ほむら「あなたをさらいに夜がくる」
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灰色ねこ◆4aH6a11ZwA
2020/09/13/22:28
夜の見滝原
ほむら「……………」
ほむら(今回の時間軸、今までの時間軸と比べて魔女の数が少ない)
ほむら(当然ストックできるグリーフシードの数も少なくなるわけで、このままじゃ今回もワルプルギスの夜を越えられない…)
ほむら(見滝原中学への登校は明日。今夜のうちに、一つでも多くのグリーフシードを集めないと――)
よまわりさん「……………」ぬっ
ほむら「何!?」
ガバッ
『魔法少女まどか☆マギカ』×『夜廻シリーズ』
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灰色ねこ◆4aH6a11ZwA
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灰色ねこ◆4aH6a11ZwA
2020/12/06/22:08
翌日
まどか「ええっ!? さやかちゃんがコトワリさまに『魔法少女になるための縁』を切られた!?」
ほむら「ええ」
マミ「私が鹿目さんたちを助けるために廃工場に行ってるあいだに、そんなことが…」
ほむら「…鹿目まどか、よまわりさんに捕まったの?」
まどか「うん……あのね、仁美ちゃんが魔女に操られちゃって、一緒についていったの。それで」
ほむら(箱の魔女のことね…)
まどか「またよまわりさんに助けてもらっちゃった」ティヒヒ
ほむら(そしてよまわりさんが箱の魔女を倒して、自分の縄張りにまどかとワカメを連れていったと)
ほむら(…そう言えばあのワカメ、名前なんていうのかしら)
マミ「鹿目さん、連絡先を教えるのを忘れた私にも非はあるけど、よまわりさんは『危険な存在』よ。もう少し危機感を持ってちょうだい」
まどか「ご、ごめんなさい」ペコッ
ほむら「…それで、美樹さやかのことなのだけれど」
まどか「うん、どうしよう…」
マミ「……………」
マミ「暁美さん、美樹さんは、『コトワリさまを絶対に許さない』と言ったのよね?」
ほむら「ええ、言ったわ」
マミ「ハルちゃんが言っていたわよね、コトワリさまは神様だって」
まどか「はい、言ってました」
マミ「二人とも、今日の放課後、私の家に来てもらえるかしら」
ほむら「別にかまわないわ」
まどか「いいですけど、さやかちゃんは?」
マミ「もちろん、連れてきて」
◆
数時間後、佐倉家
モモ「お姉ちゃーん、マミさんから電話ー!」
杏子「え?」
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灰色ねこ◆4aH6a11ZwA
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灰色ねこ◆4aH6a11ZwA
2020/12/06/22:09
杏子「あたしが魔法少女になった時のことを話す?」
マミ『ええ、手伝ってほしいの』
杏子「…嫌だ。言いたくない」
マミ『…お願い。あなたと同じ轍を踏みそうな子がいるの』
マミ『コトワリさま――神様に強い怒りを抱いてる』
杏子「…っ!」ビクッ
杏子「――わかった。行くよ」
マミ『ありがとう。それじゃあ、ね』
杏子「ん」ピッ
モモ「お姉ちゃーん」
杏子「今度は何だ?」
モモ「お友達が来てるよー」
◆
杏子「優木沙々が見滝原に向かった?」
モブ魔法少女A「そうみたいなんだよ」
杏子「あの野郎……最近大人しくしてると思ったら、また悪巧みしてやがるな?」スクッ
モブ魔法少女K「行くの?」
杏子「ああ。マミのやつ、まだあたしのこと気にしてるみたいだからな。その隙を突かれてコロッと操られるかもしれねー」
杏子「…おまえら、一応言っておくけど、あたしがいないあいだに――」
モブ魔法少女A「何もしないって」
モブ魔法少女K「おばけとかよまわりさんとか、杏子ちゃんには何度もお世話になったからね」
杏子「…そっか。疑って悪かった」
杏子「じゃあ、行ってくる」
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灰色ねこ◆4aH6a11ZwA
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灰色ねこ◆4aH6a11ZwA
2020/12/06/22:10
日本。それは、八百万の神々と千万の悪鬼が住まうお伽の国。
ありとあらゆるモノに神が宿り、住まい、人々と常に共にあった。
人々が神を信じた理由。それは一重に、人が自然現象を、不可解なモノを恐れたからである。故に、神とモノノケの起源は同じであった。
だが、文明の発達によって、人々は「わからないもの」を無くしていき、
神も、モノノケも恐れなくなり、信じなくなった。
居場所を失ったモノたちは、こう思った。
「さびしい」――と。
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灰色ねこ◆4aH6a11ZwA
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灰色ねこ◆4aH6a11ZwA
2020/12/19/22:10
まどか「さやかちゃん、マミさんがみんなに集まってほしいって言ってるよ」
さやか「…ごめんまどか、しばらく一人にして」
まどか「じゃ、じゃあさあ、昨日の仁美ちゃんのことを教えてあげるから。それだけでも聞いて!」
さやか「それなら…」
まどか「…ワカメの呼吸」ボソッ
さやか「えっ」
まどか「13(ひとみ)の型」スウッ
さやか「ちょ、ちょっと? まどかさん!?」
まどか「"腹パン"!!」(マ)ドカァ!
