェルデの考えを裏切るように、ギョウ界墓場全域が大きく揺れる。
「な、なんだ?」
「ヴェルデ、油断するな! あいつはまだ生きてるぞ!」
「え!」
ヴェルデは犯罪神が埋もれた瓦礫の山を見つめる。
ネクストホワイトの言葉通り、暗黒エネルギーが隙間から滲み出ていた。
『うおおおおおっ!』
犯罪神が雄叫びを上げて瓦礫の中から復活する。
『おのれ、おのれおのれおのれおのれーーー! 犯罪神である私をよくも愚弄してくれたな! こうなったら、最終手段を使ってやる!』
犯罪神のプライドはズタズタに引き裂かれていた。
得体の知れない小娘に、それも女神候補生に負けるなんて死んでも嫌だ。
暗黒エネルギーが地面に広がり、犯罪神の身体を包み込む。
やがて巨大化していき、様々なモンスターがそのまま合体した醜悪な化物が姿を現す。
『はっはっはっは! どうだ! この地に眠る女神に葬られたモンスターどもの怨念と一体化した姿だ!』
「趣味が悪いよ!」
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プラネテューヌ親衛隊
2019/01/14/18:54
リーンブレイドを操作して変化した犯罪神に攻撃する。
『効かぬわっ!』
犯罪神の皮膚はリーンブレイドを弾いた。
胸のエンシェントドラゴンの口が開き、炎が吐き出された。
「うわっ!」
ヴェルデだけでなく、他の者も広範囲の炎から退避した。
更に左腕に生えた尻尾を鞭のようにしならせて振り回す。
「ぐあっ!」
着地の瞬間を狙われ、鞭がヴェルデに直撃する。
そのまま転倒したヴェルデを、犯罪神は右手を伸ばして捕まえた。
『はっはっはっ! 捕まえたぞぉ。このまま潰してやる!!!』
「うああああああっ!」
右手に力を込めてヴェルデを締め付ける。
ヴェルデの苦しむ顔が犯罪神には、堪らなく愉快に見えた。
『もっと苦しめ! もっともっとだっ!』
「ぐう……ううっ!」
犯罪神は更に力を強める。
締め付ける強さが増して、ヴェルデを追い詰める。
このまま握り潰されるのだろうか……。
『ぐおっ!』
そんな筈はなかった。
犯罪神の顔が爆発する。
右手から解放され、ヴェルデは地面に着地した。
『な、何だ!?』
「私達の事を忘れてもらっては困るわ!」
ネクストブラックが懐に飛び込み、高速の乱舞で犯罪神を切り刻む。
『ぐあああっ!!!』
「ユニ、今よ!」
「OK!」
ネクストブラックの合図でブラックシスターが砲撃する。
最大出力のエネルギーが犯罪神に直撃した。
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2019/01/14/18:55
『お、おのれぇ!』
左腕の鞭で反撃するが、既に二人はそこにいなかった。
攻撃を回避してネクストブラックとブラックシスターは攻撃を続ける。
「あたし達も行くわよ!」
「やっるぞぉーーー!」
アイリスハート、イエローハートも攻撃に参加して攻撃の激しさが増す。
『ええい、目障りだっ! やれ、お前ら!』
犯罪神は下僕を召喚した。
数を増やして女神達の攻撃を阻止しようと試みる。
「させないわ!」
ネクストパープルが太刀を振るう。
斬撃が一直線に通過していき、下僕を消し去る。
「ネプギア!」
「準備出来てるよ!」
ネクストパープルの背後には、エネルギーをチャージし終えたパープルシスターの姿が、地面から排出し続ける下僕に向けてトリガーを押し込む。
「M.P.B.L(マルチプルビームランチャー)発射っ!!」
膨大なエネルギーの奔流が一瞬で下僕を消し炭にする。
「おらおらおらおらぁ!」
「行くよ、ラムちゃん」
「うん!」
ネクストホワイトが斧で薙ぎ倒し、ホワイトシスター達が魔法で下僕を凍りつけにする。
「雑魚の相手は私達に」
「任せるです!」
「頑張っちゃうよ!」
アイエフ、こんぱ、大人ネプテューヌも加わる。
「女神様達だけに負担をかけさせるな! 我々も行くぞっ!」
「「おおっ!」」
「ふふ、軍隊の人達も燃えてるわね。あたし達も負けてられないわね!」
「オイラ達のイジモ、ミセテヤルッチュ!」
四カ国の軍隊、更にアノネデスとワレチューキングさえも参加して、大乱闘に発展していく。
『ば、馬鹿なっ!』
下僕が意味を成さない事に犯罪神は驚愕する。
もう、自分以外に頼れる存在はいないのだと突きつけられる。
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プラネテューヌ親衛隊
2019/01/16/05:15
味方も敵も一つとなり、強大な敵へと立ち向かっている。
しかも、そのコンビネーションは見事なものだ。
あの犯罪神が追い込まれている。
「みんな、凄い連携だ」
「……ヴェル」
