GBG2 アーシェ外伝
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プラネテューヌ親衛隊
2017/09/04/22:04
この物語はガンプラビルドガールズセカンドに登場する桜木・R・アーシェが主役のお話です。
まだ高校一年生のアーシェが趣味であるガンプラファイトを通してかおること出会い。生徒会に入り。恋をするーーー。
そして親友と呼べる相手と出会う。
[SC-05G]
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プラネテューヌ親衛隊
2018/03/22/11:01
「お久し振りですわね。巴さん……」
野薔薇麗香が数歩前に出て、勝ち誇った笑みをマミに向ける。
「ええ、お久し振りですね。野薔薇さん」
マミも微笑んで返した。彼女達は知り合いだった。毎年全国大会に出場しているから面識があるのだ。
そして、去年。彼女達とは因縁があった。
「思い出しますわね。去年の3回戦を……」
「…………ええ」
去年の全国大会。野薔薇学園とは3回戦で初めて試合した。だが、その結果は惨敗。
マミ達は何も出来ず、無惨に蹴散らされてしまった……この敗北がきっかけで先輩達が自信を失い。ガンプラファイトを離れてしまったのだ。
「また……去年のように無様に倒されに来ましたの?」
負け犬を見るような目でマミを見据える麗香。彼女のチームメイトも、くすくすと小馬鹿にした目を向けてくる。
「運がないわね。1回戦で私達と当たるなんて……」
「他の子達は、新入部員なんでしょ? 可哀想……。この戦いでトラウマ作っちゃうわねぇ」
「棄権した方がいいんじゃないの。あははは!」
よってたかって嫌みを言う。そんな言葉を浴びせられてもマミは態度を崩さなかった。代わりに杏子が口を開く。
「……弱い奴ほど、よく吠えるって言うよね」
「……は?」
野薔薇学園のチームメイトが笑うのを止め、杏子を睨み付けた。
「あんた……今、なんて言ったのよ?」
「聞こえなかった? 弱い奴ほどよく吠えるって言ったんだよ」
「こ、こいつ……!」
「……お止めなさい」
麗香が仲間を制す。
「で、ですが麗香様っ!」
「お止めなさいと言っているのですっ!」
「うっ……」
麗香に一喝され、押し黙った。麗香は杏子に視線を向けて口角をあげる。
「ふふ、随分と強気な方ですわね。面白い新入部員ですこと……」
「そりゃどうも」
杏子は適当に返す。彼女の隣にいるほむらは、肩を竦めた。
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プラネテューヌ親衛隊
2018/03/22/11:01
「……杏子。相手にしない方がいいわ。どうせこの後、そんな強気でいられなくなるもの」
「そうだな、悪かった」
ほむらに指摘され、杏子は口を閉ざす。麗香はほむらに視線を向けて、にぃっと口角を上げる。
「そこのあなたは物分かりがいいですわね。準優勝まで到達する私達と途中で敗北してしまうあなた達とは……実力の差があって当然の事ですわよね」
「どう捉えても結構です」
麗香の挑発を涼しい顔をしてかわすほむら。アーシェ達が最初会った時と別人のような冷静さだ。
彼女の態度が気に入らない。麗香が目付きを鋭くして口を開こうとしたが……。
『はいはい。喧嘩は止めようね』
ステージの中央にいるMCが仲裁に入った。彼女はマイクを持ったまま、話を続ける。
『どっちが強いかはファイトで決めましょうよ。勝敗は嘘をつかないから、戦いで白黒着けなさい』
「それもそうですわね……」
MCの言葉に麗香は納得する。そして、見滝原ガンプラファイト部の面々に指を突き付ける。
「私達は、あなた達を完膚なきまでに倒してやりますわっ! せいぜい吠え面をかかないことねっ!」
「ええ、気を付けますね」
麗香の挑発に微笑み返すマミ。麗香は踵を返してシュミレーターへと向かう。
その取り巻きも、後に続いた。
『ああ、ちょっと! 指示もないのにシュミレーターに入ろうとしないでくれる……!』
MCの話を聞かず。野薔薇学園の面々は、シュミレーターへと乗り込んだ。
『あぁ、もう……。それではっ! ファイターの皆さんはシュミレーターへ乗り込んでくださいっ!!!!』
半分自棄になってMCが叫ぶ。見滝原の面々も、シュミレーターへと歩み始める。
「そういえば、お前。珍しく挑発に乗んなかったな」
杏子がさやかに視線を送る。先程の会話で彼女は一言も発してなかった。
それが珍しくて、さやかに声をかけた杏子。すると、彼女が……。
「当たり前よ。こんなところで負けらんないんだから……風邪引いちゃったまどかの為にも」
「……」
まどか。その名前を口にしてほむらは、眉をピクリと動かす。
「ほむら……。あたし、頑張るから、サポートよろしく」
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プラネテューヌ親衛隊