さやか「おぎゅーーー!!?」
ドサッ
まどか「ごめんね、さやかちゃん」
ほむら(さすがまどか、やる時はやるわ…)
仁美「あの、まどかさん? 私、本当にそのようなことをしたのですか?」ピクピク
まどか「うん」
ほむら(箱の魔女の趣味ね)
まどか「じゃあほむらちゃん、さやかちゃんを運ぶのを、手伝ってくれる?」
ほむら「任せなさい」ファサッ
中沢(き、貴重な男キャラとしての立場が…)ピクピク
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灰色ねこ◆4aH6a11ZwA
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灰色ねこ◆4aH6a11ZwA
2020/12/21/22:28
マミホーム
ハル「お姉ちゃんたち、遅いね」
マミ「佐倉さんはとなり町に住んでるし、鹿目さんたちはおそらく、美樹さんのことで手間取ってるんでしょうね」
ハル「……」
マミ「…ねえ、ハルちゃん。みんなが来る前に、一つだけ確認してもいいかしら」
ハル「え?」
マミ「コトワリさまは、悪い神様じゃない。そうなのよね?」
ハル「うん」コクッ
マミ「…わかった。じゃあ、私もコトワリさまを信じる」
マミ「神様に必要なのは、信じる心だもの」ニコ
ハル「ありがとう。コトワリさまも、きっと喜ぶと思う」ニッコリ
ガチャ
杏子「おーす、邪魔するぜマミー」
マミ「いらっしゃ(ry」
まどほむ「「お邪魔しまーす」」ワッセワッセ
さやか「」ブラーン
マミ「えー!? 何事ー!!」
まどか「一人になりたいと言うので強行手段に出ました」キッパリ
マミ「あなた、意外とアグレッシブなのね!?」
ハル(まどかお姉ちゃんって、私に似てるかも…)
ハル「あれ? 今日は中沢お兄ちゃんはいないの?」
ほむら「ええ」
まどか「さやかちゃん、もう起きていいよー」ユサユサ
さやか「う、うーん……雪国まいたけ……はっ!?」
マミ「美樹さん、大丈夫?」
さやか「マミさん…」
マミ「ごめんなさいね。今は、一人になりたいでしょうけど、これは本当に聞いてほしい話なの」
さやか「…話ってなんですか?」
杏子「あたしが魔法少女になった夜の話だよ」
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灰色ねこ◆4aH6a11ZwA
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灰色ねこ◆4aH6a11ZwA
2021/01/01/08:56
あれは、あたしがまだ小学生だった頃のこと。
杏子『ただいまー!』
シーン…
杏子『…あれ?』
杏子『親父? 母さん? モモ?』キョロキョロ
杏子『出掛けてるのかな…?』
だけど、真夜中になっても誰も帰ってこない。それで、電話をかけようとしたら。
『■■■■■■■■■■ッ!!』
杏子『ッ!?』
声とも呼吸音ともつかない音が聞こえてきた。
前にも言った通り、あたしには霊感がある。これが普通じゃないってすぐにわかった。何かが起きたんだって。
杏子『探さなきゃ…!』
そこから先はもうさんざんだったよ。懐中電灯を点けた途端になんかでかい毛むくじゃらにおいかけられたと思ったら、街中おばけだらけになってたんだ。
あたしにはまだ、親父みたいに祓う力は無かった。だから逃げるしか無かった。
逃げて、逃げて逃げて逃げて――
よまわりさん『……』ガバッ
杏子『わ…!?』
よまわりさんに捕まった。
そして、廃工場から脱出しようとしてる時に、マミとキュゥべえに出会ったんだ。
QB『僕と契約して、魔法少女になってよ!』
魔法少女について手短に説明してもらって、ソウルジェムが魔法少女の魂だってことにひと悶着あったけど。
こうしてる間にも、あたしの家族は怖い思いをしている。だがら、
杏子『家族を助ける力が欲しい!』
あたしは、魔法少女になることを選んだんだ。
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灰色ねこ◆4aH6a11ZwA
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灰色ねこ◆4aH6a11ZwA
2021/01/01/08:56
マミと協力して、廃工場から脱出した後、よまわりさんがあたしたちの前に現れた。
