大江戸大河〜SF編〜
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1
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10/30 17:31
ピー ピピン ピピン…
「大気圏に突入します チェアを元の位置にお戻しください」
人類がこの世に誕生し、以来、人々は空に憧れ続けてきた。
時に空を恐れ、時に空を崇め、いつの日かあの遠い星々へたどり着きたい、そう考えていた。
その欲望の殻は科学技術の発展により破られ、今や宇宙の星々に数多の人類が移り住んでいた。
藤沢博士…
いまや世界にこの男の名を知らぬ者はいない。
まるで異次元から飛び出したような古来からの知識を持ち、現代科学との融合によって宇宙への旅を実現させた伝説の科学者である。
いま、宇宙から一隻の船が地球へとおりたとうとしていた…
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一発
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11/18 22:17
ピピーピン
レーダーが若い男を捉えた音だ。
小郡に辿り着いたおまつは灰色の学生服を着た二人組の男に目を留めた。
一人は妙に痩せこけた男だった。
ライブラリー検索をする。
ジジジ、ピン
「ベース、必死ー、2016ネン、ヘリオスヒットチャート1位、肺ニケッカンアリ」
「こいつはダメだな…」
その横を歩くもう一人の男に目を移したおまつは驚いた。
「あれは…博士…?」
男は藤沢に良く似て見えた。
ライブラリーに繋ごうとしたおまつは聞き慣れた声に耳を澄ます。
「おまえ、どこ受けると?」
藤沢の声にそっくりだった。
「福大」
必死ーが答える。
「俺も福大受けるぜ、一緒に行こうや」
「バンドどうする?」
「来年はナベが受験やけんね。一年はできんやろうけん軽音楽部にでも入ろうや」
「おう」
ライブラリーは藤沢に似た男を検索していた。
「一発F野、維新*s、モノリズム、ヘリオスヒットチャート21位、未来への影響、、、皆無」
人造人間おまつの目からは流れるはずのない涙が流れていた。
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9
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イワナなし
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11/19 13:56
おまつはこの当時の繁華街であった中洲と呼ばれる街に佇んでいた。
電光掲示板ではヘリオスヒットチャートが映し出されている。
おまつは考えていた。博士に似ているあの男…間違いなく博士の祖先だろう。
本当に未来への影響は皆無なのだろうか、だとすれば自分自身も未来への影響は皆無、すなわちこのミッションは無駄に終わることを意味しているのではないか。
博士…私はどうしたらよいのでしょう。博士にあの男の話を伝えることがどうしてもできず、その場にうずくまるおまつ。
そこに現れた1人の女性。
「私、平安時代から来たんだけどあなたは?」
ミキティと名乗るその女は微笑みを讃えおまつを見ていた。
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10
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一発
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11/20 16:55
「おしゅかれしゃまでしゅ〜」
中洲で知り合ったミキティはひどくシャクれていた。
ミキティと出会ってから数週間が経つが、この平安時代の女はこの時代にとても詳しかった。
彼女曰く、日本の男子はダメらしい。
おまつが日本男子のどういったところがダメなのかを聞いても要領を得ない。
おまつはこの日思い切って聞いてみた。
「あなたは欧米人が好きなのですか?」
ミキティは一瞬動きを止め「しょんなことないでおじゃるよ」と言った。
平安言葉になっている。
明らかに動揺していた。
おまつはこの数日前に欧米人の男数人と楽しそうに歩いているミキティを目撃していたのである。
おまつは続けた。
「欧米男子は日本男子に比べてペニスが大きいと聞きます。そこも理由の一つですか?」
ミキティは顔を真っ赤にさせ髪を振り乱しながら「しゅるしゅるしゅるるるるる」と、言葉にならない声を上げた。
そして動揺していることを誤魔化すように歌い出した。
「ハンミハンミハンミハンミ」
おまつは困惑を隠せない。
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11
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イワナなし
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11/20 18:36
「ハンミハンミハンミ…!」
ボルテージを増す歌声。
いつしか周囲には人だかりができていた。
「what*s up(ワザァップ)!!」
勢いよく飛び出しできたのは見るからにラップが好きそうな男である。
「友への裏切りぃ?(アサシン)」
男はハンミハンミのリズムに合わせてリリックを放ち続ける。
おまつはこれ以上の狂った光景に耐えることが出来ず、その場を去った。おまつには確かに正常な人間の心が宿り始めていた。
しかしどうにもミキティが頭から離れぬおまつはスペースデータバンクに問い合わせる。
「ミキティ コードネームsyd 最新の人間型兵器デス」
!?