仲間達に救出されたヴェルデは体勢を整えていた。
その背中に声がかけられる。
振り向くと、ケイブとマイクロ、MEIGS‘、下っ端の四人がいた。
「……ケイブ。あ、あの……」
十三年ぶりの幼馴染みとの再会にヴェルデは戸惑った。
何も言わずにリーンボックスタワーに忍び込んだ事を後悔していた。
どう謝ろうと悩んでいるとケイブが隣まで歩いてくる。
「聞いてないわよ、あなたが女神候補生だったなんて……」
「あぁ……えっと、実はボクも聞いたばっかり……」
ヴェルデは目を泳がせる。
ケイブは深い溜め息を吐いた。
「色々、聞きたい事はあるけれど……今はいい、目の前の戦いに集中したいから……」
「……ケイブ」
「ヴェル、あの頃のように一緒に戦ってくれる?」
ケイブの質問にヴェルデは口角を上げた。
「ああ、もちろんだよ、君は今も昔もボクのパートナーだ、そこは変わらない」
「……ありがとう」
ケイブは一瞬だけ微笑み、すぐに戦士の表情へ戻して拳銃を引き抜いた。
「やれやれ、戦闘中にイチャイチャするな」
「あはは、君は相変わらずだなMEIGS‘、焼きもちかい?」
「違うわ……でも、お前のその態度を見てたら、安心したぞ」
MEIGS‘はそう言って苦笑した。
「あ、あの……」
「君は……」
続いてマイクロ、ヴェルデと会ったのは昔の事だから彼女は覚えてない。
だから、名前を名乗ろうとしたが……。
「ひょっとして、前にボクが助けた女の子?」
「え、あ、はい! 覚えていてくれたんですか!」
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プラネテューヌ親衛隊
2019/01/16/05:15
「当たり前だよ、ボクは助けた人の事は全員覚えてるんだ、その格好……軍隊に入ったんだね」
「……」
ヴェルデはマイクロの事を覚えていた。
マイクロはそれが嬉しかった……伝えたい思いが山程あったが、ヴェルデの言葉で全て吹き飛んでしまった。
両目から涙がこぼれる。
「なんで泣くの! ボク何かした……!?」
何か失礼な発言をしてしまったかと、ヴェルデは汗を垂らす。
「いえ、覚えていてくれて嬉しかったです……。自分、マイクロって言います。あの時のお礼が言いたくて、ずっとあなたを探してました。助けていただき、ありがとうございます!」
「……そっか」
涙を拭い、マイクロはやっとお礼の言葉を言えた。
ヴェルデは素直にその言葉を受けとる。
自分が助けた命が、軍人となって立派に成長していた。
何だか、ちょっと恥ずかしいとヴェルデはこめかみを掻く。
「よう」
次に声をかけてきたのは、下っ端だった。
「君は知らないな、誰だい?」
「アタイはリンダ、犯罪組織の幹部……マジック様を崇拝する者だ」
「……」
犯罪組織の幹部、そしてマジック・ザ・ハードを崇拝していると聞いて、ヴェルデは目を丸くした。
「驚いたな、どうりで知らない訳だよ……ボクに何か用かい?」
「頼む、マジック様を助けてくれ!」
下っ端は深々と頭を下げる。
「あの人は……犯罪神に無理矢理身体を乗っ取られてるんだ」
「ああ、聞いてるよ」
マジック・ザ・ハードが身体を乗っ取られた。
これも向かう途中で聞いている。
ヴェルデにとって、マジック・ザ・ハードは姉を倒した憎むべき相手だが、首を前に倒した。
「いいよ、任せて」
「ほ、本当か!」
下っ端の表情がパッと明るくなる。
「即答ね、あなたらしいわ」
「いつも言ってるだろ、ボクはハッピーエンドが好きなんだ。ラブ&ピース。それがボクのモットー」
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プラネテューヌ親衛隊
2019/01/16/05:15
「はっ……何だそれ、何が愛と平和だよ」
と、馬鹿にしたように笑う下っ端だが、とても嬉しそうに見える。
理由はどうであれ、マジック・ザ・ハードを救ってくれるのだから嬉しいのだろう。
それが表情から伝わって、四人は微笑む。
「ところで、どうやって救うんだ?」
ふと、MEIGS‘が救う手段があるのかを聞くと、ヴェルデは得意気に笑った。
「それはこれから考える!」
その発言に全員がずっこけた。
「考えてなかったのかよ! 本当に大丈夫だろうな……」
「そういえば、うちの部隊っていつもこんな感じだったわね……」
下っ端とケイブは急に不安になってきた。
「あの、ヴェルデさんも女神なら、ネプテューヌ様と同じ事が出来るんじゃないでしょうか……」
「ネプテューヌ様と? それってどんな?」
ヴェルデは首を傾げた。
「次元一閃、刃にシェアエナジーを送り込んで繰り出すネクストパープルの一撃だ。使いようによっては、身体を傷つけずに相手の内にある邪悪な力を滅する事が出来る技だ」
「なるほど、確かにそれなら可能かも……でも、問題がある」