今度はよまわりさんは、あたしたちをさらうこと無く、すぐに姿を消した。残ったのは一枚の紙切れ。
クレヨンで書かれた何処かの風景と、『たすけて』の文字。モモの字だった。
マミ『これ、もしかして…』
杏子『知ってるのか!?』
マミの案内でやってきたのは、見滝原市にできたばかりのデパートだった。
最上階に行くと、そこにはあたしの家族と、
『■■■■■■■■ッ!!』
身の毛もよだつ化け物がいた。
杏子『てめえが……てめえがあたしの家族を!』
でもあたしは怖くはなかった。マミがいたし、何より、家族を助けないと、それしか頭になかった。
だけど、
杏子『ッ!?』ハッ
マミ『佐倉さん、どうしたの!?』
戦ってる最中に気づいたんだ。
杏子『こいつ、魔女でもおばけでもねえ! こいつは』
見滝原の土地神だった。
QB『そう言えば、このデパートは元々、ここにあった神社を取り壊して建てられたものだったね』
信仰を失い、居場所まで奪われた神の怒りと悲しみ。状況を理解してしまったあたしに、土地神の思いが押し寄せてきた。
『嫌だ、嫌だ、嫌だ。消えたくない、消えたくない、消えたくない』
『どうしてこんな目にあわねばならない。土地を豊かにしてほしいと願ったのではなかったのか。土地を潤してほしいと望んだのではなかったのか』
『そのためにこの地に迎え入れたのでなかったのか』
『願いをかなえたではないか。望みをかなえたではないか』
『これからもずっとおまえたちと寄り添い、共にあり続けると思っていたのに』
『願いがかなったから、望みがかなったから、捨てるのか』
杏子『…!』
やっぱりというか、この世のものの声じゃなかった。聞いてるだけで何処かに針が刺さったかのような感覚に襲われる。
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灰色ねこ◆4aH6a11ZwA
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灰色ねこ◆4aH6a11ZwA
2021/01/01/08:57
忘れられて、孤独になって、必要とされなくなって。
土地神は、信心深いあたしの家族に助けを求めた。それが真相。
でもそれは、あたしの家族を生け贄にするということ。
それを避けるにはどうすればいい。あたしは考えた。
そして、
杏子『神様!』
杏子『あなたをうちの神社で、うちの神様と一緒に祀ります! だから、あたしの家族を返してください!』
杏子『頼みます…! この通りですから…!』
自然と頭が下がって、土下座してた。
『…………………………』
『…忘れるな。忘れてはならない』
『神は。神だけではない。人ならざるものは、常に人のそばにいる』
『忘れるな、忘れるな、忘れるな…』
ズキッ
杏子『あぐっ!?』
マミ『佐倉さん!』
◆
杏子「神様は鎮まり、あたしの家族は無事に帰ってきた」
杏子「でも神様は、あたしが忘れないように、あたしの視界を、常に夜と同じにした」
ほむら「それって、どういうこと?」
杏子「見えるんだよ。いろんなものが。朝でも夜でも関係なく」
杏子「視界を真夜中の世界に持っていかれた。おかけで人がまともに見えないんだ」
杏子「まどかにさやか、そしてほむらにハル。あたしは、おまえたちがそこにいることはわかるけど、どんな顔で、どんな髪型で、どんな格好してるか、全然わかんねえんだよ」
まどか「そんな……じゃあ、せっかく助けた家族のことも、よく見えないの?」
杏子「ああ…」
まどか「酷い…」
杏子「ああ、酷いよ」
マミ「……」
ほむら(それが、この時間軸で佐倉杏子が払った代償)
ほむら(他の時間軸では、家族が死んでいたから佐倉杏子は家族に会うことができない。この時間軸では、家族が生きているけど、もう見ることができない)
ほむら(どちらにせよ、生き地獄)
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灰色ねこ◆4aH6a11ZwA
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灰色ねこ◆4aH6a11ZwA
2021/01/01/09:00
さやか「何で…」
さやか「何でだよ! 何で落ち着いてるんだよ!」
さやか「家族をさらって、生け贄なんかにしようとしたんだろ!? 倒せばよかったのに!」
杏子「そんなことしたら、祟りで見滝原が滅びるぞ。土地神を失った土地は必ずそうなる」