おまつと同じく未来から来ているものがこの時代へ紛れている…
「バトルモード発動、倍撫!」
おまつがそう呟くと、右手はみるみる内に大量破壊兵器、倍撫へと姿を
変えた。
「ハンミハンミハンミ…」
あの歌は、確かにおまつへと近づいていた。
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12
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一発
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12/01 14:23
「早まるな、おまつ!」
宇宙船「世界」から藤沢の声である。
「倍撫をそんな所で使ったらどうなるか、そのくらい君には分かるはずだ」
「ハンミハンミハンミ…」
おまつの頭ではハンミハンミが止まらない。
「倍撫は宇宙空間での使用しか想定されていない、この意味がわかるね?」
藤沢は諭すように続ける。
「地球がもたない」
「博士…わたしは…」
おまつの思考回路はショート寸前である。
「おまつ!とにかく今は倍撫を停止させるんだ!」
「しょこまでよ!」
その時ミキティの声がおまつの背後で響いた。
「あにゃた、人造人間だったのね、あたしをコケにするような事言って…許しゃない!」
藤沢は焦りを隠せない。
「まずい、このままではおまつは倍撫を使用してしまう…こうなればやむを得ん。おまつを一旦セーフモードで起動し直す」
操作に取り掛かる藤沢の手をチルドレンの一人が止めた。
「パパ、それじゃあおまつはミキティに壊されちゃうよ」
「確かに!」
「おまつはミキティが放ったウイルスsydによって思考が所々フリーズしているんだ。でも起動し直す時間はない。となればあれしかないよ」
「確かに!」
おまつにミキティの魔の手が迫る。
おまつはsydの影響によって思考も動きも定まっていない。
ミキティの人工頭脳は冷静に状況を判断し、最善の策を導き出す。
「ハンミハンミでトドメを刺す」
ミキティは笑う…不気味に。
そして息を吸い込むと悪魔の呪文を唱えた。
「ハンミハンミハンミハンミ…」
その刹那、おまつの拳がミキティの突き出たアゴをしたたか打った。
「やりすぎったい!」
三間ほど後方に吹き飛んだミキティに向かい叫ぶおまつ。
これはおまつなのか?
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13
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イワナなし
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12/01 14:55
おまつの脳内データがハッキングされていることに藤沢が気づくまでさほど時間はかからなかった。
ハッキングによって書き換えられた人格はマツイシと呼ばれる荒くれ者の人格であることが藤沢の解析によって判明した。
「お、おまついし…」
制御不能に陥ったおまつ、いや、おマツイシは容赦なくミキティに鉄槌を下した。
「はしゅっ!ぶしゅっ!」
「ふしゅるるるる…」
「YAMERO!」
ミキティのボーイフレンドである西洋人が大挙してミキティに加勢するが、おマツイシを止めることなど不可能だった。
ミキティは崩れる…不気味に…
かつてミキティだったものはガラクタと化した…
「なんという力だ…」
藤沢は恐れおののいた。
なによりおまつの体にこんな潜在能力が眠っていたことに興奮がやまなかった。
「ってかさぁ、俺すごくね?」
チルドレン達に同意を求めるも反応は無かった。
問題はどうやってハッキングされたデータを元に戻すかである。
おマツイシはミキティを破壊したのち、女性のケツを目掛けてカッティングしながら移動している。
「こうなれば仕方あるまい、アレを送り出す」
「まだ早いよ!」
チルドレンたちの助言を聞いている場合ではなかった。残された時間は少ない。
藤沢はスイッチを押した。
「…ッチ…
…ウィッチ…
マスビーザスィーズンオブザフィッチ!!」
遂にZが眠りから覚める時が来た。
開口1番藤沢をじっと見つめこう言い放った。
「時代は変わる」
「Zよ、どうやっておまつのところまで向かうのだ?」
「風に吹かれてよそら。きまっとーやん」
燃料である麦焼酎を手渡すと彼はニヤリと笑い、ポッケに手を入れて旅立つのだった。
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14
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一発
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12/01 16:39
夜の地球に降り立ったZ。
宇宙船から転送される際に生じた僅かな不具合から全裸であった。
「寒し」
辺りを見渡し歩き出す。
道を曲がった所でうら若き娘に遭遇した。
その娘はZの姿を見るなり悲鳴を上げかけたが、それを制するようにZは言う。
「どんな感じだい?」