「問題……何かあるの?」
「それをやるには女神化する必要があるよね」
「ええ、そうよ」
「女神化ってどうやるの?」
「「「は?」」」
三人とも、同時に声を出した。
「いや、だから女神化のやり方だよ」
「女神じゃない私達が知るわけないだろ、逆に聞くが何で知らないんだ?」
「師匠が教えてくれなかったから……」
「ブラン様……」
ケイブは頭を押さえた。
ここに来て大問題が発生してしまった。
「困りましたね……女神化出来ないんじゃ、シェアエナジーを操るのは無理ですよ」
「ああ、くそ! どうにかならないのかよ、お前らお得意の絆の力とやらでっ!」
「お前無茶を……」
「それだ!」
ヴェルデが何かを閃いた。
三人が彼女を見る。
「女神はシェアエナジーが力の源……よくよく考えたらボクにはこっちに居なかったから足りないんだ。だから、女神化できないんだ」
「あ、そうか……ヴェルデさんは、いままで超次元に居なかったから」
「そう思うと……少ないシェアで犯罪神ボコボコにしたレベルだ。フルパワーになったらどんなになるんだ……」
「おいおい、暴走しないだろうな……」
下っ端は暴走を恐れるが、ヴェルデは首を横に振る。
「大丈夫、君達の想いで変身するんだ。暴走なんてしないよっ」
ヴェルデが満面な笑顔で言う。
連れて三人も笑顔となった。
「よくもまあ、そんなことを敵がいる目の前で言えるな」
「裏切る気?」
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2019/01/16/05:15
マイクロがジト目を向ける。
「馬鹿か、こんな状況で裏切る理由があるかよ」
「じゃあ、満場一致という事でいいな。早速ヴェルデにシェアエナジーを送るぞ」
「皆、ヴェルを囲んで」
四人は手を繋いで輪になる。
その中央にはヴェルデが立っている。
「始めるわよ」
「うん、いつでもOKだ」
ヴェルデは瞼を閉じて意識を集中する。
ほかの四人も瞼を閉じて、各々の想いをヴェルデに向けて流し込む。
(……暖かい)
ヴェルデは胸が暖かくなるのを感じた。
それは、ロムとラムが暴走を静めた時と同じだった。
(そっか、これが人の想い……シェアエナジーなんだ)
四人の想いがシェアとなって流れてくるのを感じる。
けれど、四人とは別の想いが次々と流れてくるのも感じた。
◇
「ヴェルデ……グリーンシスターだって! ようやくベール様に妹がっ!」
「しかも、滅茶苦茶可愛いぞ!」
「馬鹿……お前、こんな時に何を言ってるんだ」
「いいだろ、本当の事なんだからよ。それに、これだって女神様にはシェアになって送られるんだ。ばちは当たらねえよ」
「そうだそうだ! ヴェルデちゃあああん!」
「ったく、あんたら男子は……」
「お願い! この世界を救って!!」
「頼む! ベール様の仇を取ってくれ!」
「いや、多分死んでないよ!」
「頑張れ! 女神様っ! 私達がついてるぞ!」
「そうだ、俺達の想いで女神様が強くなるなら、ありったけの想いを送るぜ!」
「ああ、暗い気持ちになってばっかじゃ……リーンボックスの国民の名が泣くぜ!」
その想いの正体は、ゲイムギョウ界に住む人々の想いだった。
絶望を与える為に映し出されたスクリーンが、ヴェルデの登場で逆に希望を与えてしまうというミスが起きているのを、犯罪神は全く気づいていなかった。
多くの想いが、次元を飛び越えてヴェルデに送られていく。
「皆の想いが流れてくる……ベール様はこの想いを背負って戦っていたのか、なら、ボクもこの想い背負う! あの人のようにっ!!」
ギョウ界墓場に強烈な光の柱が昇った。
それは天空をも貫き、暗雲を消し去る。
全員が光の柱に注目した。
『な、何だ!?』
女神達の相手をしていた犯罪神が恐ろしく強いシェアエナジーを全身で感じた。
四人の中央で昇っている光の柱がやがて消滅し、代わりにそこには見知らぬ少女が立っていた。
黒と緑を基調とした身体にフィットするレオタードに身を包み、二つ括りにした深緑の髪が風で靡く。
「やったわね、ヴェル」
「ああ、皆のおかげだ」
ヴェルデが……グリーンシスターが頷く。
彼女は女神化に成功した。
「それ、お前のだったんだな」
グリーンシスターのプロセッサユニットは、MEIGS‘が製作した物だった。
「私が作ったんだ、壊すなよ?」
「わかってる。君がせっかく作ったんだ。そんな恩を仇で返す事はしないよ」
「ヴェルデ!」
ネクストホワイトが他の女神と一緒にやって来る。
「やったな、女神化出来たじゃねえか!」
「ベールが見たら、きっと喜ぶわ」
「はい。でも、その前にーーー」
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プラネテューヌ親衛隊