杏子「…あのな、100%人間に都合のいい神様なんていないんだよ。少なくともこの国には」
杏子「日本の神様には、和と荒という二面性がある。和は人間に対して優しい性格。雨や日光の恵みとか、神様の優しくて平和的な部分」
杏子「荒は神様の怒りで、人の心を荒廃させて争いへ駆り立てる神様の働き」
杏子「だけど、荒の性格が悪いわけじゃない。むしろ荒こそが神様の本当の力。荒を祀る事で、悪い面から人々を守る事に繋がるんだ」
杏子「人に御利益をもたらすだけが神様じゃない。人間に災禍をもたらす荒魂の側面もあって、むしろそっちの方が本質的で重要なんだ。その二面性を理解しないで『こいつは邪悪だ』と決め付けるのは間違いなんだよ」
杏子「神様は――」
ハル「祈りを捧げる人間が、何を考えているかによって変わる」
まどか「ハルちゃん?」
杏子「やっぱり、コトワリさまもそうだったんだな?」
ハル「うん」
ハル「コトワリさまの神社はゴミだらけで、ときどき歪んだお願いをされるだけの存在になってた」
『暴力を振るう彼と別れたい。そして不幸になりますように。もういやだ』
『父親との縁が切れますように。そして2度と顔を合わせたくない。もういやだ』
『あいつがいなくなりますように。死ね死ね死ね死ね死ね死ね。もういやだ』
ハル「かわいそう。こんな扱いをされたら、わたしだってうんざりする。そう思った」
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灰色ねこ◆4aH6a11ZwA
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灰色ねこ◆4aH6a11ZwA
2021/01/19/22:12
杏子「そっか…」
杏子「つーことで、さやか。コトワリさまを憎むのはおまえの勝手だ」
杏子「でも、復讐しようなんて考えるんじゃねえぞ。コトワリさまだって被害者なんだ。それに」
杏子「あたしやハルみたいには、なりたくないだろ?」
さやか「…!」
さやか「何だよ。唐突な過去語りが始まったかと思えば、遠回しにあたしを否定するわけ?」
杏子「そうじゃない。あたしだって、神様に不満はある」
杏子「だけど、相手は腐っても神様なんだ。魔女やおばけよりも、ずっと危険なんだよ。もうちょい落ち着いて対処してくれ」
さやか「……」
さやか「話は終わり? あたし、帰らせてもらいます」
ハル「ちょっと待って!」
さやか「ハルちゃん?」
ハル「みんなに聞きたいことがあるの」
マミ「聞きたいこと?」
ハル「ワルプルギスの夜って、知ってる?」
まどさや「?」キョトン
ほむマミ杏子「( ゚д゚)」
杏子「ワルプルギスの夜!? その名前、どこで聞いた!?」
ハル「病院で魔女が出たあの日、マミお姉ちゃんに言われて帰る途中でよまわりさんに会ったの」
ハル「その時によまわりさんが落とした紙に書いてあったの。ワルプルギスの夜って」
マミ「その紙、今も持ってる?」
ハル「うん。ほら」スッ
杏子「ちょっと貸してくれ!」
杏子「…確かに、ワルプルギスの夜って書いてあるな」
さやか「ねえ、そのワルプルギスの夜ってなんなの?」
マミ「最強最悪の伝説の魔女のことよ。ずっと昔から存在してるっていわれているわ」
さやか「うへぇ……マジですか」
まどか「でも、どうしてよまわりさんは、その名前が書かれた紙をハルちゃんの前に置いていったのかな?」
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灰色ねこ◆4aH6a11ZwA
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灰色ねこ◆4aH6a11ZwA
2021/01/24/22:12
ほむら「…ねえ、鹿目まどか。私が以前、言ったことを覚えているかしら」
まどか「え…?」
ほむら「あなたをさらいに夜が来る」
まどか「あ……病院での魔女の時に…」
さやか「あたしも聞いた!」
ほむら「あれは、ワルプルギスの夜のことなの。私は、やつを倒すためにここへ来た」
まどか「え。それってつまり――」
マミ「ワルプルギスの夜が、見滝原に現れるってこと!?」
ほむら「ええ」ファサッ
ほむら「『夜の恐怖から子供を守る』というキュゥべえの推測が正しいのなら、よまわりさんはそのことを伝えたかったと考えるのが妥当だと思うわ」