2018/03/22/11:01
シュミレーター前で止まり、真剣な表情でさやかは真っ直ぐな瞳を向ける。
「そんな事。言われなくてもわかってるわ……。あなたは、出れないあの子の為に戦っているのだから、まどかの分まで活躍してもらわないと困る」
素っ気なく応えてほむらはシュミレーターに乗り込む。そんな態度の彼女に杏子は肩を竦める。
「相変わらず冷たいねぇ。さやかが珍しくかっこよく決めたってのに……」
「いいって、あれはあいつなりに頑張れって言ってくれたんだよ」
「ふぅん、幼馴染みだから相手の気持ちがわかるのか?」
「まあね」
と、さやかは苦笑する。ほむらとは長い付き合いだから、彼女の気持ちは少しわかるつもりでいる。
普段は自分に対して興味のない素振りを見せるが、結局は助けてくれる。不器用で優しい彼女をさやかは口にしないが信頼していた。
「頑張りましょう。この試合を見ている鹿目さんの為に……」
マミが寄ってきて、さやかと杏子の肩に手を置く。
2人は首を縦に振った。3人は、シュミレーターへと乗り込む。
◇
時を同じくして風邪を引いたまどかは、自宅のリビングでテレビ放送されている全国大会の様子を視聴していた。
パジャマ姿でボサボサなピンクの髪。額に熱冷まシートを貼ったまどかは虚ろな目をしていた。
「まどか……。いないと思ったらここにいたんだ。駄目だよ。部屋で寝ていないと」
まどかの父親が、リビングにやって来て娘の姿を見つける。
「ごめんね、どうしても大会が気になって……」
「だったら、横になって安静にして見ないと……。今、毛布持ってくるから待ってて」
「……うん、ありがとうパパ」
ソファーで横になるまどか。父親は毛布を取りにリビングを出ていった。
テレビに視線を向けると、自分の仲間達が映っている。
「皆、頑張って……わたしの分まで」
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プラネテューヌ親衛隊
2018/03/22/11:02
まどかは願った。仲間達が初戦を突破できるように。自分抜きで優勝出来るように強く。
◇
戦いは既に始まっていた。バトルステージは地下空洞に建設された基地。お互いに離れた位置からスタートし、相手を探すところから始まる。
「それでは皆さん、行動を開始しましょう」
麗香が静かに呟く。チームメイトが全員頷いた。4人は行動を開始する。
麗香の機体は、ガンダムローズ。仲間の機体はノーベルガンダム。Gポータント。GNアーチャーだ。
取り巻きの機体が先陣を切り。麗香の機体を守るような陣形で慎重に進む。
「あいつらどこにいるのかしら?」
「きっと、麗香様のローゼスビットの餌食になるのが恐くて隠れているのだわ」
「ふふ、それも無理はありません……。私のビットの腕前は百発百中ですもの!」
取り巻きに煽てられ、麗香は気分よく鼻を鳴らした。ビット操作に自信がある。いままでもビットで数々の敵を葬ってきたからだ。
麗香は今回も、いつもと同じように相手を倒すつもりだ。
「さあ、出てくるなら出てきなさいっ! 私のビットで沈めて差し上げますわっ!」
「キャー! 麗香様かっこいーーー」
取り巻きの1人の言葉の途中で前方から何かが放り投げられた。それは筒状の形をしていた。落下地点は麗香達の中央。それを見た麗香は顔を青くさせる。
「は、ハンドグレネード! 皆様散ってくださいまし!」
「っ!!!?」
麗香の言葉で陣形を崩してその場から離れる。数秒後に爆発が起きて、煙で周囲の視界が遮られる。
「な、なんですのっ! どこから攻撃がっ!」
「さあ……準備は整ったわ」
「狩りの始まりだぜ」
煙の中からほむらと杏子の声がした。
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プラネテューヌ親衛隊
2018/04/09/07:09
「っ!? 皆さん、気をつけてっ!」
身の危険を感じた麗香。仲間達に周囲を警戒するように指示をしたが、遅かった。
「きゃあっ!」
仲間の1人が被弾した。GNアーチャーの左肩が損傷して後ろへ倒れる。
「アーチャーが被弾した!」
「私に任せて、Gポータントの修復装置で……」
「そうはいかないよ!」
再び杏子の声。煙の中を突っ切り彼女のMSが姿を見せる。漏影のカスタム機。その名も『剛練』
赤い装甲に包まれた剛練は、高速でGポータントに突進してそのままの勢いで引き摺っていく。
「くっ! 離してっ!」
「おう、喜んで」
「え?」
杏子はすんなりとGポータントを離した。背中から地面へと沈む。
「何でこんな中途半端な距離で……あ!」
仲間とそれほど離れていないのにどうして手を離したのか、疑問に思ったがすぐにその疑問は解消された。
上体を起こして周囲を見回したGポータントの背後にさやかのMS。R・ギャギャSカスタムがバスターソードを構えて待ち構えていたのだ。
「まずは……1体」
「ひっ!」