2019/01/16/22:14
グリーンシスターは倒すべき敵を見上げる。
睨まれた犯罪神は生唾を飲み下した。
「最後はヴェルちゃん、あなたが決めなさい」
「ボクが?」
問い返すとネクストパープルは静かに首肯した。
他の仲間も全員、同じように首を縦に振る。
ゲイムギョウ界の未来を、この若き女神候補生に託したのだ。
「わかりました!」
意思を受けとるように、グリーンシスターは強く言った。
「皆、彼女に力を……」
守護女神、女神候補生達がグリーンシスターにシェアエナジーを注ぐ。
沸き上がる力と共にリーンブレイドにも変化が現れた。
「……これは」
二つの剣が連結し、一つの剣となる。
グリーンシスターは生まれ変わったリーンブレイドを手に握った。
「それはわたし達の想いを乗せたあなたの新しい武器よ、それで彼女を解放してあげて」
「ありがとうございます!」
リーンブレイドを構え、シェアエナジーを注入すると刃が強烈な光を放ち始めた。
『ま、まずい! 止めねばっ!』
妨害しようと犯罪神は身体から触手を伸ばす。
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プラネテューヌ親衛隊
2019/01/16/22:14
「やあっ!」
「はあっ!」
だが、触手は女神候補生やその他の仲間達の手で葬られた。
「今だよ、ヴェルちゃん!」
パープルシスターが叫ぶ。
「ありがとう、みんな!」
「「「ゲイムギョウ界を救え、グリーンシスター・ヴェルデ!」」」
「はい!」
守護女神に背中を押され、グリーンシスターが翼を広げて一直線に飛翔する。
「うおおおおおっ!」
『く、来るな!』
再度触手で攻撃を行うが、無駄な抵抗だった。
女神となり、翼を得たグリーンシスターの動きを捉えられない。
「終わりだぁあああ!」
『う、うわあああああっ!』
グリーンシスターは瞬く間に犯罪神の本体部分に到達する。
光の剣を犯罪神の胸へと突き立てた。
『ごは、あぐぅ……おのれ、またしても女神に……これで勝ったと思うなよ、私は何度でも甦ってやるぞ……!』
「その時が来たら、またボク達がお前の野望を砕いてやる! だから忘れるな……これは女神や女神候補生、この世界に住む人達の光だぁあああ!!!」
グリーンシスターはリーンブレイドを更に押し込んだ。
刀身の輝きが増していく。
『ぐああああああっ!』
犯罪神の断末魔。
傷口からシェアの光が溢れ出した。
光がギョウ界墓場全体に広がり包んでいく。
◇
「あ、れ……?」
ヴェルデは白一色の世界にいた。
女神化も解けているし、周囲をぐるりと確認したが仲間達はどこにもいない。
「ここは……どこだ?」
「ここは貴様とお前の意識の中だ」
「っ!?」
声をかけられた。
ヴェルデは振り向くと同時に構える。
上空には、一人の女性が浮かんでいた。
「犯罪神……いや、違う」
そこにいたのは犯罪神。
だが、雰囲気が違うのにヴェルデは気づく、各所のいろが変わっていたのだ。
「まさか……君がマジック?」
「……そうだ」
マジック・ザ・ハードがゆっくりと降りてきた。
「ボクと君の意識ってどういう意味?」
「お前が犯罪神を刺した時にシェアの光が出てきただろ。その中に私の意識もあった。間近にいたお前の意識と同調したのだろう」
「なるほどね」
ふむふむと、ヴェルデは納得した。
「そうなると、君は解放されたのかい?」
「ああ、おかげさまでな……物好きな奴だよ。敵である私を助けるなんてな」
「頼まれたからね、君の部下に」
「……リンダか」
「ああ、確か……そんな名前だったね」
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プラネテューヌ親衛隊
2019/01/16/22:14
ヴェルデは顎に指を触れさせる。
正直なところ、本名をあまりよく聞いてなかったから正しいか判断できない。
「まあ、いいや……とにかく戻ろう。あの子が待ってるよ」
「……」
ヴェルデは手を差し伸べる。
しかし、マジック・ザ・ハードはその手を取ろうとしない。
「何してるの?」
「私は……このまま戻っていいのだろうか……」
「え?」
ヴェルデの瞳には、マジック・ザ・ハードが泣いているように見えた。
「私はあいつを一人にしないと約束したのに……それを破ってしまった。私に……
戻る資格はない」
「そんなの……謝ればいいじゃん」
「謝る……だと」
驚いた様子でマジック・ザ・ハードが目を見開いた。
ヴェルデは右の人差し指をピンっと、立てて口を開く。
「そう、悪い事をしたら謝る。世界共通のルールだよ」
「それだけで許してもらえるだろうか……」
「わかんない……でも、やってみないとわからないだろ?」
まあ、と目を逸らしながらヴェルデは先を続ける。