ハル「でも、どうしてそれを私に伝えたの?」
杏子「そりゃあ、この中じゃおまえが一番夜側だからだろ。神様に左腕ぶった斬られる程の恐ろしい夜を乗り越えて、こうして生き延びてるんだからさ」
ハル「……」
さやか「ちょっとあんた! はっきり言い過ぎでしょ!」
杏子「おまえに言われたくねえ」
杏子「で? ほむら、おまえの予測だと、ワルプルギスの夜はいつ見滝原に現れるんだ?」
ほむら「2週間後」
杏子「そうか……こりゃ、ますます沙々のやつを放っておくわけにはいかないな」
まどか「沙々?」
杏子「優木沙々。風見野の魔法少女なんだけど、見滝原に向かったらしい」
杏子「劣等感の強いやつでな、今まで何度かトラブルを起こしてるんだ」
マミ「どんな魔法を使うの?」
杏子「洗脳。魔女を操ったりできる」
ほむら(初めて聞く名前ね。覚えておきましょう)
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灰色ねこ◆4aH6a11ZwA
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灰色ねこ◆4aH6a11ZwA
2021/02/06/22:10
さやか「洗脳って、どう対処すればいいの?」
杏子「さっきも言ったが、あいつは劣等感が強い。だから、洗脳できるのは『自分より優れている』と感じた相手だけだ」
杏子「あたしは視界がおかしくなってるおかけで見下されてるから、対象外なんだよ」
さやか「じゃあ、魔法少女じゃないあたしとまどか、それにハルちゃんは大丈夫ってわけね」
まどか「ほむらちゃんとマミさんが危ない…?」
マミ「安心して。そんな簡単に操られたりなんかしないわ」ニコ
ほむら(だといいけど…)
ほむら「…私はワルプルギスの夜を乗り越える。たった一人の魔法少女に、遅れを取るわけにはいかない」
まどか「ほむらちゃん…」
ほむら「そこで――巴マミ、佐倉杏子。あなたたちに協力してほしい」
マミ「私は構わないわ。見滝原の危機ですもの」
杏子「……」
杏子「交換条件だ。沙々を探すのを手伝ってくれ」
ほむら「わかった」
ほむら(どの道、衝突することになるでしょうし)
杏子「よし、交渉成立だ」
杏子「それから、ハル」
ハル「なに?」
杏子「一応言っておく。コトワリさまにワルプルギスの夜を倒してもらおうなんて考えるな」
ハル「…うん、わかってる」
ハル「神様は、便利な道具なんかじゃない。わたしは、そのことを忘れない」
杏子「よし、いいこだ」
さやか「……」
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灰色ねこ◆4aH6a11ZwA
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灰色ねこ◆4aH6a11ZwA
2021/02/16/22:05
廃工場
ほむら「……」スタスタ
ピタ
よまわりさん「……………」
ほむら「見つけた…」
ほむら「あなたの目的は何? どうやってワルプルギスの夜が来ることを知ったの?」
よまわりさん「……………」
ズリッ ズリリッ
ほむら「待ちなさい!」
QB「無駄だよ」
ほむら「!」
QB「今まで何度も対話を試みようとしたけど、結果はいつも無視だ。よまわりさんは、本当にわけがわからないよ」
ほむら「どうしてここに?」
QB「おばけの観察さ。完全に放置していい存在とは言えないからね」
QB「魔法少女と敵対する怪物は、魔女だけで十分だよ」
ほむら「……」
ほむら「もうひとつ、いいかしら」
QB「なんだい?」
ほむら「風見野から優木沙々という魔法少女が来ていると聞いたのだけれど、何か知らないかしら?」
QB「ああ、それは僕が呼んだんだよ」
ほむら「どうして?」
QB「ひとつって言ってなかったっけ?」
ほむら「まだ答えにたどりついてないじゃない」
QB「それもそうか」
QB「優木沙々を呼んだ理由は、コトワリさま対策だよ」
ほむら「コトワリさま対策?」
QB「そうさ」
QB「コトワリさまには早急な対処が必要だ。あれは、どんな因果も平然と断ち切る」
QB「契約可能な人材が減るようなことがあっては困るんだ」
ほむら「そう」
ほむら「佐倉杏子からの優木沙々への評価は、だいぶ低いみたいだけど、大丈夫なのかしら?」
QB「問題無いよ」
QB「彼女は僕の思い通りに動いてくれる」