さやかは無慈悲にその巨大な鉄塊を振り下ろした。
その一撃はGポータントの頭部から腰まで斬り裂き、機能停止にまで追い込んだ。
「ねえ、ちょっと! 応答してよっ!」
仲間の1人がGポータントのパイロットに通信を送るが反応がない。
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プラネテューヌ親衛隊
2018/04/09/07:09
まさかやられたのか……。視界が煙で遮られて今の状況では仲間の安否すら確認出来ない。
次は誰が狙われるか、どこから攻撃が来るか……わからない事が多すぎてその心を徐々に恐怖が蝕んでいく。
「くそっ! どこよっ! どこにいるのよっ!」
ノーベルガンダムがビームリボンを無闇に振り回す。そんな事をしても、マミ達には掠りもしないのだが、彼女の心は既に恐怖に支配されていた。
「あの子がやられたなんてあり得ない……! こんな卑怯な戦法で来なければお前らのような三下に負ける筈がないんだっ!」
「落ち着きなさい。取り乱しては相手の思うツボですわよ!」
恐怖だけではない。自分達は毎年準決勝まで進出する強豪校の筈だ。
それが今、3回戦すら突破できないようなチームに苦戦しているなんて事実が認められなかった。彼女のプライドに傷が付けられる。
「卑怯……ですか、あなた方から見たらそうでしょうね」
煙の中からほむらの声が聞こえる。
「そこかっ!」
声のした方へノーベルガンダムがビームリボンを伸ばす。だが、手応えはなかった。
「いない……確かにこっちから声が……」
「反応が鈍いですね」
「っ!?」
今度は背後から声がした。振り向きながらビームリボンを振るう。
「……遅い」
だが、ビームリボンが当たるより先にほむらの『ジェスタコマンド』がビームサーベルでノーベルガンダムの右腕を斬り落とした。
「なっ!」
「あなたはここで終わりよ」
ジェスタコマンドはビームサーベルでノーベルガンダムの腹部を突き刺した。一度だけでなく何度も何度も。
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プラネテューヌ親衛隊
2018/04/09/07:09
「ひっ! いやああああっ!!!!!!」
何も出来ぬまま耐久値が削られていく。ノーベルガンダムのパイロットは涙を流しながら絶叫する。
「待ってて、今いくっ!」
体勢を立て直したGNアーチャーが救援に向かう。ほむらは横目で相手が来るのを確認すると、トリガーを引いた。
「行きなさい、ホムラ二号」
ジェスタコマンドのバックパックが分離する。それは変形して四足歩行型のメカへとなる。
「なっ!」
バックパックが変形してGNアーチャーのパイロットは目を丸くする。
ホムラ二号の頭部はガトリング砲とビームキャノンがついた兵器となっている。そのガトリングが高速回転し、次々と弾丸が放たれる。
「きゃああああっ!」
突然の事で対応出来なかったGNアーチャーは弾丸の直撃を受けてしまい。蜂の巣にされて爆発してしまった。
そしてノーベルガンダムも耐久値が0となりただの鉄の塊へと変貌する。残りは麗香が乗るガンダムローズだけとなった。
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プラネテューヌ親衛隊
2018/04/09/07:09
「……そんな」
煙が晴れ、麗香の視界に飛び込んできたのは、仲間のガンプラの変わり果てた姿だった。
「あなた達の強みは統率された陣形から繰り出される連携攻撃にあります。けれど、その陣形を崩してしまえば、こんなに脆く倒せてしまうんですよ」
マミが静かに言う。麗香は前方に視線を向けた。視線の先にはガンダムレオパルド・フィナーレと他4機がこちらを見据えて立っていた。
「あ、ありえませんわっ! こんなに簡単に陣形が崩されるなんてっ!」
麗香が悲鳴にも似た声を上げる。すると杏子は肩を竦めて言った。
「まあ、取り乱す気持ちもわからない訳でもないけどね。残念だけど、あたしらはあんたらの行動パターン全て頭に叩き込んだんだ」
「な、なんですって……」
「先輩達が卒業して、大会が始まるまでに大会で出場券するであろうチームの対処法を考えていたんです。過去の大会の資料。実際にファイトして学んだ経験。それらを生かして……」
マミは拳を固めて先の言葉を続けた。
「先輩達は優しい方達でした。私にガンプラファイトを教えてくれて、こんな素敵な場所へ連れて来てくれた方々でした……。去年、先輩は言いました。3年間、全国大会に出て一度優勝した事がないから、今年こそは優勝するって……結果は知っての通りですけど」
マミは口にする。卒業していった先輩達の無念の思いを……。
「私は……果たせなかった先輩達の夢を引き継いでこの場所にいます。今度こそ優勝すると胸に誓って、その為にはあらゆる手段を使うと……」「……そこまで覚悟を決めていますのね」