「ボクも謝らないといけない人がいっぱいいるんだけどね……」
「そうなのか?」
「ああ、うん……実はーーー」
ヴェルデは、少しでも彼女が戻るきっかけになればと自分の話を始めた。
「まあ、こんな感じでして……」
「そうか……」
「つまんない話でしょ?」
「いや、少し興味深い……お前はそんな目にあっても、何故国を恨まなかった?」
マジック・ザ・ハードは隔離されて生きてきたヴェルデが、どうして女神としてリーンボックスを守る為に戦ったのか気になっていた。
「ボクも……聞かされた時は少しイラッときたよ」
「なら、何故?」
「同時にこうも考えたんだよ、みんなボクをベール様に引き合わせたくて頑張ってくれてたって……」
ヴェルデは思った。
世界を滅ぼしかねない力を持った自分を殺さなかったのはベールの為だと。
ヴェルデに真実を告げ、ベールと再会させる為に死力を尽くしてくれていたのだと。
ベールも。
チカも。
教会の人間や恐らく孤児院の人間と引き取ってくれたモーグも事情を知っていたのだろう、でなければ危険な爆弾を抱えたヴェルデを引き取ったりしない。
自分が生きてこれたのはリーンボックスの人々が手を差しのべてくれたからだ。
「ボクは……知らないところでみんなに支えられて生きてきたんだ。今度は助けてくれたみんなに恩返しがしたい。リーンボックスの国民に恥じない女神候補生になりたいって思ってるよ」
「……そうか」
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プラネテューヌ親衛隊
2019/01/16/22:14
マジック・ザ・ハードは吐息を漏らした。
「お前の周りには、沢山の人がいるのだな……羨ましいよ」
「羨ましいの?」
「ああ……やっとわかったよ。どうして私が女神と執拗に戦おうとしたのか……嫉妬だよ」
「え、嫉妬してたの……」
マジック・ザ・ハードは力なく頷いた。
「私は犯罪組織の女神として産み落とされた。人々の恐怖が私の力の源だった……けど、そんなものを得ても虚しいだけだといつしか感じるようになったんだ……お前達の周りにはいつも笑顔がある。それが羨ましかったんだ。お前を見てたら、気づいたんだ」
「そう、何か照れるね」
ヴェルデは頬を染める。
が、すぐに咳払いをして調子を戻した。
「羨ましかったか……今からでも、遅くないんじゃないかな」
「何だと?」
マジック・ザ・ハードが目を丸くした。
「君の中に感情が芽生え始めた。やり直すにはいいチャンスなんじゃない」
「やり直す……か、考えもしなかった。私に出来るだろうか……」
「出来るよ、君も女神だろ? 守るべきものがあるなら、自ずとなるものさ」
「守るべきもの……か、ふふ……」
マジック・ザ・ハードが微笑む。
彼女の頭に思い浮かぶのは下っ端、彼女だけでなくワレチューやアノネデスの顔もあった。
二人と一匹、少ないが自分を慕う者が確かにいると知りマジック・ザ・ハードの心は満たされる。
そしてヴェルデの言葉で新たな目標も出来た。
「今回は救ってくれたことに感謝しておこう。貴様の名前をもう一度聞かせろ……」
「ヴェルデだ。覚えておいてよ」
「忘れるものか……ふふ、私は根に持つタイプでな、お前の事は気に入らん」
「え、なんでっ!」
突然のカミングアウトにヴェルデは驚愕する。
「言っただろ。根に持つと……操られたとはいえ、貴様に圧倒された記憶は忘れはしない」
「……覚えてたんだ」
恨まれるなら、少し加減しておけばよかったとヴェルデは後悔する。
「今度は犯罪神の力などではなく……私自身の力で貴様と戦いたい。次に会う時まで死ぬなよ」
「うわぁ……何か嫌な相手に気に入られたよ……」
ヴェルデは汗を垂らす。
それを見たマジック・ザ・ハードは涼しい笑みを浮かべて踵を返した。
「あ、待ってよ。これからどうするかぐらいは教えてよ」
「それは……秘密だ」
マジック・ザ・ハードが不敵に笑う。
それを最後にヴェルデの視界が真っ白になっていく、意識の共有が終わりを迎えたようだ。
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プラネテューヌ親衛隊
2019/01/16/22:15
◇
意識の世界から戻ってきたヴェルデの瞳には、無表情でこちらを覗くケイブの顔が初めに映った。
「おはよう」
「おはようケイブ、ここは……?」
「ギョウ界墓場よ」
ケイブの言葉が示す通り、暗雲の空が広がっている。
ここがギョウ界墓場と告げていた。
「犯罪神はどうなったの……」
「倒したわ。覚えてないの?」
「うん、倒した瞬間に光が視界を覆って……あ、マジックはどうなったの!」
質問するとケイブは首を横に振った。
「わからない、光に包まれて元に戻ったらいなくなってた……下っ端と一緒にね」