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灰色ねこ◆4aH6a11ZwA
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灰色ねこ◆4aH6a11ZwA
2021/02/26/22:07
沙々「くふふ…♪ 簡単なことです」
沙々「佐倉杏子に何度も煮え湯を飲まされてきたのは、無駄ではありませんでした」
沙々「狙うはハルという名の子供ただ一人。信仰を一度失った神様であるコトワリさまにとって、彼女は『自分を正しく信仰してくれる唯一の信者』。事実上の巫女です」
沙々「そんな人材を放っておく神様がいるでしょうか? いいえ、いません」
沙々「彼女を追い詰めれば、コトワリさまは必ず出てくる」
沙々「問題は彼女をどうやって追い詰めるか、ですが…」
沙々「それも大した問題ではありませんね」
沙々「くふふ♪」
◆
翌日、病院
さやか「恭介ー、今日もお見舞いに……およ?」
恭介「やあ、さやか。今日もありがとう」
恭介「ん、んん…!」ピクピク
さやか「なにしてるの?」
恭介「自主的なリハビリ。腕に力を入れてるんだ…!」
さやか「リハビリって、恭介の腕はもうだめなはずじゃ…」
恭介「回復の兆しが出たんだよ! 奇跡が起きたんだ!」
さやか「ええ!?」
さやか(うそ、何で…?)
ハル『コトワリさまは、私が生まれた町の神様なの。悪い縁を切って、良い縁を結んでくれるんだって』
さやか(……)
さやか「まさか、コトワリさまが切ったのって…!?」
恭介「どうしたの?」
さやか「ごめん恭介! 用事思い出したから帰るね!」ダッ
恭介「え? ああ、うん。またね−−って、病院で走ったらダメだよ!」
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灰色ねこ◆4aH6a11ZwA
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灰色ねこ◆4aH6a11ZwA
2021/03/07/22:32
マミホーム
ほむら「というわけなのだけれど」
杏子「沙々がコトワリさま対策? あいつでどうやって神様を止めるつもりなんだ…」
ほむら「あなたは神様に勝ったじゃない」
杏子「勝ってない。やめてくれってお願いしただけ」
杏子「コトワリさまを呼べるハルを直接狙うつもりか? でも、そんなことをすればコトワリさまに即返り討ちにされるはず…」
マミ「ねえ、キュゥべえからその沙々という子の居場所は聞かなかったの?」
ほむら「居場所を積極的に変えてるからわからないそうよ。あいつは嘘は吐かないから、本当のことでしょうね」
杏子「こっちが動くことも想定済みってか。当然だな」
杏子「…とりあえず、ハルが襲われる可能性がある以上、あいつの側にいるのが妥当か」
マミ「そうね」
ほむら「異議なし」
◆
鹿目家、まどかの部屋
まどか「……」
よまわりさん「……………」
まどか(またいるぅ…)
まどか「……」
まどか「ねえ、よまわりさん。どうして私を見張ってるの? 私、夜の世界に行ったらダメなの?」
よまわりさん「……………」
まどか「…私ね、魔法少女になれるって知って、嬉しかったの」
まどか「私、昔から得意科目とか他人より優れた才能とか、そういうのが無くて…」
まどか「誰の役にも立てなくて、周りに迷惑をかけっぱなしだったんだ」
まどか「小学生の頃、一人で何でもできる先輩に憧れて、彼に弟子入りしたこともあったんだけど、それもうまくいかなくて…」
よまわりさん「……………」
まどか「ねえ、よまわりさん。よまわりさんがみんなを廃工場に拉致したり、私を見張るのは、夜の恐怖からみんなを守るためなの?」
まどか「もしそうなら、私はあなたみたいに『守る側』になりたい。誰かの役に立ちたいよ…」
よまわりさん「……………」
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灰色ねこ◆4aH6a11ZwA
2021/03/07/22:34
よまわりさん「…!」ピクッ
ぐりん
まどか「よまわりさん? 何で怒りの姿に…」
ぐにゃあぁ…
まどか「これは、魔女の結界!?」
よまわりさん「!」
ゲルトルート「……」ユラユラ
エルザマリア「……」ウネウネ
よまわりさん「ーー!」ダッ
エルザマリア「……」スッ
触手 < ドシャア!