マミの口から出た見滝原中ガンプラファイト部の3年間。優勝出来ず無念に卒業していった先輩達の為にも、あらゆる手段を使って勝利しようと心に決めたマミ。
彼女の心境を聞いて麗香は……。
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プラネテューヌ親衛隊
2018/04/09/07:10
「お見事。あなたの決意……しかと受け止めました。ならばわたくしは全力でそれに応えるまでですわ!」
ガンダムローズがレイピアを構えた。
「お行きなさい、ローゼスビット!」
次に肩に取り付けられていたマント状のバインダーが展開し、中から薔薇の蕾のような形をした兵器が飛び出してくる。
名前は『ローゼスビット』他のガンダム作品におけるファンネルと同じ遠隔操作の武器だ。
発射されたローゼスビットの蕾の中にある銃口から粒子が排出され、見滝原チームに襲いかかってくる。
「おわっ! 撃ってきた!」
「落ち着け、この攻撃も映像で何度も見ただろ!」
「落ち着いて見れば避けきれない攻撃ではないわ」
ローゼスビットの攻撃を回避に専念する一同。確実、その場から散開する。
しかし、ガンダムレオパルド・フィナーレが、マミだけがその場から動こうとしない。
「巴さん何を!」
「……いいから見ていなさい」
動かないマミを心配するほむら。マミは静かに返すと行動を開始した。
ガンダムレオパルド・フィナーレが少ない動きで攻撃を避け、ビームライフルによる射撃でローゼスビットを次々と撃ち落としていく。
「すげえ……」
その鮮やかな一連の動きにさやかは目を奪われていた。 とうとうマミは、全てのビットを撃ち落としてみせた。
「さすがうちの部で射撃が一番うまいだけの事はあるな」「私もあれくらいはできるわよ」
「いや、あんたの場合は乱射してるだけでしょ」
マミの射撃の腕を見て、杏子は改めて感心し、ほむらは対抗心を燃やす。そんな彼女を見て、さやかは苦笑した。
「やりますわね。ですが……ローズの武器はこれだけではありませんわよ!」
ビットを破壊されても闘争を失わずに麗香は果敢に立ち向かっていった。
「よし、接近戦ならあたしが……」
「みんな、手を出さないで」
「ええ、なんで!?」
接近戦を挑もうとしたさやかを止める。その言葉にさやかは驚き、そうこうしているうちにガンダムレオパルド・フィナーレとガンダムローズが交戦を始めた。
「私が一対一で勝負をしたいからよ。いいでしょ?」
「マミさんがあんな事を言ってるけど……」
さやかは2人に確認をとった。
「部長命令なら仕方ない、好きにさせてやれ」
「右に同じく」
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プラネテューヌ親衛隊
2018/04/09/07:10
2人はマミの気持ちを尊重した。ならばさやかも2人と同じ答えを出そうと決める。
「マミさん。絶対勝ってくださいよ」
「もちろんよ」
仲間から快く送り出された。ならば自分は応援してくれる皆の為に勝利を捧げようとマミは強気な笑みを浮かべて返した。
「いい仲間に恵まれましたわね」
「ええ。お陰さまで……」
「ですが、それはわたくしも同じこと、倒れていった仲間達の為に……負けませんわよ!」
麗香は倒れた仲間達の分まで背負って戦う。ガンダムローズは高速で懐に飛び込んでレイピアを突き出した。
「ふっ!」
ガンダムレオパルド・フィナーレはレイピアの刃を回避。背後に回ると同時に背中に向けて引き金を引いた。銃口から粒子が放たれ、ガンダムローズの胸を貫く。
「くっ! まだまだっ!」
その攻撃だけではローズは止まらない。振り向くと同時にレイピアを振るい。ガンダムレオパルド・フィナーレの右腕を斬り裂いた。
「身体を貫いたのに動けるなんてっ……!」
「わたくしは負けられませんの……。仲間の為にも、学園長のお母様の期待に応える為にも、ここで負けられませんのよ!」
再び突きだされる刃。ガンダムレオパルド・フィナーレの右目を貫く。
「私も……私だって!」
自分も負けられない。先輩達の分まで戦い抜くと決めたのだ。その気持ちがマミを突き動かす。
ビームライフルはまだ一丁ある。そのライフルを眼前にいるガンダムローズに突きつけてトリガーを引いた。
「うがっ!」
再び身体を貫かれたガンダムローズ。傷口から火を吹き出して後ろへとよろめく。
「まだ。まだ……わたくしはこんなところで、桜翠を打倒するまで……」
「それは私達が成し遂げます。あなた達はゆっくり休んでいてください……」
限界なのに動こうとするガンダムローズ。そんな彼女の執念に敬意を評し、トリガーを振り絞る。その身体が動かなくなるまで何度も……。
3発目を受けてガンダムローズは地面に崩れ去った。
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プラネテューヌ親衛隊
2018/04/09/07:10
◇