それを聞き終えた娘は、改めて悲鳴を上げて逃げ出した。
Zは店仕舞いを終えたアパレル店のドアを叩き割り進入した。
数分後、上下をデニムで統一したコーディネートで店をあとにした。
「よかろーがて」
おまつの居場所は「世界」から常に送られてきている。
ここから近い。
駐輪場に立ち寄ると小回りの効きそうな自転車にまたがった。
「そう、転がる石のように」
そう言うと尋常でない早さで走り出した。
途中、ショーウィンドウに映る自らの姿を見て立ち止まる。
ショーウィンドウに近づくとZは両手で髪を持ち上げるようにしたり、前髪の微妙なラインを整え始めた。
そうすること数時間。
すでに空は白んでいる。
「やべえ、燃料が切れる」
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15
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イワナなし
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12/23 22:23
Zの燃料はもはや風前の灯火。
「う…ゥィッチ…」
吹きすさぶ風が彼の髪を乱していく。
窮地。
これを窮地と言わずしてなんと言おうか。
しかし運命は彼に味方した。
同じアパートの住人から盗んだ自転車で近くを通りかかったグラップラー建部が手に持っていたいいちこを差し出すと瞬くウチにZの機構は輝きを取り戻したのだった。
Zが礼を言ってその場を去ると
グラップラー建部は呟く。
「ヨカローガテ…」その口元はニヤリと傾いた。
そう、グラップラー建部は仮の姿、その中身はZの完コピを行うために開発されたナノマシンの集合体であった。
そして、おまつを巡る最後の聖戦が始まった。
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16
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一発
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12/27 12:54
セーフモード…キドウ…カイシ…
ハンミハンミの呪縛はおまつのプログラムを大いに乱した。
その副作用として現れた新たな人格「おまついし」により破壊されたかに見えたミキティであったが、人工知能のコア部は辛うじて生き残っている。
時は遥かなる未来。
機械という概念は我々の想像を超え、生物構造を織り成す有機物といってよかった。
それは命を宿し、意思を持って地上を闊歩する動物である。
プログラムは彼らを理解するための指標でしかなく、またそれを操作し一定の目標に導くことは人間に残された唯一絶対の権限であった。
ミキティ、そしてグラップラー建部も誰かの意思によって動いている。
「一体誰が…」
藤沢は思案にふけっている。
時間法により支配される世界。法の網目を縫ってこの時代にやってきた藤沢たちの行動を誰かが監視していることは明白だった。
「まさか、神が…」
ピピーピン
Zからの連絡だ。
「内臓が機能してねえ」
藤沢はZの位置を確認し応える。
「飲み過ぎだ。そこからおまつの位置までかなり近い。おまつは今再起動中で無防備な状態にある。落ち着いてことに当たってくれ」
フラフラになりながら指定の位置まで移動するZの前方に破壊の限りを尽くされたかつてミキティだったものの残骸が転がっている。
ミキティの僅かに残った意思は目的を完遂するべく動き出す。
声帯機能も失った今、ミキティができることはやはりハンミハンミであった。
コアを構成するナノマシンは最恐ウイルスsydをZに向け放つ。
Zの脳内で何処からともなく歌声がが響き渡った。
「ハンミハンミハンミハンミ」
可憐な乙女の声だ。
おまつのプログラムを破壊した呪いの呪文である。
Zはそれをウイルスと認識したのか、はたまた身体が勝手に反応したのか、少しふらついたかと思うと腹の底から声を上げた。
「ディラン!!」
次の瞬間、ミキティのコアはその動きを完全に止めた。
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イワナなし
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12/27 13:05
ミキティは完全にその活動を停止した。ハンミハンミの呪縛に囚われていたの他ならぬミキティ自身だったのかもしれない。
ミキティのコアは過去を回想していた。私を抱きしめてくれたスコットランドのマーク、一晩中バックで突いてくれたルイス…
そう、それらはかつて「人間」出会った頃のミキティの記憶。生きながらにしてすべての記憶がデータとして移植されていたのだった。
「ディラン」にはある特定のマシーンにのみ致命的なダメージを与える力があった。
Zはデニムジーンズに手を突っ込み、歩き出す。その時、一枚の写真に気がついた。
「むぅ!こ、これは…」
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