よまわりさん「!」ギチギチッ
まどか「よまわりさんが荷造りされた!」
スタスタ
沙々「あなたに用はありませんよ、よまわりさん」
沙々「はじめまして、鹿目まどかさん。さすがに病院を襲うのは気が引けるので、あなたを直接狙わせてもらいました」
まどか「あなたは……あなたが、優木沙々!?」
沙々「はい。私の野望達成のため、一緒に来てもらいますよ。くふふ♪」
まどか「…!」
よまわりさん「! ! !」ジタバタ
触手 < ブチブチ
エルザマリア「…!?」
沙々「おやおや、やはりそう長くは持ちそうにありませんね」
沙々「どうします? まどかさん。このままよまわりさんが暴れたら、あなたの家族とおうちはどうなりますかね?」
まどか「…!」ギリッ
まどか「わかった……一緒に行く」
沙々「ありがとうございます♪」
沙々(これでよし。どうせ嘘を吐かないキュゥべえ経由で、私の目的は既に他の魔法少女にバレています。コトワリさまを呼べるハルちゃんの方に戦力が集中することは火を見るより明らか)
沙々(ならば、まずは外堀を埋めませんとねぇ…)ニタァ
まどか(隙を見て岩盤に叩きつけてやる…)ゴゴゴゴ…
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2021/03/21/22:24
ハルの家
杏子「さてと、誰が入る?」
マミ「みんなで入らないの?」
杏子「見張りがいるだろ? あたしはそっちをやらせてもらう」
ほむら「…適材適所ね。私も見張りをするわ」
マミ「え! 私だけ!?」
ほむら「人付き合い、得意じゃないもの」
杏子「後は任せたぞ、マミ」
マミ「わ、わかった…」
スタスタ…
ピンポーン
ハルの母「はーい、どちら様ですか?」
マミ「こ、こんばんは。初めまして。私、巴マミといいます。ハルちゃんの友達で…」
ほむら「……」
杏子「……」
杏子「…なあ」
ほむら「何かしら」
杏子「マミは沙々の魔法について、『簡単に操られたりなんかしない』って言ったが…」
杏子「あたしはあっさり操られると思う」
ほむら「……」
ほむら「奇遇ね、私もよ」
杏子「……」
杏子「その時は、マミのことは任せた。沙々は、あたしがやる」
ほむら「わかったわ」ファサッ
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2021/03/22/22:24
マミ「すみません、もう日が暮れるのにあがらせてもらって」
ハルの母「いいのよ。それより、あの子にお友達ができて嬉しいわ」
ハルの母「その制服、見滝原中学のものよね。どういういきさつでハルと仲良くなったのかしら?」
マミ「え。それは…」
マミ「犬のチャコが、後輩の男子生徒が倒れているところ見つけてくれたんです。それで…」
ハルの母「そう、チャコが…」
ハルの母「……」
ハルの母「あの子は、不思議な犬よ」
マミ「え?」
ハルの母「私たちが住んでいた町はね、夜になると誰も外に出ようとしなかったの」
ハルの母「夜はおばけの時間だから…」
マミ「おばけって…」
ハルの母「信じてもらえないでしょうけど、夜になると、少しでも外を歩けばそこかしこにおばけがいたのよ。この見滝原にもいるみたいだけど、あの町とは比べ物にならないぐらい少ないわ」
マミ(ええ…?)