「……そっか」
マジック・ザ・ハードがどうなったかはわからない。
けれど、ヴェルデは確信していた……彼女は生きていると。
「何か嬉しそうね」
「別に、気のせいだよ。ところで他のみんなは?」
「帰ったわ」
「え、何で!」
仲間が帰ったと聞かされてヴェルデは驚愕する。
「傷ついたベール様と兵士の治療もしないといけないし、他の女神様も色々報告する事があるから忙しいのよ」
「……そうですか」
ヴェルデは泣きそうになった。
「ケイブは何で残ったの?」
「みんなが残れって……あなたに一番会いたがってたのは私だから……」
恥ずかしそうに顔を赤くするケイブ。
「ははーん、そんなにボクに会いたかったんだ〜。相変わらず甘えん坊だね〜」
「膝枕やめようか……」
ケイブが怒る。
彼女の今のところ体勢は膝の上にヴェルデの頭を乗せていた。
「冗談だよ、冗談。堪能させてもらったしね。そろそろ退くよ」
ヴェルデは立ち上がり、背筋を伸ばす。
ケイブは立ち上がった。
「さてと……そろそろ帰ろうか」
「そうね、ゲートはこっちよ」
ケイブの案内で歩き出す。
その途中、ケイブはヴェルデに……。
「ねえ、ヴェル……」
「ん、なに?」
「帰ったら、いままでの事をもっと詳しく教えてね」
「もちろん、そっちもボクがいない間の事を教えてよね」
「……うん」
戦いは終わった。
帰るべき場所に再会を果たした二人は肩を並べて歩いていく。
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2019/01/17/18:46
その後の話をしよう。
新たな犯罪組織の陰謀は守護女神達の手によって防がれた。
ゲイムギョウ界に平和が訪れ、一人一人協力して街の修復が行われて順調に元の姿へと戻りつつある。
「……」
ヴェルデは、リーンボックスの一角にあるビルの屋上から平和になった街の様子を見下ろす。
あの戦いから数日が経過しているが、ベールとは一度も会えてない。
彼女は、未だに入院中でヴェルデ自身も改めて会おうとすると緊張してお見舞いに行けないでいた。
「はぁぁあ……」
大きな溜め息、ヴェルデもわかっていた……このままではいけないと、尊敬していた人物が自分の姉だった。
その衝撃が未だに残っていて心の整理が出来ないでいる。
このまま再会するのはいけないと、ずるずると長引いていた。
「……見つけましたわよ」
「っ!?」
背後から声をかけられてヴェルデは、驚いた表情で振り向いた。
そこには件のグリーンハートが立っていた。
「あ、あれ……入院中じゃ………」
「今日で退院ですわ」
「そ、そうですか……」
心臓がバクバク、汗もダラダラ。
突然の事態にどうしたらいいかパニックを起こしてしまう。
「あ、え、えっと……その……」
「よくぞ、ゲイムギョウ界を救いましたわね」
何かを言おうとした矢先、グリーンハートが口を開く。
「さすが……わたくしの妹ですわ」
「……あ」
妹、そう本人に呼ばれた時に全ての不安は吹き飛んだ。
目から涙が流れる……全ての考えを捨てて、ヴェルデはグリーンハートの胸に飛び込んだ。
「……姉さん。ベール姉さん!」
「お帰りなさい、ヴェルデ……」
グリーンハートはヴェルデを優しく抱き締める。
その目には涙が溜まっていた。
すれ違っていた姉妹はようやく再会を果たした。
これから失われた時間を修復していくだろう。
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2019/01/17/18:46
それから三日後。
「こらーーー!」
ベールの部屋の扉をチカが勢いよく開ける。
「なんですの、騒がしい……今、いいところなのに……」
「いいところじゃありませんよ、仕事サボってBL漫画読んでる場合じゃないんですよ!」
そう、ベールは仕事をそっちのけにしてBL漫画を読みふけっていた。
それには理由がある……再会を果たした最愛の妹ヴェルデにBLの素晴らしさを教える為である。
「ヴェルデっ! あなたお姉様と再会したばっかりで染められてるんじゃないわよ!」
「てへ、染められちゃった」
ベットで寝そべるヴェルデが手でハートマークを作って、微笑みながら舌を出した。
「姉さん、これ面白かったよ。他にも何かある?」
「もちろん、あなたの好きな百合もありますわよ」
「わーい!」
大喜びするヴェルデ。
すっかりベールとの仲は良好にまで落ち着いたようだ。
「はぁ……これは先が思いやられるわね……」
リーンボックスの未来に不安を感じたチカは、肩を落とすのだった。
◇
プラネテューヌの街を大人ネプテューヌが歩く。
その腰には、厳重に鎖で拘束された一冊の本があった。
『おい、謝ってんだから解放してくれよ……』