『今、勝負が決まりました! なんと毎年準決勝まで勝ち進んでいる野薔薇学園を打ち破って見滝原中ガンプラファイト部が2回戦に進出しましたぁっ!』
『『おおー!!!!』』
MCが勝者の名を口にし、観客達の歓声が一気に押し寄せてくる。いままで準決勝まで進んだ野薔薇学園が1回戦で敗退した。
予想を裏切ったこの展開に皆が胸を踊らせる。
この状況を控え室のテレビで見ていた桜翠学園も、この結果には驚いていた。
「まさか……見滝原が勝つなんて」
真矢がテレビ画面に映る勝者の顔を食い入るように見ていた。野薔薇学園が勝つと思っていたが、こんなにも早く負けるとは思ってもみなかった。これは何かの冗談なのかと自分の頬をつねる。
「……いてぇ」
痛かった。やはり、これは夢ではないようだ。
「さやかちゃん達が勝ったね……」
「……ええ。あの自信は嘘じゃなかったんだ」
ファイトが始まる前にさやかの口にしていた言葉を思い出すアーシェ。
あの言葉は本物だったと実感する。相手を研究して行動パターンを全て把握していたから、さやかは絶対の自信を持って勝てると口にしたのだ。
「強敵ですね。あの子達……」
「うん、野薔薇学園の戦闘データを解析していたなら、私達の事も調べていた筈。気を引き締めていかないと」
「……はい」
思わぬ強敵見滝原。次、戦うのは自分達とだ。彼女達は自分達のデータを解析して対策を採っているだろう。
ならば気を引き締めて行かねば……。アーシェとかおるこは強くこぶしを握り絞めて画面を見つめ続ける。
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プラネテューヌ親衛隊
2018/04/09/07:10
◇
続く第1回戦第6試合。第1回戦最後の試合が行われていた。戦いの舞台は砂漠地帯。今、ファイトをしているのは七森校のメンバーだ。
「あれいない……確かにこっちに来たのに……」
対戦相手が操縦するリーオが先程まで戦っていた相手を見失ってしまった。
「すいません……敵を見失いました!」
少女は仲間に報告する。
『お前、どうしてこんな何もないところで見失ったのよ……』
「仕方ないんですよ。いきなり相手の機体が消えちゃったんですって!」
『消えたっておま……。いや、ちょっと待ってお前が戦ってたMSってどんなのだった?』
急に先輩の表情が変わる。何をそんなに慌てているのがわからなかったが、少女は素直に答えた。
「何か悪魔の翼のようなものが背中にありましたよ。それと大きな鎌を持ってました」
『まずいな。周囲に警戒しろよ!』
「え、なん……」
何でと聞き返そうとした瞬間にそれは起こった。前方。何もない空間からいきなり大鎌を持った黒いMSが現れたのだ。
「ひっ!」
「じゃあね」
突然、目の前に現れてリーオに乗る少女は表情をひきつらせる。
黒いMSに乗った少女がそれだけ言うと、近接攻撃トリガーを押し込んだ。漆黒のMSが大鎌を振り下ろし、リーオを両断した。
右肩から左脇まで斬られたリーオは分裂し、爆発して消滅する。
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プラネテューヌ親衛隊
2018/04/09/07:11
「……先ずは1体」
七森高校2年船見結衣が嘆息する。
彼女の愛機はガンダムデスサイズヘルEW版。悪魔のような翼が特徴的なMSでファイター達の間でも根強い人気を誇り、使用している者が多くいる。
『よう、そっちはどうだ?』
モニターに七森高校ガンプラファイト部の部長である歳納京子の顔が映った。
「今終わったよ」
『さすが結衣。仕事が早いねぇ〜。こっちも終わったぜぇ〜』
京子はピースサインを送ってくる。
「そうか、なら……後はあの2人ーーー」
『結衣せんぱーーーい!』
唐突にちなつの顔がアップで映し出された。これにはあまり表情を崩さない結衣も驚いて目を見開いてしまう。
「お、驚いたぁ……。どうしたの急に?」
『敵を撃墜したんで、その報告を一番に結衣先輩に届けようと通信しましたっ!』
映像のちなつは敬礼をする。
「そっか、頑張ったねちなつちゃん」
『っ!!!!!!!?』
尊敬する先輩に誉められて、ちなつは恍惚な笑みを浮かべて身悶える。
『やったね。ちなつちゃん!』
『あ、京子先輩いたんですか……』
『結衣の時と温度差違くねっ!』
結衣の時と反応が違いすぎて京子は汗を垂らす。2人のいつも通りのやり取りに結衣は苦笑する。
しかし、この場にいる筈のもう1人の仲間の姿はない。結衣は視線を前に戻して空の彼方を見据える。
「後は……あかりだけか」
◇
結衣と離れた場所で激闘が繰り広げられていた。
上空に2体のMSが激しく衝突する。
「そりゃあっ!」
鉄血のオルフェンズに登場するガンダムバエルが刃を振るうが、その攻撃は相手が急降下したことによって空振りに終わる。
「くっ! さっきからちょこまかとぉっ!」
バエルも急降下して相手を追いかける。スラスターの出力を上げるが、相手との距離は縮まらない。