ハルの母「特に、山にはね、禁忌とされるおばけが住み着いていたの」
マミ「禁忌?」
ハルの母「山の声を聞いた者は、自ら命を絶つ」
ハルの母「あの子の友達も、その父親も、山の声を聞いたことで死んでしまった」
マミ「ユイちゃん、ですよね…?」
ハルの母「聞いてたの?」
マミ「はい、コトワリさまのこととか、いろいろ…」
ハルの母「そう…」
ハルの母「ハルはユイを探すために、夜の町を歩いたの。チャコは、そんなあの子を導いたのよ」
マミ「チャコが?」
ハルの母「そう。私も、あの子から聞いただけで、実際に見たわけではないのだけれどね」
マミ「……」
ハルの母「…さてと、話し込んでしまったわね。今、ハルを呼んでくるから」
マミ「あ、はい、よろしくお願いします」
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2021/03/28/21:59
ハル「マミお姉ちゃん!」
マミ「ハルちゃん、こんばんは」
ハル「うん、こんばんは。今日はどうしたの?」
マミ「実は昨日話題に出た優木沙々という魔法少女が、コトワリさまを狙っているみたいなの」
ハル「ええっ!?」
マミ「それで、あなたの所に来るかもしれないという話になって、外に佐倉さんと暁美さんもいるのよ」
ハル「そうなんだ…」
ハル「じゃあ、家にいると危ないね。ちょっと待って、今、外に出る準備するから!」
マミ「それが一番ベストな選択なのだけれど、あなたのお母さんが――」
ハル「お母さーん! 今日も夜廻してくるねー!」
ハルの母「はーい、行ってらっしゃーい」
マミ「許可したー!?」ガビーン
マミ「何で!? 何で夜廻許可しちゃったの!? 夜に腕一本持ってかれたのに!」
ハルの母「だからこそよ。もうあの子は、夜の怖さから逃げられない…」
マミ「そんな…!?」
ハル「チャコ、おいでー!」
チャコ「わん!」
◆
杏子「夜の怖さから逃げられない、か」
ハル「うん。だからこそ、夜に立ち向かわなくちゃいけない」
杏子「そうだな。なんとなくわかるよ。あたしもそんな感じだし」
マミ「……」
ほむら「それで、どこに移動するの?」
杏子「人がいなくて、なるべく広い場所がいいな」
マミ「だったら向こうに公園があるわ。遊具が撤去されて、誰も来なくなったそうよ」
ほむら「決まりね。行きましょう」
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2021/04/12/22:08
さやか「ちょっと待ったー!」
ハル「さやかお姉ちゃん?」
杏子「どうしたんだおまえ?」
さやか「は、ハルちゃん……コトワリさまのハサミ出して…」ゼェゼェ
ハル「え、うん」ゴソゴソ
ハル「はい」スッ
さやか「すー、はー」
さやか「コトワリさま、絶対に許さないなんて言って申し訳ありませんでした! そして、恭介の腕を治してくれてありがとうございました!」
ほむら「なっ…!?」
ハル「恭介お兄ちゃんの腕、治ったの!?」
さやか「完全に治ったわけじゃないけど、希望は出てきた。コトワリさまが切ったのは『腕が治らない』っていう悪縁だったんだよ!」
ハル「そうなんだ。よかった…」
さやか「これで『ありがとう』って言わなきゃ、あたしはコトワリさまをおかしくした身勝手で都合のいいやつらと同じになっちゃう。だから、お礼を言いに来たの」
杏子「どっちにしろ手のひら返しだぞ」
さやか「皮肉言わない」
さやか「――ハルちゃんたちは、これから夜廻?」
ハル「うん」
さやか「そっか…」
さやか(魔法少女になれなくなって、恭介の腕も治ろうとしている)
さやか(あたしにできることは、みんなが無事に夜明けを迎えることができるように祈るぐらい、かな…)
さやか「――いってらっしゃい。じゃあね!」ニコッ
杏子「って、おいさやか! 後ろ!」
さやか「へ?」
道ふさぎ「……………」カサカサカサ
さやか「わー!?」
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