クロワールの声、あの戦いの後で大人ネプテューヌが捕まえて再び本に封印したのだ。
「ダーメ! また悪さするかもしれないんだから、今度という今度は許さないよ!」
『何だよケチー!』
「何をー!」
口論をしながら歩き続ける。
この二人の奇妙な関係はこれからも続いていくだろう。
◇
そして、零次元ではーーー。
「ふむ、ここが零次元か……」
そこにはマジック・ザ・ハードの姿があった。
他の構成員もいる。
彼女は生きていた。
とある目的で、この次元へとやって来た。
「どう? ここなら始められるんじゃない、アタシ達の新しいスタートを……」
「ああ、この荒れた大地を再び緑溢れるものに変える……腕が鳴るな」
新たな目標にマジック・ザ・ハードは燃えていた。
『グオオオオオッ!』
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プラネテューヌ親衛隊
2019/01/17/18:46
獣の雄叫びが大地を揺るがした。
現れたのは、ヴェルデを瀕死にまで追い込んだライオットだった。
「な、何か出てきたっちゅよ!」
「こっちに来ますよ!」
「……狼狽えるな」
ライオットがこちらを獲物と認めて地を蹴る。
『グオオオオオッ!』
「黙れ」
『キャイン!』
大きな口を開け、牙をちらつかせるライオットだが、相手が悪い。
マジック・ザ・ハードはビンタ一発でライオットの頬を叩いただけで止めたのだ。
「おお、さすがマジック様! こんな獣も敵じゃないっすね!」
「まあな、お前も運が悪いな……私に挑むとは」
『クゥウウン……』
ライオットは子犬のように縮こまってしまった。
先程の威勢はもうない、実力がハッキリとして戦意が喪失してしまったのだ。
このままでは殺されると感じて逃げようとしたが……。
「待て」
既に尻尾が握られていて逃げる事が不可能だった。
ライオットは全身から汗をダラダラと噴き出し、泣きそうな顔でマジック・ザ・ハードを見た。
「お前、私のペットにならないか?」
『アウ?』
マジック・ザ・ハードの意外な言葉にライオットが驚いて喉を鳴らした。
「ぺ、ペットって、マジですか……」
「これから、国を作ろうというのだ。ペットぐらいいてもいいだろう」
「いや、でかすぎでしょ……」
「ペットって、マスコットのオイラと被るっちゅよ!」
「まあまあ、いいんじゃないかしら。この子大きいし、荷物運ぶのに便利そうよ」
下っ端とワレチューが否定的なのに対して、アノネデスは賛成だった。
単純に持ってきた荷物を運ぶのが面倒なのだ。
「そういうことだ。今日からお前は私のペット兼、国民一号だ」
『ワォン!』
ライオットは意味がわからなかったが、命が惜しいから言うことを聞くことにした。
「って、そんな勝手な……」
「家族は多い方がいいだろ」
「な、家族っ!」
下っ端の顔が真っ赤なトマトのように赤くなった。
「そうだ。私達は家族だ。これからこの次元を支配や恐怖ではなく、私の……私達の国にするのだからな」
「あはは、嬉しい事を言ってくれるわね。それじゃ、早速新しい家族に荷物を運んでもらいましょ」
アノネデスがライオットの背中に荷物を乗せた。
少し重量があったのか、ライオットは一瞬ふらついたが踏ん張る。
「お前、それがさせたいから賛成にしたっちゅね」
「あら、バレちゃった。早速目的地に向かいましょ!」
「そうだな。だが、その前に……」
マジック・ザ・ハードは右目を覆っていた眼帯を外した。
「どうしたんですか、急に眼帯なんか外して?」
「これから、国を作るという者にこんなものをしていては誰も寄り付かないだろ。それに……こっちの方がよく見渡せる」
マジック・ザ・ハードは右目を開いた。
その瞳は守護女神と同じく、シェアクリスタルのマークが浮かんでいる。
侵略者としてではなく、権力を争うライバルとして彼女の国が発展するのは、そう遠くない未来なのかもしれない。
その未来に向けて、一同は歩み始める。
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2019/01/17/18:47
◇
騒動から落ち着きを取り戻した頃。
破壊された街並みは修復され、街の人々も新たな女神候補生ヴェルデを受け入れてくれた。
「ちょ、ちょっと! どこへ連れていくの!」
「いいから着いてきて!」
「着いてからのお楽しみだよ(わくわく)」
リーンボックスの街をヴェルデはラムとロムに手を引かれて走る。
「着いた!」
「ここだよ」
「……ここって」
双子はある店で止まった。
そこはヴェルデが住居にしていた喫茶店『リィンベル』だった。
「ヴェルちゃん、入ろう。みんなが待ってるよ」
「え、みんなって?」
「ほらほら、早く!」
「あ、ちょっ!」
二人に引き摺られ、三人は店内に足を踏み入れた。
パァン!