「こっちは最大出力を出してるのに、なんて速さなの……!」
相手の速さに追い付く事が出来ず苛立ちを覚える。
ずっと攻撃をしているが、相手は攻撃する素振りを見せず逃げてばかりなのだ。
「逃げ足だけが速いだけの機体なのっ! ちゃんと真っ向から勝負しなさい! そんな強そうな色してるのに!」
「色は関係ないと思うんだけどなぁ……」
あかりは肩を落とす。強そうな色……わからないまでもない。彼女のダブルオーは京子によってカスタマイズされたのだが、その機体色は白から真紅に変えられていたのだ。
「好きにしていいって言ったけれど……なにもかも大半赤くしなくても良かったんじゃ。おかげであかり。学校の皆からフォン・スパークとか呼ばれるし」
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2018/04/09/07:11
呼ばれたくないアダ名を付けられてあかりは肩を落とす。
「でも、京子ちゃんがあかりの為に作ってくれた機体だから、大事にしてあげないと」
大きく深呼吸をして心を切り替える。いくら機体の色を変えられても、変なアダ名を付けられたとしても、京子が自分の為に一生懸命作ってくれた物に代わりない。
大切な親友が作ってくれたものだから、どんなに嫌な呼び名を付けられても最後までこの機体で戦い抜く。
「さて、この子にも慣れたし、そろそろ反撃と行こうかな……」
あかりが漸く攻撃に転じる。今までは新しく作られた機体を馴染ませる為に集中して攻撃をしてこなかった。
京子が大会本番に渡してきて試合の中で慣らせと無茶ぶりをしてきたからである。しかし、あかりはその無理難題を成功してみせたのだ。
「行くよ、『ダブルレッド!』」
彼女の新しく生まれ変わった愛機。その名は『ダブルレッドガンダム』
その場で急停止させ、方向転換。すぐに相手へ向けて急上昇させる。
「向かってくる……逃げるのを止めたってことねっ!」
バエルが急停止し、向かってくるダブルレッドに剣を振り下ろす。
「やあっ!」
ダブルレッドは腰に帯刀してある鞘から刀を引き抜いた。GNムラマサブレード。本機のメイン武器で京子が作り上げたもの。その切れ味は京子のお墨付きだ。
「うっ! 右手が!」
攻撃は後から繰り出したダブルレッドの方が速かった。振り下ろされた剣を腕ごと斬り落として攻撃を無力化したのだ。
「まだ左腕があるのよ!」
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プラネテューヌ親衛隊
2018/04/09/07:11
バエルには左腕にも、もう1本の剣を握っている。それをダブルレッドに向けて突き出した。
「ダブルレッドの機動力ならっ!」
操作レバーを動かし、ペダルを踏み込んだ。スラスターを一瞬点火させ、瞬時に相手の間合いから逃れる。
「この距離で避けられたっ!」
0距離で放たれた攻撃を避けられて焦り出す。真横に避けたあかりは、既に次の行動に移っていた。
ダブルレッドがバエルの脇腹を蹴り飛ばす。
「なんとーっ!」
吹き飛ばされるバエル。あかりは再びペダルを踏み込んでダブルレッドを飛翔させた。
「これでトドメだよっ!」
「い、いやあああああっ!」
全身のスラスターを全開にダブルレッドが高速で突進していく。その凄まじい速度にバエルのパイロットが慌てて目を泳がせる。
パニックを起こした今の彼女に避ける術はない。懐に飛び込みダブルレッドはバエルの胸に刃を突き立てた。
「よっと!」
あかりはブレーキをかけてダブルレッドを停止させる。
対戦相手のバエルは、今の一撃で停止していた。
「ま、参りました〜」
対戦相手がモニターに降参を伝えてくる。
『勝者は、七森高校ガンプラファイト部ですっ!』
その後。MCの勝利宣告がバトルフィールドに響く。観客の歓声が沸き立ち。その声に耳を傾け、あかりは微笑むのだった。
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2018/04/09/07:11
◇
東京のとあるアパートの一室で1人の少女が全国大会を鑑賞していた。
テレビに映るのは、真紅に染められた機体。あかりのダブルレッドである。
少女は画面に向けて手を伸ばした。自分も今頃はその場所にいたかもしれない……。けれど、今の自分はそこに行けない。彼女には全国大会に行けない理由があったのだ。
「けど、いつかきっと……」
いつか自分も全国大会へ行けると信じて、そこで親友と全力で戦える日がやって来ると信じて伸ばした手を拳に変える。
視線はテーブルの上に、そこには鉄血のオルフェンズ外伝に登場する主人公機ガンダムアスタロトのカスタム機が凛々しく立っていた。
◇
「……あ」
アーシェは控え室から、通路へと移動していた。ここなら今しがたファイトを終えた七森高校が通るからだ。そして彼女の予想通りに前方から七森高校のメンバーが歩いていく。
「あかり!」
「あ、アーシェちゃん!」
