ミナミとナギサ
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PuoP/I
🕐08/23 00:43
「ミナミすごい!もうレベル100までいったの!?」
「いいなーその装備持ってんの!」
みんながはしゃぎながら、私の手元にあるゲーム機の画面を覗き込む。
「しーっ、あんまり大声出さないで」
そう言いながらも、口の端に嬉しさが滲むのを隠せなかった。
『Miracle World』。『ミラクル』と呼ばれるこのゲームは、地球の滅亡の危機から奇跡的に生き残った主人公が、自分の不思議な力を使って、消えた町や人を取り戻していくという物語だ。
一見ありきたりなRPGのように見えるけど、個性豊かなキャラクターたちと奥深いストーリーで、クラス内でも大人気のゲームだ。
本当は学校にゲーム機は持ってきちゃダメだけど、私は先生に内緒で、学校でこのゲームをやっている。
そして、このクラスの中で一番ミラクルをやりこんでいるのは私だと思っている。
ストーリーもほとんど進めてるし、主人公が着る装備だっていっぱい持ってるし。
休み時間になったら、みんな私の席の周りに集まって、私のゲーム画面に夢中になる。
今日もまたいつものようにみんなで盛り上がっていると、「ちょっと、神崎さん」という声が聞こえた。
振り向くと、そこにはクラスの学級委員の清水ナギサが立っていた。
出たよ、清水ナギサ。
黒髪を後ろで一つに結んでいて、つり目が印象的な女子で、ふざけてる奴とかルールを守らない奴に注意をしてくる。
今年──小六ではじめて同じクラスになったけど、噂通り真面目で、私がゲームをしているのを見ると何回も咎めてくる。私が二週間くらい前からミラクルにハマって、学校にゲーム機を持ってくるようになってから。
ナギサは私の手元にあるゲーム機を指差しながら言った。
「こないだも言ったよね?ゲーム機学校に持ってきちゃだめなんだよ?」
「ごめんってばー、でもいいじゃんこれくらい、ね!みんな」
と、ゲーム画面に視線を戻しながらみんなに同意を求めると、周りのみんなはいつものように乗っかってくれた。
「そーだよー、休み時間なんだからゲームくらい大したことないよ」
「清水さんも一緒に見たら?ミナミ超上手いよ」
ユキが言うと、他の子たちもうんうんと頷いた。
しかし、ナギサの顔色は変わらず、厳しい表情のままだ。
何がそんなに気に食わないの?という言葉が喉を出かかって止まった。きっと何を言っても無駄なんだろう。
はぁー、と私はわざとらしくため息をつき、ゲーム機を机の中にしまった。
「はいはい、しまったしまった」
両手をひらつかせながら適当にあしらうようにそう言うと、ナギサは少しの間私を見つめた後、自分の席へと戻っていった。
また何か言われるかなと思ったけど、何も言わずに自分の席に戻ったことに拍子抜けした。
ナギサが席に座って本を読み始めたのを確認すると、私はおもむろに、さっきしまったゲーム機を取り出した。
「さっきの続きやりまーす」
「ミナミやるぅ」
結局その後は、休み時間が終わるまで、ナギサにバレることなくミラクルを満喫した。
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PuoP/I
🕐08/23 00:44
放課後。ランドセルを背負って足早に教室を出ようとすると、「神崎さん」と担任の佐藤先生に呼び止められた。
その瞬間、心臓がばくばくと速さを増す。先生のことが好きだからとかそういうんじゃない。
もしかしてゲーム機、バレた?
焦りと緊張で入り混じった感情を抱えながら先生の元へ向かう。
すると、先生は少し間を置いてから口を開いた。
「神崎さん、最近何かあった?」
「えっ?」
「今日返したテスト、前と比べてすごい点数が下がってたから」
あぁ、なんだテストか。ゲーム機の事じゃなかった。一気に肩の力が抜け、ほっとする…ことはできなかった。今日返されたテストは、お世辞にもあまり良いとは言えない点数だった。
前はテストで100点満点をとってたけど、ミラクルにハマってからは勉強そっちのけで鉛筆よりもゲーム機を握る時間が増えて、成績がガタ落ちしてしまったのだ。
「ごめんなさい。勉強不足です、次回はもっと頑張ります」
それっぽい言葉を並べ、ぺこりとお辞儀をする。佐藤先生は穏やかな笑顔を浮かべながら私の言葉を信じた。
「神崎さんならできるって信じてるよ、頑張れ」
「ありがとうございます」
私はもう一度頭を下げて、早くミラクルをやるために走って教室をあとにした。
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「いいなーその装備持ってんの!」
みんながはしゃぎながら、私の手元にあるゲーム機の画面を覗き込む。
「しーっ、あんまり大声出さないで」
そう言いながらも、口の端に嬉しさが滲むのを隠せなかった。
『Miracle World』。『ミラクル』と呼ばれるこのゲームは、地球の滅亡の危機から奇跡的に生き残った主人公が、自分の不思議な力を使って、消えた町や人を取り戻していくという物語だ。
一見ありきたりなRPGのように見えるけど、個性豊かなキャラクターたちと奥深いストーリーで、クラス内でも大人気のゲームだ。
本当は学校にゲーム機は持ってきちゃダメだけど、私は先生に内緒で、学校でこのゲームをやっている。
そして、このクラスの中で一番ミラクルをやりこんでいるのは私だと思っている。
ストーリーもほとんど進めてるし、主人公が着る装備だっていっぱい持ってるし。
休み時間になったら、みんな私の席の周りに集まって、私のゲーム画面に夢中になる。
今日もまたいつものようにみんなで盛り上がっていると、「ちょっと、神崎さん」という声が聞こえた。
振り向くと、そこにはクラスの学級委員の清水ナギサが立っていた。
出たよ、清水ナギサ。
黒髪を後ろで一つに結んでいて、つり目が印象的な女子で、ふざけてる奴とかルールを守らない奴に注意をしてくる。
今年──小六ではじめて同じクラスになったけど、噂通り真面目で、私がゲームをしているのを見ると何回も咎めてくる。私が二週間くらい前からミラクルにハマって、学校にゲーム機を持ってくるようになってから。
ナギサは私の手元にあるゲーム機を指差しながら言った。
「こないだも言ったよね?ゲーム機学校に持ってきちゃだめなんだよ?」
「ごめんってばー、でもいいじゃんこれくらい、ね!みんな」
と、ゲーム画面に視線を戻しながらみんなに同意を求めると、周りのみんなはいつものように乗っかってくれた。
「そーだよー、休み時間なんだからゲームくらい大したことないよ」
「清水さんも一緒に見たら?ミナミ超上手いよ」
ユキが言うと、他の子たちもうんうんと頷いた。
しかし、ナギサの顔色は変わらず、厳しい表情のままだ。
何がそんなに気に食わないの?という言葉が喉を出かかって止まった。きっと何を言っても無駄なんだろう。
はぁー、と私はわざとらしくため息をつき、ゲーム機を机の中にしまった。
「はいはい、しまったしまった」
両手をひらつかせながら適当にあしらうようにそう言うと、ナギサは少しの間私を見つめた後、自分の席へと戻っていった。
また何か言われるかなと思ったけど、何も言わずに自分の席に戻ったことに拍子抜けした。
ナギサが席に座って本を読み始めたのを確認すると、私はおもむろに、さっきしまったゲーム機を取り出した。
「さっきの続きやりまーす」
「ミナミやるぅ」
結局その後は、休み時間が終わるまで、ナギサにバレることなくミラクルを満喫した。