「おわっ!」
何かが弾ける。
驚いた様子でヴェルデを待っていたのは、クラッカーを持ったケイブ達だった。
「け、ケイブ……それにみんな!」
「遅いわよ、ヴェル」
「ようやく主役の登場だな」
「主役って?」
ヴェルデは訳がわからず、頭が混乱しそうになった。
「みんなでヴェルデさんのお帰り会をしようと計画してたんですよ」
「あれから忙しかったから、中々会う機会なかったでしょ」
「ああ、確かに……」
女神候補生の就任式など、国に関わる行事をしていたヴェルデは、ここ数日忙しかった。
みんなと会うのもこれが久しぶりなのである。
「今日でようやく落ち着いたんじゃろ、たまにはこっちにも顔を見せろい」
「……マスター久し振りだね」
「ああ、お帰り……」
育ての親でもあるモーグとも再会。
ヴェルデは涙を潤ませ、モーグに抱きついた。
「ところでマスター……ボクが女神候補生だって知ってるでしょ?」
「な、何故それ……ふごっ!?」
小さな声でヴェルデが言うと、モーグは目を見開いた。
驚いて叫びそうになったモーグの口を急いで塞ぐ。
「ヴェルちゃん、何してるの?」
「ああ、うん……何でもないよ」
ヴェルデはラムに苦笑しながら手をひらひらと返した。
「もう、マスター……大きな声出さないでよ」
すぐにモーグの耳元で囁くとヴェルデは手を退けた。
「すまん、というか……何で知っとるんじゃ?」
「簡単だよ、教会関係者じゃない人物にボクを預けようなんて姉さんは考えないでしょ」
「はは……相変わらず鋭いの」
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プラネテューヌ親衛隊
2019/01/17/18:47
モーグはヴェルデの鋭さに観念して苦笑いを浮かべる。
「でも、お前さんの事は本当の娘のように育ててきた。それだけはわかっておくれ」
「わかってるよ、そんなことは……マスターの愛情は本物だってね。だから雰囲気ぶち壊さない為に、これは二人の秘密って事で」
そう言ってヴェルデはウインクした。
「ありがとう」とモーグは愛する娘の心遣いに感謝する。
「あ、それと最後だけわかんないのがあったんだけど、何でケイブも一緒に引き取ったの?」
「なんじゃ、そんなこと……それはあの子がお前さんと一番仲良しじゃったからだよ、離れ離れになったら嫌じゃろ?」
「……そっか、ありがとう」
疑問が晴れて、ヴェルデは微笑む。
ケイブを引き取ってくれなかったら、彼女との強い絆は生まれなかった。
ヴェルデはモーグに感謝する。
「何の話をしてるの?」
こそこそと話してるヴェルデ達が気になって、ケイブが話しかける。
「何でもないよ、ちょっとした昔話をしてただけ」
「……そう」
ケイブは深く追及してこなかった。
こういうところも、ヴェルデは気に入っている。
「さあ、そろそろ始めよう。せっかくの料理が冷めてしまう」
「やった! ようやく始まるのね!」
「お料理運ぼう、ラムちゃん(とことこ)」
モーグとラム、ロムが料理を運ぶ。
七面鳥やケーキとまるでクリスマスのような豪勢なラインナップだ。
「なんか照れるね。ボクのためにここまでしてくれて……」
「実際、あなたを探す為に頑張ったのだけれどね」
「そうだな、だいぶ遠回りしてしまったが……」
「でも、結果は大団円ですよね!」
ケイブ、MEIGS‘、マイクロはこれまでの頑張りが報われて喜びあう。
「ヴェル」
「ヴェルデ」
「ヴェルデさん」
「「ヴェルちゃん」」
各々ヴェルデの名前を呼んでいく。
「「「お帰りなさい!」」」
「うん、ただいま!」
リーンボックスに笑顔の花が咲いた。
おわり。
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プラネテューヌ親衛隊
2019/01/17/18:47
「計画は順調のようだな」
ゲイムギョウ界のどこかの施設。
怪しげな風貌の女性が、これまた怪しげな装置の前で不適な笑みを浮かべている。
「ええ、このまま行けば何事もなく執行できますよ」
スーツ姿の男が女性に同調する。
「ふふ……私は運がいいな。メガミニウムが大量に盗まれているのにも関わらず、こうして捕まらずにいるのだからな」
「ええ、それもあのマジック・ザ・ハードという者が騒動を引き起こしてくれたおかげですね」
神次元、それに超次元でMEIGS‘の研究室からメガミニウムを盗み出したのは、彼女だった。
偶然重なった犯罪組織の騒動を利用して、盗みを次々と成功して逃げ延びていた。
「これが……メガミニウムを作った新たな兵器か」
目の前の装置には、様々な形をした兵器が幾つものケーブルに繋がれていた。
「はい、人工殲滅兵器『ヴァイス』です」
ヴァイス……そう名付けられた兵器はまるで漫画に出てくるロボット兵器のような形状をしていた。
「大型のヴァイスもありますよ左から『サーペント』『レントラー』『ケルベロス』『セルケト』です。どれも強力な兵器を備えてあります」
「……素晴らしい」
作られた兵器の数々に女性は不気味に口許を歪ませる。
「これで、ゲイムギョウ界を征服するのも夢ではないでしょう」
「ふふ、そうだな。だが、こいつらのテストはゲイムギョウ界ではやらない……」
「と、言いますと?」
男性は不思議に思い、眼鏡をくいっと上げた。
「これを見ろ」
部屋に備えられたスクリーンに電源が入り、映像が流れる。
そこには青い星が映っていた。
「これは……別次元の惑星ですか?」
「ああ、名前は『地球』という……文明はゲイムギョウ界に劣るが、面白い星だ。調べてみたがこの星には私のような驚異が存在しない」
「なるほど、では、この世界を征服し。地球の魔王となろうとしているのですね『マジェコンヌ様』」
男性の問いに神次元の悪意マジェコンヌが崩壊する地球を想像して笑う。
◇
「楓ー! 行くよぉー!」
「はい、待ってくださいお姉ちゃん!」
地球に住む姉妹は知らない……。
今、我々の星が悪の驚異にさらされようとしているとーーー。
次回作へ続く。
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