アーシェが名前を呼ぶと、あかりが顔を綻ばせて駆け寄ってきた。
「第1回戦突破おめでとう。かっこよかったわよ。あなたの新しい機体」
「えへへ、ありがとう。アーシェちゃんも1回戦通過出来てよかったね」
自分の愛機が誉められてあかりは喜ぶ。
「あかり〜。ひょっとしてその子が例の?」
後方から京子が歩いてくる。あかりは振り向いて首肯した。
「そうだよ。この子が桜木・R・アーシェちゃんだよ」
「へぇ〜」
京子はアーシェのある一点を見つめる。そしてにこやかに笑った。
「大変よろしい物をお持ちですな!」
「っ!?」
アーシェは京子の言葉の意味を理解し、顔を紅潮させて胸を隠した。
「お前は何を言ってるんだよ……」
「ぐはっ!」
結衣が京子の頭にチョップを叩き込む。
京子はその場でうめきながらうずくまった。
「全く京子先輩は……。初対面の人に向かって何を言ってるんですか……」
「はぁ……。こんなんで本当に部長が勤まってるわね。桜木さんだっけ。ごめんね、うちの部長が……」
「いえ、いいです……って、この人が部長だったの」
「そうだよ。この人が歳納京子ちゃん、前にも言ったけどあかりとは幼馴染みなんだよ」
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2018/04/09/07:12
「うん、話には聞いてたけど……こっちの人が部長なのかと……」
アーシェは京子とは別の人物を見る。赤紫色の髪を一つ括りにした少女を……。
彼女は目をぱちくりと開閉させてアーシェに視線を送っていた。しばらくして口角を上げて口を開く。
「ううん、私は違うわ。彼女とはパートナーなのよ」
「パートナー?」
「ようするにサブパイロットよ」
「ああ、そういう事ですか」
説明を聞いてアーシェは納得した。1体のガンプラに2人で共に操作するファイターも少なくはない。
「名乗ってなかったわね。私は杉浦綾乃よ。七森高校生徒会副会長をしているわ」
「ふ、副会長が大会に参加してるんですかっ!」
驚きで声を発したアーシェ。しかし、自分達も生徒会でなおかつ副会長のかおるこも参加しているのだから驚くのは今更だと冷や汗を流す。
「私は生徒会とガンプラファイト部を掛け持ちしているのよ。部員が少なかったからね……」
「……本当にごめんね。無理矢理誘って」
結衣が申し訳なさそうに眉を八の字にする。
「船見さんが謝る必要はないわよ。誘ってきたのはこいつだから……」
綾乃は京子を睨む。結衣のチョップのダメージから回復して起き上がっているところだ。
「ん、なになに? あたしの話? 照れちゃうなぁ〜。もっと誉めていいんよ」
「誉めてねーよ」
「誉めてないわよ」
勘違いをしているのあほんだらに2人は盛大な溜め息を吐いて肩を落とした。
「な、何か面白い人ね。歳納先輩って」
「でしょ。毎日が楽しいよ」
「いや、毎日このテンションで疲れるんだけど……」
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2018/04/09/07:12
笑顔のあかりと違ってちなつは疲れ気味な顔をしている。彼女の気苦労が伝わってくるようだ。
「そういえば、次の2回戦で桜翠は見滝原と戦うんだよね」
あかりは話題を変えてきた。アーシェは短く首肯する。
「そっか、あの時一緒に戦った子達だよね」
「ええ、そうよ」
一緒に戦ったあかりは、さやかとマミの事を覚えていた。
「見滝原かぁ……。まさか野薔薇に勝つとは思わなかったね」
結衣と綾乃と話していた京子が見滝原と聞いて、話に加わってくる。
「巴ちゃんの台詞が正しければ……今回の大会に出てるチーム全ての対策を練ってるだろうね。こりゃ厄介かも……」
「そう……ですね……」
京子の言葉を耳にし、アーシェは顔を曇らせる。
あの言葉が本当なら桜翠対策もしてきている筈……こちらのデータを取りに来たのは恐らくあの学園祭だと思われる。
「どうしたの?」
急に黙ったからか、あかりが心配そうにこちらを見つめていた。
「ううん、何でもないわ」
「そっか、良かったぁ〜。具合でも悪いのかと……」
「そんなんじゃないわよ。気にしすぎよ」
あかりは笑顔になる。アーシェは彼女に心配をかけたくなかった。優しいあかりの事だ。きっとさやかとの事で悩んでいると知れたら心配するに違いないから。
「アーシェちゃん。頑張ってよ。桜翠には勝ってもらわないと困るんだから」
「そうそう。決勝戦で戦うんだからね」
「もう、決勝に行けると思ってるのか……」
「まあ、それが歳納京子だからね」
ちなつと京子は気合いを見せ、結衣と綾乃は肩を竦めていた。
「じゃあ、アーシェちゃん。あかり達は観客席で応援しているから」
「うん」
「絶対決勝戦で戦おうね!」
あかりが手を差し伸べる。
「ええ、絶対よ!」
アーシェはその手を握り返した。2人は約束を再び交わして別れるのだった。
◇
「……ん?」
七森と別れ、控え室に戻る途中。アーシェは見知った顔を前方に見つけた。
「アーシェさん」
「……さやか」
さやかが真剣な眼差しでこちらを見ていた。アーシェの事を待ってたようだ。
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2018/04/09/07:12
「1回戦突破おめでとう」
「……どうも」
さやかに会うのは、彼女達が1回戦を始まる前以来。それ以降は麗香が控え室にやって来て永遠と泣いているのを相手にしていたせいで中々会いに行けなかった。
いまでも控え室で泣いているに違いない……。
「次、あたし達とですね」
「そうね。こんなに早く当たるとは思ってなかった」
「あたしもです」
「……ねえ」
アーシェは本題に入ろうとする。この胸の内にある疑問を早く拭い去りたかった。
「私達の対策も練っているんでしょう?」
「……」
そう尋ねると目を泳がせ始める。さやかに隠し事は向いていないとアーシェは思う……。しばらく沈黙が続いて漸くさやかは口を開いた。
「……はい」
「やっぱりね」
アーシェの推測は当たっていた。肩を竦める。
「学園祭の時よね?」
「ええ、まあ……」
全身から冷や汗を掻き出すさやか。申し訳ない気持ちが勝ったのか、姿勢を正して頭を深々と下げる。
「本当にすいませんでしたっ!」
「な、何で謝るの……」
唐突に謝罪されてアーシェは困惑する。さやかは頭を上げて続けた。
「学園祭。アーシェさんに真意を告げずに近づいた事です……。遊びに来たって嘘ついて」
「いいわよ。そんなことで謝らなくて」
アーシェは気にしていない様子だった。さやかは目を丸くして彼女を見る。
「え、怒ってないんですか?」
「何でよ?」
「だ、だって騙したし……」
「まあ、驚きはしたけどね。でも、マミの為なんでしょ……1度も大会で勝てなかった先輩達の為に優勝を捧げるって、そんな話を聞いたら怒るに怒れないわ。それに相手の情報を分析するのも戦略の内よ。卑怯でも何でもないわ」
アーシェは苦笑する。さやかは呆然とした顔でこちらを見据える。
「アーシェさんって、懐深いですね」
漸く笑ったさやかの一言がそれだった。
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2018/04/09/07:12
「何よ、浅い人間だと思っていたの?」
「いや、そうじゃないですけど……」
「まあ、いいわ。理由はどうあれ……私達は負けるつもりないから、倒したかったら全力で来なさい」
肩を竦め、アーシェは挑発するようにその言葉をさやかにぶつける。
その言葉に応えるように、さやかは口角を上げた。
「もちろんですよ。最初から楽に勝てると思ってませんから、全力でいきますよ」
「ええ、楽しみにしてるわ」
「はい。楽しみにしててください。それじゃ、次はファイトで会いましょう」
「わかったわ」
全てを伝え終えたさやかは踵を返して去っていく。
「行っちゃったね」
「わっ!?」
さやかが離れていくタイミングを見計らって、通路の影からかおるこが出てくる。
突然出てきてアーシェの心臓がドクン、と跳ね上がった。
「か、かおるこ先輩っ! いつから居たんですか!」
「結構最初の方からずっと居たよ」
「い、居たなら言ってくださいよ……」
「ごめんね。出ていきにくい場面だったから」
かおるこは苦笑いを浮かべる。すぐに表情を戻して、口を開いた。
「でも、良かったよ。何か迷っているように見えたけど、色々吹っ切れたようで」
「ご心配おかけしました。さやか達が騙していたとはいえ、私達が正々堂々真っ向から勝負をするのには変わりませんものね。私は私のやり方で見滝原を倒します」
「ふふ、期待しているよ」
頼もしき後輩の姿にかおるこは口許を綻ばせる。
「じゃあ、行こうか。機体のメンテも必要だしね」
「はい!」
アーシェは元気よく返す。2回戦に向けて機体のメンテナンスをするべく、2人は控え室へと戻っていった。
◇
そして、時は来た。桜翠学園と見滝原の戦いが始まろうとしている。
MCの指示でシュミレーターに搭乗したファイター達。自分の愛機を発進させてフィールドに飛び込む。
その様子を観客席で幸樹は見ていた。
「始まりましたねぇ。先輩はどっちが勝つと思います?」
「桜翠に勝ってほしいけど、相手は準決勝に進んだチームを倒した強敵だからな。まだハッキリとわからないよ」
「へえ、意外だね。アーシェに勝ってほしいって言うと思ってたのに……」
兎亜が意外そうに見てくる。
「もちろんアーシェには勝って欲しいけれど、相手が相手だからな」
「相手を知ってるんですか?」
「……まぁな」
幸樹は未尋に短く返す。相手は情報を分析して対策を練ってくるような相手だ。桜翠でも油断ならない存在であることに変わりはない。
最後まで油断しないように幸樹は心の中でアーシェにエールを送る。
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